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炎天下の任務

真夏の炎天下の中で幾人かの『守護騎士』が白裂城城門を警備していた。

規定された順路を守り、白裂城内へ許可なく侵入する恐れのある者を警戒する。

或いは、そのような者が侵入を謀った場合に、無力化する。

『守護騎士』が行う任務としては、ある程度、初歩的なものである。

未だ幼き少女である天剱あすかも、しかし、その面持ちは王家を守護する騎士として不足のない気迫を宿して、城門を巡っていた。

燃え過ぎた太陽が彼女らを照り付ける。

屋外ということもあって、『守護騎士』たちの体力はみるみるうちに削られて行った。

しかし、慣れた騎士たちは熱線に喘ぎつつも、毎年のことだと諦めたように警戒を行っていた。

あすかは真夏の警備の苦しさを初めて目の当たりにしたことで、心の中に抱いた一抹の想念が肥大化した。

「どうして…?」

独り呟くも、その声さえも熱き太陽に吸われていく。

その間も陽光が白き装甲に反射し、あすかの瞳孔を貫く。

熱い乱反射が重なって、いつしか彼女は『守護騎士』としての目的が曖昧になっていた。

「大丈夫か、新人。」

経歴を重ねた『守護騎士』の一人があすかに声をかける。

あすかは朦朧としながら言葉を返した。

あすか自身も自分が何を口走っているのか、あまりよく分からない。

その様子を見て、先輩は更に気遣った。

「水を飲め。休憩を取らないとひとたまりもないぞ。」

あすかは仲間とともに日陰に入り、休憩のひとときを取りながら、城門付近の警備を継続した。

ある時には狐狸型の魔獣が入り込み、それらを退治した。

ある時には道に迷った老人が訪ね、彼に経路を教えてあげた。

また、ある時にはこんな客人が訪れた。

「おや、随分と可愛らしい警備員ですね。」

その男は丸い眼鏡をかけ、やけに(にこや)かな笑顔をあすかに向けた。

背中には茶色い革の鞄を背負っている。

燃え盛る太陽の下で、しかし、一滴の汗も流していない。

彼が自分は諸国を行脚する旅人だと伝えると、あすかは僅かに言語化しにくい違和感を感じた。

しかし、白裂王陛下が直々に命じた、使節団員として旅をしている者だと証明する文書を渡されると、僅かな違和感など消え去ってしまった。

あすかは安堵したように、陛下への旅程報告のため、彼らを城内へ誘導した。

「感謝申し上げますよ。健気な警備員殿。」

旅人は誘導を受けて恭しく頭を下げた。

あすかは、ばつが悪くなって謙遜した。

「そんな、これが私の使命なので。…警備員ではなく『白裂王家親衛騎士団』の『守護騎士』としての、果たすべき使命なのです。」

すると、旅人はくるりと振り返って人当たりの良い笑顔を見せた。

「御立派でございます。白裂王陛下もこの様な情熱的な『騎士』殿に守護されれば、安泰でございますね。」

あすかは先ほど感じた得体の知れぬ違和感など、とうに忘れて、その言葉に喜んだ。

一層、『守護騎士』としての使命を果たそうと、凛々しくも敬礼した。

「入城させていただき、本当に感激であります。どうか、お身体にお気を付けください。」

そう旅人が最後に言うと、彼は白い城門の扉へ吸われていった。

あすかは得意になって毅然たる態度を見せた。

照り付ける太陽に抗う様に、更なる使命を望みながら、白裂城門を巡回した。

…旅人を名乗る彼が『科兎山戦役』の開戦を誘う存在とも知らずに。

『戦役』勃発はもうすぐである。

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