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凍り付く戦術

どこからともなく顕れた氷雪が達の背中に爽やかな風を吹かせた。

完全に不覚を取られた達は体勢を崩し、演習場の石畳に倒れ込んだ。

しかし、氷雪の一閃は金属音を立てて防がれた。

無力化された達に襲い掛かる氷雪を止めたのは、『騎士』の盾であった。

「彼が暴れていたとしても、私が戦術を紡ぎます!氷雪先生。」

あすかの白き盾が達の死角を庇う。

氷雪は嬉しそうに笑みを溢すと、まるで試すかのように小刀を振り回した。

「あらあら、一体どんな戦術を魅せてくれるのかしら。」

あすかを欺くように多方向から剣戟が降り掛かる。

『騎士』の盾はその全てに翻弄され、氷雪が想像した通りの軌道を描いた。

あすかが苦渋の表情を浮かべ、もう片手に持つ剣を使い始めると、氷雪は小刀の扱いだけでその剣を吹き飛ばした。

「『騎士』の誇りが台無しじゃないの。」

仕舞いに、冷たい銃口をあすかに向けると、(ようや)くその動きを止めた。

銃口があすかへ火を放つ代わりに、氷雪は彼女の背後から斬りかかろうとしていた津雲へ言葉の銃弾を放った。

「遅いわよ。皇太子君。貴方の剣戟はすでに見切っているわ。」

息を殺し、足音を潜めて氷雪の隙を狙っていた津雲にとって、それは実際の銃弾よりも脅威となった。

氷雪に認識されていたという事実が彼の動きを停止させた。

死角からの攻撃により体勢を崩した達。

『騎士』の誇りを弾き落とされ、銃口を突きつけられたあすか。

さらに、自らの戦術を見切られた津雲。

氷雪はその二つの手に持つ小刀と片手銃のみで、三人の行動を凍結させるに至った。

旧式軍事演習場に冬が訪れた。

その冬は自慢の氷雪(ひょうせつ)を降り頻ると、学生たちを死の氷結へ(いざな)った。

絶対零度とも思しき冷徹が沈黙の空間を形成した。

しかし、雪女の気紛れか、氷が割れ(ほとばし)る音が沈黙を破り響いた。

「戦術というのは相手の思考よりも上手(うわて)を思い描くこと。一つ一つの行動はあくまでその結果に過ぎないわ。一方で、貴方たちの行動は全部、単なるその場凌ぎ。瞬間瞬間で思い付いたものなんじゃないかしら。」

三人は押し黙ったまま、動かない。

「だから私は、この『銀の絃』を企画したの。白裂の未来を形作る“戦術”の一貫としてね。」

氷雪は(おもむろ)に小刀を持つ左手を突き上げた。

親指先に巻かれた『銀の絃』が白銀の輝きを放つ。

すでに予習した人がいるみたいだけど、と言いつつも、氷雪は学生らに未来へ至る一歩を提示した。

「今、貴方たちに『銀の絃』の使い方、およびそれを活用した戦術を教えるわ。」

氷雪の左手の輝きに伴って、三人の『銀の絃』も光を放った。

氷雪が武装による威嚇を解除しながら、凛とした声で言い放った。

「白裂の未来のために、今ここで限界を超えなさい。」

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