勇者の称号の意味(4)
今は使われていない山小屋で、
都合良く荷物を運ぶ為の頭陀袋もあったので、
今はこれを着ることにした。
「まず、第一条件で私はあのお方の事を教えられないわ!」
メモリアは紙芝居仕立てで説明を始めた。
「次に貴女の正体だけどね」
「正直私も知らされていないの」
「ゴメンね」
少し申し訳無さそうな表示で謝れた。
「次に貴女を襲ってきたスライムだけどね」
「あれは、魔物娘」
「この世界の人成らざる存在よ」
襲われていたときに、
スライムの言った一言が妙に気になった。
「貴女に与えられた勇者の称号は」
「この世界の脅威である魔王を唯一倒せる者に与えられる称号なの」
「だけど同時に貴女自身を窮地に追い遣る諸刃の剣でもあるの」
「勇者との間に生まれた魔物娘の子供は」
「それこそ魔王すらも及ばない程の力を得ると言われているわ」
だがあのスライムも私も同性の筈だが。
「魔族の契りに性別は関係ないわ」
「それにこの世界では」
「同性婚も重婚も異種族婚も認められているわ」
言葉が詰まる。
「だから私としても貴女が望むのであれば」
「わざわざ自分から危険を冒してまで冒険をする必要も無いと思うわ」
「別に記憶が無くても死にはしないし」
「魔王や魔物娘が怖ければ」
「辺境の地まで逃げれば良い」
「食って、寝て、楽しく遊んで暮らすスローライフでもやぶさかでは無いわ」
勇者と言う肩書きを寄越してきた手前、問答無用で死んで来い!
とでも言われるかと思っていた分、
メモリアの優しい言葉に同様が隠せない。
「確かに、勇者と言う肩書きは私達が一方的に押し付ける形で貴女に託したわ」
「けれどあくまで、その称号で」
「貴女に魔王を討伐を強制はしないわ」
「魔王や魔物娘との契りを望むなら」
「それも選択の一つと言うこと」
あの謎の婦人もそうだったが、
このメモリアにしても何故ここまで私に自由意志を貫かせる?
力を与え、それに見合うだけの見返りを要求すると言う様子も無い。
只本当に私の一存を訪ねるだけだ。
「取り敢えず、先の事は分からない事ばかりだから」
「ひとまず自分が何者なのかを探るよ」
今出来る事と言えばそれしか思い当たらない。