42.MIS(ミランディール・インダストリアル・スタンダード)の誕生
今日は、ティルと私と、お父様と、領地の細工師ギルドと家具ギルドのお偉いさんが一堂に会しての会議が行われますのよ。
前世からドールハウスが好きだったティルが、どうしてもドールハウスを購入したいということで、細工師のバースさんに相談したところ、一人では対応できないと手を上げられてしまい、我が領地の細工師ギルドと家具ギルドへ正式に依頼することになったのだ。
つまり、分業で色々なパーツが出来上がってくる事になる。
ましてや、二つのギルドの間を渡る部品もあるが、使用している測定機器の基準が違うせいで、寸法だとかの規格がバラバラだったのだ。
これでは、依頼して出来上がったものを組み立てると、端が合わなかったり、そもそも組み付かなかったりという問題が出るの。
ドールハウスは小さいので、1mm違っても目立つのだよ。
例えば、1/12スケールのドールハウスの床で1mm隙間ができたとすると、1.2cmの隙間が現実にできていることになる。
欠陥住宅だよそれじゃぁ!となるはずですのよ。
なので、厳格に寸法の統一だとか、公差、図面の書き方の統一が必要になったわけ。
家具ギルドは三面図を使っていたけど、細工師ギルドは使ってなかったりするので、見方を知らなかったの。
そこで!
お父様にも協力してもらい、まずは我がミランディール領内での統一された工業規格を作ろうということになったのだ。
作ったもの勝ちである。
これで成功すれば、カーフテリアの標準規格にしてしまえばいい。
というわけで、今日はミランディール・インダストリアル・スタンダード、MISの調印式でもある。
誕生会から実に3ヶ月かかったよ。
もうすぐティルの誕生日だよ。ははは!
ちなみに、規格のすり合わせに1ヶ月、試験運用に1ヶ月、規格の修正に1ヶ月かかった。
この間、試験運用で生まれたドールハウスは、我が公爵家をそのまま小さくしたようなものを私が図面を起こしたり、セバスチャンが過去の改築記録で表に出せるものを持ってきてくれたりして作り上げていっていった。
途中、カーシャ様やトランスティーナ様にも見ていただいたし、私の誕生日会では円卓の賢者のドールハウスをみんなに見てもらった結果、感触は上々。
彼女らも自分で作ってみるといっていたし、購入できないかという問い合わせも来ている。
こんどカーシャ様とトランスティーナ様で自作のドールハウスを持ち寄って品評会をやる予定。楽しみ。
「では、これでミランディール領内での工業製品について、MIS標準規格が選定されたことをここに宣言する」
領主のお父様が最後に書面にサインして、MIS規格は発行されました。
よかったよかった。
ちなみに、標準器なんかも選定されたよ。
基本は既存にあるものを手直し修正したものだけど。今後科学が発展すれば、基準の見直しなども行われるだろう。
基本は木工・精密細工における基準だけれど、今後重工業化が進めば、この布石はかなり強力になってくるはず。
「やりましたねぇティル様。これで規格品のドールハウス工場がまともに稼働しますよ」
「ありがとうミランダ、先走った投資がやっと回収できるよ」
えー、ティルはね、実はかなり先走ったんですよ。
ドールハウスが欲しいからと先に工場建てやがったんですわ。
おかげで、規格統一の必要性が明るみに出て、慌てて制定したわけ。
各工房に頼んだ同じ部品の寸法がバラバラだったことが、MISを作るきっかけだからね。
てかね、いきなり大規模にドールハウス量産しようってどういう了見なのか…
売れる見込みがありそうだからいいけれど、大丈夫か殿下。
これは私がちゃんと手綱を握る必要があるかもしれない。
規格統一は重工業化に絶対必要だと思うのですよ。




