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図書館

【王立白裂銀海学園】図書館。

校舎から少し離れた場所に存在するその建物は、校舎と同じく白裂王家から正統に資金援助を受けて建設され、今なお、軍事学に勤しむ生徒らに叡智を授けている。

特に『科兎山戦役』を経験したこの時代の生徒らにとっては、卒業と共に軍隊へ入り、戦地を駆け巡る可能性は高く、就学中にできる限りの知識を頭へ叩き込んでおく必要があるのだ。

それを可能としているのが、煉瓦で築かれたこの図書館なのだ。

内装は貴族の趣味趣向が取り入れられた絢爛豪華な絨毯などが引かれ、高級そうな椅子が学生らを支えている。

その中の一角で、分厚い書物を開いている青年がいた。

白い長袖の上から黒を基調とした異国文化を思わせる幻想的な上着を羽織り、鍛え抜かれた両足に履く紺絣(こんがすり)の袴が白銀の革靴を輝かせている。

左手の人差し指や右手の中指には銀の指輪が光を放ち、筋張った首元を煌めく首飾りが彩る。

まさに上流階級の家柄が醸し出される佇まいにその場の空気すらも高尚さを漂わせていた。

その青年は図書館内の生徒たちと同じような年齢層ではあるが、比較的大人びていた。

彼は真新しい木目の机にいくつもの書籍を積み重ね、その中で最も分厚い書物に目を向けていた。

「ふーん、『原初(げんしょ)銀獣(ぎんじゅう)』ね。」

分厚い書物を穴が開くほど見詰めていた青年は唐突に顔を上げると小さく呟いた。

「こんなものに爺ちゃんは拘っていたのか。」

青年は書物の内容に納得したかのように目を細め、僅かに口角を上げると、再び書物を読み始めた。

「『原初の銀狐(ぎんぎつね)』、『銀蝶(ぎんちょう)』、『銀鮫(ぎんざめ)』そして『銀狼(ぎんろう)』か…。」

頷きながら分厚い古文書のようなものを読み進める青年は、ふと、何かに気が付いたかのように顎に手を当てた。

「いや、おかしいな…。だとしたら彼一人だけが明らかに異質だ。つまりは彼が……。その他の三人と違って…こう……。」

眉間に深い皺を寄せて唸っていると、思い切ったように分厚い書物を閉じて立ち上がった。

「では、所縁(しょえん)のあるあのお方に伺うとしようか。」

図書館のふかふかの絨毯の上を白銀の革靴が意気揚々と闊歩する。

彼の紺絣の袴には白銀の太刀が太陽の光を受けて一際輝いていた。

青年は彼の友人らしき二人に声を掛けると、颯爽と図書館を後にした。

分厚い書物は元の本棚に戻されていた。

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