086 ゴーストとの再戦
先日、絵理がゴーストと呼称したモンスター。
透夜たちは今、かつて逃げざるをえなかったその魔物が待ち受ける扉の前にいる。
「じゃあ、行くよ?」
扉の前で振り返り、尋ねる透夜に絵理たちが頷いた。透夜は扉を開けるボタンを押す。音を立てて扉が開かれる。
すでに、透夜たち全員の武器は前もってかけたホーリーウェポンの光で輝いており、その体はホーリーシールドによる光の障壁が包んでいた。もちろんマリアもである。
慎重な足取りで部屋の中央まで進む透夜たち。透夜、ソーニャ、マリアが先行する形だ。
するとかつてのように、透夜らはすさまじい寒気と共に怖気に襲われた。
それと同時に、おおおおおお……という叫び声が響き、その場にかつて見た恐ろしい姿の魔物が現れる。
青白い光を帯びた、半透明の人型をしたものたちの群れ。
その姿だけでも恐ろしく、以前はまさに手も足もでなかった。
しかし今の透夜たちはすでに対処する術を身に着けている。『聖』の文字を含む魔法によって生まれた聖なる力。
ホーリーウェポンによって輝く剣を透夜、ソーニャ、マリアが構える。
透夜たちへ、群れる半透明の人型――通称ゴーストが襲い掛かった。
人型の群れがその青白い手を透夜たちに向かって複数伸ばす。
透夜は光る片刃刀を振るい、その手を薙ぎ払った。
光が一閃すると、たちまちその腕を刃があっさりと断つ。斬られた半透明の腕はたちまち消滅した。
実際に効果を目にするまでは半信半疑であったが、『聖』の文字がこの敵を打ち倒す力になるというのは本当だったのだ。
透夜たちの顔にわずかな笑みが浮かぶ。
ソーニャは両手剣で、マリアは左右の手にそれぞれ構える剣で、目の前の相手を斬りつけた。透夜がやったように、光る刃は何の障害もなくその青白い体を切り裂いていく。
透夜を狙って新たな腕が振るわれたものの、透夜は左に構えた盾でその攻撃を受け止めた。ホーリーシールドの魔法も機能しているようだ。
「ホーリージャベリン!」
後衛の絵理と杏花が白く輝く魔法の槍を撃ちだす。以前使った攻撃魔法とは違い、聖なる槍は魔物の肉体に見事突き刺さる。
ゴーストは苦痛から逃れたいかのごとく、目の前の透夜たちへと激しく青白い手を伸ばし、その活力を奪おうとする。
透夜たちはそれを剣で斬りはらい、あるいは盾や鎧で防ぐ。
対処する術さえあれば、ゴーストは今の彼らにとってそこまで手ごわい相手ではなかった。
聖なる力がその身を切り裂き、抉るたびに青白い魔物はどんどんその姿を小さく、薄れさせていった。
もはや負ける要素は何もない。
「ホーリーライトニング!」
間近で透夜が放った幾筋もの白い雷光がその姿を激しく撃った。それがとどめとなる。
おおおおおおおおおおおおお……!! と、これまでで一番大きな叫び声をあげながら、ついに青白い異形の存在はこの場から消滅したのだった。