55.執務室に遊びに行く
今日は王妃教育でお城に来てますよ。
もう1年も通ってますから、入れるところは勝手知ったる家状態。
といっても、私が入る場所なんて、エントランスと、その先にあるダンスホール、勉強のための図書館と、ティルとお茶をする中庭ぐらいなので、大した範囲じゃない。
お城の機能の中心である、各部局の事務所なんかには、ほぼ出入りしていない。
ほぼ、というのは、王妃教育の一環で、各部署がどんな仕事をしているか現地で説明してもらったから。
その時に、財務部長とか法務部長とか外務次官とかとご挨拶したよ。
雰囲気的には、各省庁の合同庁舎がお城なんだなって感覚なのよ。
当然、建物がわかれていたり、王様が日常生活をする宮は別建屋なので、敷地だけ合同ってイメージ。
しばらく戦争もなかったからか、軍の施設は王城内には近衛師団と魔法騎士団の一部ぐらいしかないみたい。
陸軍基地は別にあるんだって。
だからドラゴン騎士団を街中で見ないんだわ。
飛んでりゃわかるはずだもん。音もなく飛ぶっていうから、気が付かないかもしれないが…
今日はお城でダンスと、この国の歴史の授業の締めくくり。
午前中で終わるので、午後は早速ティルの執務室へ向かう。
「というわけで、遊びに来たよティル」
「いらっしゃいミランダ。早速だが二人ほど紹介させてね」
ティルが部屋の中央にある机から、わざわざ私のほうへ歩いてきてくれて、にこやかに迎えてくれる。
あら、ハグしてくれるの?ふひひ
最近、ティルは会うとハグしてくれるようになったのよね。
ティルは細身で、あんまり筋肉質でもないからか、結構抱き心地がよくてね。
なお、私もティルから同じことを言われたので、お互い様であるよ。
今のうちに令嬢二人と偽って、どっかのお茶会に女装させたティルと参加してみたいところである。
して、ハグし終わると、ティルが二人の男の子?を紹介してくれた。
見た感じ15歳ぐらいだろうか?一応この国だと15歳は成人だからな。
「こちらが、アルグレイ・カフェモカ伯爵令息で、私の補佐官。あちらがダージン・アッサム侯爵令息、安全保障関係のサポートをしてくれている」
「ぶっ」
思わず吹き出してしまって、ティルがしかめっ面をする。
「気持ちはわかるけど吹き出さないでくれる?未だに自分の名前も頭捻りたくなるんだから」
私の耳元で悪態をついてくる。
うん、これで面白いのは、日本人の転生者だけのはずだ。
この世界に紅茶はあるが、コーヒーがないし、アールグレイやダージリンって銘柄もアッサム地方もない。
「お二人とも初めまして、ミランディール公爵家の長女、ミランダと申します」
人の名前で意味もなく笑うのは失礼なので、ネコを総動員して令嬢としてご挨拶する。
「初めまして、アルグレイです」
茶髪ですらっとした長身で、なかなかのイケメンだ。
男性らしいイケメンね。たしかカーフテトラ派じゃなかったかしら?
「ダージンと申します。ご令嬢お初にお目にかかります」
こっちはガタイがいいな。
保守派でかつ右寄り、軍での勢力も大きいアークレイ派の男って感じ。
「カフェモカ様はカーフテトラ派、アッサム様はアークレイ派と思いますが、ティルどんな人選ですか、これ?」
「能力採用」
「なるほどね」
私の回答で二人がにっこり微笑まれている。
なんぞや?
「ミランディール様は変わった方だという噂がありますが、その通りのようですね」
アルグレイ様が笑ってらっしゃる。
「そうです?あ、ミランダで結構ですよ」
「分かりましたミランダ様。殿下の婚約者とはいえ、派閥を気にされるのが普通なのに、能力採用といわれて直ぐ納得されるとは思いませんでしたから」
なるほど、そういうことか。
普通は派閥を気にするもんな。
私の交友関係が異常なだけだ。
派閥を越えて、それぞれの筆頭令嬢と仲良しだからな。
「国の今後を決める人事ですもの、派閥を気にして採用していたら、優秀な人材を逃しますでしょ?それは、もったいないことですわ」
「本当に、普通の令嬢と違って、しっかりしていらっしゃるようですね」
ダージンさまが感心されておるよ。
でも最上位令嬢はそんなことないと思うんだ、私ら見ればわかる。
「私の自慢の婚約者だからね」
「やめろダージン、これ以上褒めると殿下の惚気が始まるぞ」
「それもあるが、私たちを見ても目の色を変えることもないじゃないか」
「殿下と比べて俺らなんてワンランク落ちるだろ」
「それでもパーティーの際は囲まれるじゃないか」
「あ、そうだ!それ聞きたかったんですよ」
「「「え?」」」
3人が私を向く。
そう、異世界転生物だと、婚約者が決まったって王子を取り囲む令嬢達なんてよくいるのに、私が婚約者に決まった瞬間、誰も殿下に近寄らなくなったのだ。
こんなことってある?と疑問だったのだよ。
「いえ、社交シーズンにティルと一緒にパーティーに何度か参加したんですが、ティルが他の令嬢に囲まれているの見たことないんですよね」
「あー…」
「それかー…」
なんだよ補佐2人、残念そうな顔をするんじゃないよ。
てか言いよどむなよ。
「私が女顔過ぎて、令嬢と並ぶと、令嬢自身が可愛く見えないと避けられてるんだよ」
「ぶっ」
「そのせいか、一緒にパーティーに出ると我々が女性陣に囲まれます」
「あー将来の宰相候補と軍務大臣ですもんねお二人は。イケメンだし優良物件ですわね。私はティルが一番ですが」
「よかったですね、殿下。相思相愛で…」
「たまに殿下が、うらやましくなりますよ…顔も含めて」
「私はこの顔が誇りなんだけどね、ミランダにも気に入ってもらえているし」
私とティルがうんうんと頷く。
さて、雑談はこれぐらいにして、早速どんな仕事をしているか見せてもらおうかな。
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