5.彼女にも虫の息を聞かせたかった
僕は、小太りの悪そうな(実際悪い)おじさんを訪ねた。
ここは、とあるさびれたビルの一室。
テレビでは、44人が銃殺された事件のニュースが流れている。
「これ、あんたがやったの?」
小太りのおじさんが僕に聞いた。
「ええ、まぁ」
「ふーん、で、俺が売ってやった銃は?」
「置いてきました。」
「…置いてきた?あの現場に?正気かお前」
「重かったので。」
「最悪だよ。足跡ついたらどうするの?タダじゃ済まされないよ?」
「…すいません。」
「今日はほんとついてないな。俺が金貸してた奴も、なんか急に死んじゃったみたいなんだよね。前に上玉の女を連れてきてくれたし、良い思いさせてもらったから贔屓にしてたんだけど、ほんと残念だよ。」
僕の中で、何かが音を鳴らして切れた。
「へぇ、その話、羨ましいです。どんな感じだったんですか?」
「どうって、ねぇ、変なこと聞くなよ。そこは想像に任せるわ。」
僕は、机の上に一枚の写真を置いた。
「そうそう、この女だ。なんであんた知ってんの? というか、この赤いのって」
ドンッ
小太りのおじさんが、床に転がっている。
「言い忘れました。軽い方はちゃんと持ってますよ。こういう時のために。」
「てめぇ。」
「あの時、あんたと店主の他に誰がいた?言えば殺しはしない。」
「くそが。バイトの男だよ。わけぇ奴、名前は知らねぇよ。お前こんなことして…」
「情報どうも」
僕は引き金を引いた。