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薄氷氷雪

学園入学から数日後、津雲を含めた生徒数名たちはある部屋に集められた。

津雲にとっても生徒たちにとってもあまり馴染みのない部屋に着いて、(しばら)くすると女性の教官も部屋に入ってきた。

その途端、一部の生徒は(いや)(おごそ)かな表情を(あら)わにした。

「総員、敬礼、直れ、着席。」

女性教官が凛とした声で号令をかけて生徒たちを椅子に座らせる。

何も知らされず椅子に座る者。

知りながら口を開かぬ者。

何かを悟ったかのように微笑む者。

何にも希望を見出さぬ者。

彼ら一人一人の顔をまじまじと見つめた後で、女性教官は口を開いた。

「初めましての方は初めまして。

私はこの学園の軍事戦術学担当教官、薄氷(うすい)氷雪(ひゆき)よ。よろしく。氷雪先生って呼んで頂戴。」

氷雪は親しみのある笑顔になって言った。

しかし、彼女はこの学園で、生徒たちにかなり恐れられている教官だった。

怒らせたら怖そう。

試験が難しい。

戦闘技術が高すぎる。

そんな噂が彼女の評判を作り上げていた。

この教室にも彼女の顔を見るなり、恐怖に顔を歪める者もいた。

氷雪自身は生徒たちの評判に気付いていたが、行動を変える気は起こさなかった。

怒らせても別に怖くはないし、試験もちゃんと勉強していれば難しくない。

何より、優しさに(あま)んじた結果、白裂の軍事が揺らぐ事の方が彼女にとっては危惧(きぐ)するべきことであった。

それは戦闘技術においても同じ事だった。

自らの痛みを知らなければ、他人の痛みに真に寄り添う事はできない。

氷雪はそんな理念を心のどこかで感じていた。

今回、この教室に来たのもその理念を果たすためなのかもしれない。

氷雪は白く美しい真顔に戻り、本題に切り込んだ。

「早速だけど、あなたたちがここに集められた理由はただ一つ。

あなたたち九人、全員が先の小戦『科兎山(しなとやま)戦役』の関係者、(ある)いは、関係者と何らかの関係性のある人間だからよ。」

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