第五話 魔獣との決着
今朝気が付くと気を失って倒れてしまってました。
大変申し訳ありませんでした。
「ぐるうううあああああ!!」
遠くで魔獣の呻き声がする。
「おい、キラーウルフじゃないか!?」
「ああ、この呻き声はキラーウルフだ!」
「こんなところにキラーウルフが現れるなんて……はぐれか?」
「十中八九そうだろう、朝見回った時の嫌な感じはこいつだったのか」
キラーパンサーの呻き声が聞こえたすぐあと、アレクとクレイグが集まって対処について話し合っていた。
「そういや、リューとナナミはまだ森の中か?」
「やばい!そうじゃねえか!いますぐ森に向かうぞ!」
アレクとクレイグは焦って森へ駈け込んでいく。
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「もう大丈夫流星!ここは任せて!」
死んだと思ったとき、ナナミの声が聞こえた。
目を開けると、今までおびえていたナナミはどこへ行ったのか、素手で一方的にキラーウルフを蹂躙している。
勇者としての力が覚醒したのか?
『天命の儀式』の前に覚醒することなどあるのだろうか?
よくわからなかったが、ナナミはキラーウルフを圧倒している。
素手だから決め手に欠けるようだが、このまま戦っていてもナナミは勝つだろう。
そう思っているとすぐに決着がつく。
「流星!けがはない?」
「ああ、大丈夫だ。ナナミこそけがはないか?」
ナナミはキラーウルフを倒すと一目散に俺に駆け寄ってきた。
「よかった、死んじゃうかと……」
「ナナミ?どうなったんだ?いきなり……」
「私、七海だよ、夕陽七海!」
「七海……?どういうことだ?どうしてここに!?」
どうしてここに七海がいるんだ?
ナナミはどこへ行ったんだ?
解らないことが多すぎて何が分からないのかすら分からなくなってくる。
「リューセイ!ナナミー!どこにいるんだ返事をしてくれ!」
考え込んでいると遠くのほうからアレクの声がする。
「ここだよ!」と自分の場所を教えるとアレクとクレイグが急いでやってくる。
俺たちを見るなりアレクとクレイグはそれぞれ俺とナナミに近づき「よかった、よかった」と俺たちが生きていることを確かめるようにきつく抱きしめる。
少しすると落ち着いたのか俺たちを離すと周りを見渡しだす。
「なっ!?これは……二人でやったのか?」
そこで二人はキラーウルフの死体を見つけると驚いたように俺たちを見た。
「う「違うよ?勝手に木にぶつかって倒れちゃったの」」
俺が七海が倒したことを伝えようとすると、七海が急に割り込んできて嘘をついた。
こちらを見て小さく首を振る。
「うーん、キラーウルフってそんなに頭悪かったか?」
「いや、普通の個体はそこまで頭が悪くなはずだが……」
二人は少し納得のいっていない様子で話し合う。
「本当に倒してないのか?」
アレクが再度聞いてきたが、今度は俺が「違う」と答える。
二人は再び悩んでいたがが納得したのか、俺たちをみて再び「本当に良かった」と言うと倒れたキラーウルフを担ぎだす。
「何をしてるの?」
「魔獣の死体はな、放っておくと死臭に反応してほかの魔獣が集まってきやすくなるんだ、だから持ち帰って処理するんだよ」
俺が気になって聞くと、アレクが「冒険者の基本だ」と教えてくれる。
そうなのかと俺が納得していると「それにな、キラーウルフは上手いぞ?」と横からクレイグが口をはさんでくる。
「ほんとう!?」
「ああ、本当さ!牛の肉より美味いんだぜ」
クレイグが舌なめずりをしながら教えてくる。
そんな話を聞いていると急におなかが減ってきた。
今夜のごはんが楽しみだ。
そうこうしているうちに帰る準備が整い、村への帰り道を四人で歩きだす。
あたりはもう少し薄暗くなっていた。
帰り道では魔獣と会った時の逃げ出し方や今回どれだけ運がよかったか、次魔獣と出会ったときも倒せると思わずすぐ逃げ出すことなどを教わった。
俺はふんふんと聞いていたが、七海は少し何かを考えているようだった。
村へ着くと今度はエルシーとガブリエルから強く抱きしめられ、何があったのかを聞かれた。
そこでは「お腹がすいているだろうから」とアレクが抑えてくれたが、夜ご飯の時には魔獣と会ったときのことを根掘り葉掘り聞かれることとなった。
夜ご飯の間、質問攻めのせいで七海と話す隙が無く、ご飯会が終わり分かれるときに「また明日話そうという」約束をした。
キラーウルフは今までに食べたどんな肉よりもうまかった。




