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第三話 流星の覚悟と神の思惑

本日二話投稿です。




 即死だったらしい。


 七海はあの時、子供をはじき飛ばすことには成功した。

 自分が助かる、ということを除いては。

 



 この事故は勇敢な高校生が子どもを助け、亡くなったということで全国的なニュースとなった。

 連日、多くの報道記者が事故現場、七海の家、そしてうちにまでもたくさん詰めかけてきた。

 俺は何も回らない頭で記者の質問に機械的に答え続けた。

 その時に記者からトラックの運転手は上司からの理不尽な嫌がらせにより、通常より多くの積み荷を運んでいたこと、時間内に配りきるため速度違反をしていたこと、そして捕まったことを聞いた。

 捕まったことを聞いても気分が晴れることはなかった。

 七海が死んでから俺は何も感じなくなっていた。

 何を食べても味がしない、何を見ても、しても感情が動くことはなかった。

 

 通夜、葬式は七海の家族と、俺の家族だけで行われた。

 通夜でも葬式でも焼き場で七海を送り出す時も俺は泣くことはなかった。

 ただ、七海のお母さんが号泣していたことが印象的だった。

 

 七海を失ったことで色を失った世界。

 他人事のように時間は過ぎていき、初七日を終えた夜。

 泣けないなんて、俺はなんて薄情なやつなんだろう。

 こんなことになるなら告白すればよかったなあ。

 なんで死ぬのが俺じゃないんだ。

 この数日、何度も繰り返した思考をまた繰り返しながら眠りにつく。


 

***************



 「ここは?」

 

 何故か夢の中だとわかる。

 俺は波一つない真っ青な水面の上に立っていた。

 上を見上げると雲一つ無い星空が無限に広がっている。

 少し離れたところに、幼い男の子が一人立っている。

 

 「やっと呼べたよー、天川流星君だね?」


 「あ、ああ、きみは?」


 「僕は神様だよ!接しやすいように子供の姿になってるんだ!どうかな?」


 「神様!?」


 幼い子どもが無邪気な様子で自分は神だと()()()くる。

 なぜ子どものこんな突拍子もない話を信じたのかはわからないが、不思議と話を聞いた瞬間にそうなのだろうと頭の中で理解させられる。


 「これから僕が話すことはすべて真実だから、疑わないでよーく聞いてね!まあ、聞いた瞬間に真実だと認識するようになってるんだけどねー」


 「あなたには、異世界へ行ってナナミさんをすくってもらいまーす!」


 「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 俺の返事を待たず、つらつらと話しだした神様に俺はつい待ったをかける。


 「なあに?」


 神様はにっこりとした笑顔で返事をする。


 「あなたが神様なのは理解した。させられたのか?まあ、それはいいが、異世界ってなんだ?というか七海は生きているのか!?」


 「まあ、その辺もしっかり説明するから、落ち着いて聞いててね」


 「あ、ああ、わかった」


 俺が聞く態勢になったことに満足したのか、一つかわいらしい咳払いをして説明を始める。


 「まずこの世界の大前提を知ってもらおうかな」

 

 「大前提?」


 「この世界はね、二つに分かれているんだ。わかりやすく言うとこちらが現実世界でもう一つが異世界かな。そして二つの世界は密接に絡まり影響しあっている。そして、こちらにいる全生物が、対となって異世界にもいるんだよ」


 「俺も二人存在してるってことか?」


 「理解が早くて助かるよ。そういうことだね!まずこの前に見せた勇者と魔王の戦いは憶えているかな?」

 

 「憶えているが、あれは君が見させてくれていたのか?」


 「僕の力を使って君にも見てもらったんだけど、あれは異世界で起こっていた、現実のこと。ナナミさんは異世界で勇者に選ばれ、魔王に挑み、死んでしまった。その影響がこちらにも表れて、こちらでは事故にあうという形で死んでしまったんだよ」

 

 「そんなことが……ちなみに異世界で俺は何をしてるんだ?」


 「農民だね!」


 神様はいい笑顔で言う。

 あまりにも大きすぎる理解しがたい話だが、なぜか冷静に、するっと脳に入ってくる。

 同時に、七海の運動能力の高さや正義感の強さの理由がわかったような気もする。


 「なぜそんな話を俺に?」


 「魔王を倒せる可能性がある唯一の人物がナナミさんだったんだよ。そのナナミさんが死んじゃったことで、魔王が暴れだして、異世界はめちゃめちゃになっちゃって。向こうとこちらは少しラグがあるから、こちらでは影響はまだ出ていないけど、このままじゃこの二つの世界そのものが壊れちゃいそうなんだよね。だから初めに言ったように君に異世界へ行って七海さんを、ひいては世界を救ってもらおうと思ってね」


 「どうやって救えばいいんだ?もう七海は死んでしまっているんだろう?」


 「時を戻して君らが生まれた頃へ、転生させるんだよ。これは禁忌に触れちゃうんだけど、世界の消滅の危機だからね。仕方ないよね。」

  

 「なんで俺なんだ?」

 

 「んー、何となくかなあ。まあ、しいて言うなら勇者と近しい人、だからかな。それともやっぱり異世界なんて怖い?」

 

 神様はあおるように聞いてくる。

 だが、俺の心はもう決まっていた。

 七海を救える可能性があるのならば。

 

 「怖いわけない。俺に行かせてくれ!」


 「いいねえ、その眼、いい眼してるよ」


 またにっこりと笑って神様は言う。


 「ちなみに見てもらったからわかると思うけど、異世界に魔法はある。でも、回復魔法なんてものはないんだ。回復を促すお薬はあるけどね。だから異世界でも腕がとれちゃったりしたらそのまま、死んじゃったら即終了だから気を付けてね!」

 

 「ああ、わかった。そういえば、俺は農民のまま七海を助けるのか?」


 「うーん、流石にそのままじゃ厳しいだろうから、神様権限で天職を変えてあげるよ。あまり強い職業だとバランスが悪くなっちゃうから、向こうでは弱いとされている職業なんだけど、こちらの知識があれば何とかなりそうな錬金術師とかはどう?」

 

 「いいな。錬金術師か、かっこいい。それでいこう」


 「自分で勧めといてなんだけど、かっこよさで決めるなんて。いいの?」

 

 「いいさ、きっと救って見せる。七海も、世界も」

 

 その言葉を待っていたかのように俺の身体が暖かな光に包まれる。

 だんだん神様の声が遠くなっていく。

 

 「わかったよ。くれぐれもすぐ死んじゃわないように気を付けて。頑張ってね……」


 神さまの声が完全に消え、俺が目を覚ました時。

 七海と世界を救う俺の戦いが始まった。


 「おんぎゃあ!おんぎゃあ!」

 

やっとこさ異世界の話が始まります。

これから主人公はどう成長しどのように世界を救うのか!


乞うご期待です!


おんぎゃあ!

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