絆す絃
「僕たちが『科兎山戦役』で背負ってしまった罪や咎に、共に向き合ってくれないか?共に闘ってくれないか?」
あすかは自らに差し出された手を見て、何も言わずに泣き崩れた。
津雲と達は顔を見合わせると共に頷き、あすかに寄り添った。
狼らの危険が失われた洞窟で、三人は静かに並んで座った。
「君も僕も、同じように『科兎山戦役』で罪を背負ってしまったんだ。その罪は今となっては変えようがない…。」
津雲があすかの横で俯きながら話し出した。
「でも、それはお互いが懸命に白裂を想って行動した結果だろう?
置かれた場所で、必死に光ある未来を目指した末の咎だろう?」
達があすかの肩に手を置いた。
「弓弦くんが言っていたよ。戦場では、情報が最も重要だって。もちろん、その通りだと思う。でもね、輝かしい未来を求めれば求めるほど、自らが正しいと選ぶ情報は偏りやすくなる。僕はそう思う。だからね…。」
昨夜起った、図書館の地下室での一件を津雲は思い出していた。
『「キミも経験したでしょ。戦場では情報が一番大事なんだ。正しい情報を素早く手に入れられれば戦況を優位に動かせる。逆に、敵に騙されたら自分だけでなく、仲間にも害を及ぼすんだ。」』
弓弦の言う通りだ。
正確な情報を把握することは皇太子に最も求められていることだろう。
次期国王として、情報の扱いには長けていなければならない。
しかし、それよりも大切なことがある。
それは『どうすれば、正しい情報を掴めるか…?』だ。
「だからね、あすかさんに共に白裂の正しい選択を考えてほしいんだ。この時代で、この場所で、僕とともに正しき道を探してほしい。」
お願いできるかな…?
そう言う津雲にあすかは飛び切りの笑顔を向けた。
熱い雫を頬に沿わせながら、しかし、彼を戦友として受け入れた表情だ。
「…良いわよ。不覚にも、白裂内政に魔の手を忍ばせてしまった私だけど……。
こんな私の『剱』が津雲くんの力になれるのなら。
私の剣術が白裂国安泰の道を切り拓く一端になってくれたら嬉しいわ。」
「かなり力になるよ。」
津雲はあすかの目を見て親しみの笑顔とともに確かに頷いた。
あすかも津雲を皇太子としてではなく友人として接し始めた。
二人の心を繋ぎ、絆す『銀の絃』が形成された。
すると、達が威勢良く立ち上がった。
「よし。そうと決まれば、この洞窟の奥まで突き進もう。この軍事演習の目標は『それぞれ配置された場所から洞窟の奥へ魔獣を駆除しながら進み、『然るべき相手』と戦闘を行うこと』と言われていたな。」
「ええ、進みましょう。この先に何が待ち構えているのか、未だ分からないけれど……。」
津雲。あすか。達……。
洞窟の暗き奥で、彼ら三人を待ち受ける者が、白い光を受けて妖しく笑った。
「あともう少しかしらね……。」




