推薦
「騎士長、相談というのは…?」
「ああ、天剱か。」
凛とした女性が体格の良い男性に声を掛けた。
二人とも白銀の装甲を身に纏っている。
彼らの背中や盾には白裂王家の家紋が彩りを見せていた。
「お嬢ちゃんは元気かい?」
「ええ、騎士長のご子息より、王家を守護する気迫に漲っていますよ」
女性が悪戯をした後のようににやりと笑った。
「おや、うちの坊主の剣戟の鋭さを知らないな?」
男性もまた、装甲の清廉さとは裏腹に遊ぶように笑った。
暫くの間、そんな冗談染みた会話が往復した。
その度に賑やかな雰囲気が醸された。
白裂城内に笑い声が響き合うと、男性が本題に切り込んだ。
「まぁ、あすかちゃんにな、『親衛騎士見習い』にならないかって陛下から声が掛かってるんだ。」
その言葉を聞いた女性は目をみるみるうちに輝かせた。
「騎士長、流石、仕事のできる男は違いますね。」
「何の話だ?」
「言わなくても分かっていますよ。騎士長が推薦してくれたんでしょう。今年も枠は限られているのに…。」
女性に誉められて、男性は目を逸らしながら白い籠手の爪で頭の後ろを掻いた。
「いいんだよ。うちの坊主は。あいつはまだ…餓鬼んちょだ。…もうちょっと周りが見えればなぁ。」
男性は呆れた様子で溜息を吐いた。
蚊の鳴くような声で独り、倅の行く末を案じている。
何かを呟きながら首を横に振ると、天剱と呼ばれた女性に目を合わせて言った。
「それで、返答は決まってるよな。」
「ええ、不束な愚女ですが、ご指導のほど、よろしくお願いいたします。」
天剱は凛とした表情に戻り、頭を下げた。
男性は「親が立派だからな」と呟き、天剱と共に歩き始めた。
「…ああ、で、良い酒屋を知ってるんだよ。どう?今晩。」
「お断りいたします。」




