第一話 夢か現か 夢の中の喧騒
初めまして。
おはようございます。こんにちは。こんばんは。
だいふくと申します。
初めて小説を書きますので、至らない点もあるかと思いますが、最後までお付き合いいただけると幸いです。
「ここは?」
目を覚ますと知らない場所にいた。
周りを見渡すとどこか城の内装のように見える。
自分を見てみようとするが、なぜか自分を見ることができず、動くこともできない。
「どこなんだここは…まずこれは何なんだ…」
何もわからない。
「ふふふ、やっと来たか。待ちくたびれたぞ」
突然声が聞こえる。
よく見ると少し段を上がったところに玉座があり、その上に黒い霧のようなもやもやしたものが浮かんでいる。
なかなか離れた場所にいるのに気圧され、何かおぞましいものを感じる。
「おい、これは、お前は何なんだ!?」
「ようやくたどり着いたわ。世界のため、そして私のために『魔王』あなたを倒させてもらうから!」
俺の声は不自然に無視され、別の方向から何故かとても聞き覚えのある少女の声がかぶせられる。
声を聞く限り黒い霧のようなものは魔王らしい。
声のしたほうを見ると、玉座の真正面にある扉が開いており、その前には全身に鎧をまとった少女がいた。
「七海!?」
その姿は幼馴染の七海とあまりにも似ていた。
というより七海そのものだった。
俺はとっさに呼びかけるが、俺の声にはやはり誰も反応せず魔王と七海がにらみ合っている。
これは本当にどうなっているんだ。
俺は誰にも見えていないのか?
そう悩む俺を置いてどんどん話は進んでいく。
「倒す?倒すだと?はっ、面白い冗談を言えるのだな勇者というのは」
「冗談なんか言わないわ。今、ここで、あなたは死ぬのよ。神に祈る時間は済んだかしら?」
「ふっふっふ、本当に冗談がお好きなようだ。神に祈るのはそちらのほうじゃないか?助けてくれる神がいるのならばな」
魔王はさも愉快そうに嗤い余裕の表情で七海と会話している。
対する七海は強気なことを言っているが、魔王の威圧に押されているのか、虚勢を張っているように聞こえる。
「冗談ととるならそれでもいいわ。私は話をしに来たんじゃない。あなたを倒しに来たのよ。いくわよみんな!」
もう言葉はいらないと戦いの火蓋は切って落とされた。
七海の後ろから巨大な火の玉が黒い霧に向かってとてつもない勢いで飛んでいく。
しかし魔王は何もなかったかのように火の玉を飲み込み、そのうえ飛んで来た倍ほどある大きさの火の玉を返す。
それを七海が剣で切り裂き消滅させる。
同時に剣士が魔王に向かって切りかかる……
終局は突然訪れた。
いや、薄々気づいてはいた。魔王は一切消耗している様子がなかった。
反対に七海たちは時間がたつにつれ動きが鈍くなっていった。
序盤はいい勝負をしていると思った。
七海たちパーティは上手く連携を取り魔王に迫っていっていた。
しかし、実際のところ、魔王に効果のありそうな攻撃は七海しかできていなかった。
魔法は倍にして跳ね返される。剣技も何かバリアのようなもので本体に届かない。
結果、魔法は打てば打つほど返ってくる魔法の対処に人を割かねばならず、剣技もバリアを突破できるのは七海だけ。
徐々に劣勢になっていき一人、また一人と弄ぶように屠られていった。
「残りはお前だけだな、勇者よ。なんだつまらんな、勇者パーティもこんなものか」
黒い霧はなぜか本当に残念そうに呟く。
残された七海は苦し気に一人立ち向かっていく。
「負けられないの!!負けられないのよ!!!!私がここで負けてしまったら……」
七海は何かを言いながら戦っているようだ。
しかし二人のぶつかり合う音で途中から聞こえない。
遂に七海は魔王にはじき飛ばされる。
限界を超えてなお戦っていた反動からか、立ち上がることすらできない様子だ。
それでもまだ終わってないと剣を杖代わりにして必死に立ち上がろうともがいている。
「もう終わりにしよう。ふん、期待外れだな。あまりにも弱すぎる。これが史上最強の勇者と呼ばれた者だとは……私はあとどれだけ……」
魔王は吐き捨てるように何かを言うと魔法の詠唱もなしに、手のひらサイズの黒い球体を出現させると、失望の表情を七海に向け言った。
「終わりだ」
黒い球体は甲高い金属音を鳴らしながら周りの物すべてを巻き込みながら一瞬で巨大になり、次第に城の壁すらも剥がれ落ち、黒い球を中心に発生している大災害と呼ぶべき暴風に巻き込まれていく。
「なによ、これ。こんなの……」
魔王が手を七海のほうへ向ける。
と、圧倒的な魔力の奔流は七海へ向かって地鳴りを起こしながら飛んでいく。
七海は立ち上がろうとすることすら諦め、泣くこともせず、自分に向かってくる暴力をただ眺めることしかできない。
「流星……」
ぽろっと最後に言葉を漏らすと七海は球体に巻き込まれ、ただの塵と化した。
「七海!!!七海いいいいいいい!!!!!!」
俺の絶叫は、ただ虚空へむなしく響くだけだった。
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「天川~、天川流星~、起きろ!授業中だぞ!」
んんっ?不意に頭上から若干怒っている声が降ってくる。
はっと顔をあげ、周りを見渡すと、くすくす笑っているクラスメイトと恥ずかしそうにしている七海の姿が……なんだ、さっきのは夢だったのか。そりゃそうだよな、なんて夢見てんだよ自分。
ってか授業中寝てたぐらいでなんでこんなに周りは笑ってるんだ?などといろいろ考えていると
「流星~!夢の中まで夕陽さんだらけとは、ほんっとう大好きだなw」
クラスメートの一人から半笑いで指摘が入る。
同時にクラスのくすくす笑いも大きくなり、先生までつられて笑っている。七海は相変わらず顔を赤くして縮こまっている。
んんん?なんであいつは俺の夢の中身を知っているんだ?
「『ななみいいいいいい』ってどんな夢見たらそんなに叫ぶことになるんだよw」
別の方向から飛んできたヤジを聞いた瞬間に何をしでかしたのか理解した俺は七海と二人、放課後まで他のクラスの人にまでいじられ続け、そのたびに赤面する羽目になるのだった。