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繋ぐ絃

「ホントは白裂の為に戦いたかったんだ。」

弓弦は紺色の着物の(そで)で目を覆った。

「でもそれは、紅穂を侵略したかったわけでも、紅穂人を蹂躙(じゅうりん)したかったわけでもない。ただ、純粋に白裂国家の繁栄を願っていただけなんだ。国の為に、力を()えたかっただけなんだ。なのに、なんで。」

なぜ、あの戦役が発生したのか?

『特別軍事支援課』に所属する者は、津雲が戦役に参じたことを知っている。

しかし、彼に参戦せざるを得なくさせた存在を知っている者は少なかった。

その名を累陰(たかかげ)

偽りの白裂の宦官(かんがん)として白裂王を(から)め取り、紅穂への侵攻を誘導した黒忍の刺客。

白裂と紅穂間の関係は、彼が白裂へ侵蝕することによって、徐々に(かんば)しくない方向へと変化していった。

津雲はその流れに(あらが)いきれず、遂に自らの古き師匠を手に掛ける行為にまで(いた)った。

しかし、弓弦が津雲に(ただ)そうとしている罪は、師匠暗殺の罪ではなく、皇太子という立場でありながら白裂紅穂両者の利益にならぬ戦役を止められなかったことだ。

それゆえに、弓弦のような純粋に国を想う者たちが傷ついてしまったのだ。

白裂王と皇太子の所業は白裂の民への裏切りと言っても過言ではなかった。

津雲はその罪を背負い、師匠の大剣を握り、一歩、前に歩み出た。

「弓弦くん。鎌士郎くん。戦役を止められなくて、止めるどころか悪い方向へ拍車を掛けてしまったこと、大変申し訳なかった。白裂からも紅穂からも愛されていた師匠を(あや)めたことも、紅穂の兵器として知られている『火柱』の形成に(くみ)したことも、(まぎ)れもない僕の罪だ。僕はここからこれらの罪を(つぐな)うつもりだ。だから、せめて一時的に白裂家に猶予をくれないだろうか?僕たちが罪を(あがな)う時間をくれないだろうか?」

その言葉は津雲の次期白裂王としての覚悟に満ちていた。

弓弦も鎌士郎も、もう何も口にしなかった。

糾弾(きゅうだん)を続ける理由がなかった。

それは一時的であれ永続的であれ白裂家への(ゆる)しであった。

国の王を、(おさ)を、赦すべきだという考えは三人の中に確かに存在していた。

月の雲隠れした黎明(れいめい)の下で、その想いが光を放ったのであった。

弓弦は津雲の目をじっと見つめた。

鎌士郎は津雲の背中を握り締めたまま、その暖かみを享受した。

三者の心に今まで感じられなかった(ほとぼ)りが溢れ出した。

その少年らを繋いだ氷柱は自らの使命を確信したようにも見える。

彼女の目の輝きは屋根から伸びた氷柱のように清らかに()えていた。

四人の心を(つな)ぎ、(ほだ)す『(しろがね)(いと)』が形成された。

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