プロローグ 二人の始まり
本日から一章がスタートします!
「おんぎゃあ!おんぎゃあ!」
夕暮れ時、一人の赤子の大きな泣き声が小さな村に元気に響き渡る。
産婆が家の外で待機している男に声をかける。
男は待ちきれない様子で慌てて家の中に入ってきた。
「生まれたのか!」
「ええ、生まれたわ、私たちの子供よ、アレク」
「ああ、頑張ったな!ほんとうにありがとう!エルシー」
「名前はどうするの?」
「男の子だからなあ、リューセイってのはどうだ?」
「リューセイ、リューセイか、いい名前ね」
エルシーは生まれたばかりの息子に向かって「リューセイ」と小さく呼びかける。
まだ声に反応するはずもないが、赤子はエルシーの指を少し握るような反応をする。
二人は驚いたように顔を合わせ、微笑みあう。
突然、幸せな親子の空間に慌てた様子で大声の乱入者が現れる。
「おい、マリー婆さん!ガブリエルにも破水が来ちまった!今すぐ来てくれ!」
「部屋に入ってくるんじゃないよ、クレイグ!すぐ行くから待ってな!」
声はしわがれているが腰のシャンと伸びたお婆さんが勢いよく返事をする。
「おいクレイグ、それは本当なのか?」
「こんなことで嘘を言ってどうするんだよ。お前たちの子供と同じ誕生日だな!」
「なんてことだ!こりゃ村をあげてのお祝いをしないとな!」
「クレイグ!早くガブリエルのもとに行ってあげて。一人じゃかわいそうよ」
「ああ、そうだった!二人とも、おめでとう!」
酒でも飲み始めそうな勢いで話し始めたクレイグは、エルシーの指摘に大慌てで二人に向かって祝いの言葉だけを言い、返事も聞かずに去っていく。
「ほんとあいつは昔っから変わらないよなあ」
「ええ、子供に慌ただしさがうつらないといいけど」
その様子を見た二人はくすくすと笑いながら言葉を交わす。
「おんぎゃあ!おんぎゃあ!」
しばらく経つと、隣の家からも赤子の泣き声が聞こえてくる。
「うおおお、女の子か!じゃあ約束通り名前はナナミにしよう!ありがとうガブリエル!頑張ったなあ!」
すぐに、赤子の泣き声よりも大きなクレイグの声がすべてを伝えてくる。
「無事に生まれたみたいだな。驚いたな、本当に同じ誕生日だ」
「ええ、本当に、こんな偶然ってあるのね」
「ナナミっていうらしいな。」
「ええ、とってもいい名前だわ!」
「この子と二人仲良く、健康にすくすくと育ってくれたらそれが何よりだな。」
「そうね、そのためにも頑張ってよね、お父さん?」
「ああ、任せてくれ、お母さん」
二人してまたクスッと笑う。
二人の間には暖かな雰囲気が流れ、小さな村全体にはお祝いムードが漂う。
夜空には二人の誕生を祝うかのように幾億もの星が輝いていた。
プロローグはとても短くなってしまいました。