071 いざ、未知の階層へと
また最初の広間へと戻ってきた透夜たち。
すでに見慣れた食糧庫の部屋に面するあの広間だ。せっかく戻ってきたので食糧庫の中にある水場で喉を潤し、水袋に水を補給しておく四人。
まだ調べていない、広間から出ていける扉は残すところあと一つ。
「まさか、また地下七階で行き止まりってことはないよね……」
ふと気になった透夜が絵理たちの方を振り向いて口を開く。
その言葉に、三人もそれぞれ不安の表情を浮かべた。
「さ、さすがにそれはないんじゃないかな……」
「もしそうだったら、ちょっと精神的なダメージが大きいわね……」
今いる地下七階が正しい道でないのなら、地下六階に別の下り階段があってそちらが適切な道だということになる。たしかに地下六階はまだ未探索の場所が多く残っていそうだった。必要とあらばまた階段を上る必要があるのかもしれないが……。
しかしあの地下六階に戻り、ふたたび巨大アリと戦うことになるのは正直言ってごめんだと全員が考えている。女王アリは倒したとはいえ、まだ未探索の場所にアリの大群がうじゃうじゃといても不思議ではないのだ。
「とにかく、開けてみましょう」
杏花の言葉にそれぞれ頷き、四人は地下七階でおそらく最後だろうと思われる通路への扉の前に立つ。
透夜が扉横のボタンを押すと、いつものように機械仕掛けの扉が音を立てて上へとあがる。扉の向こうは道が続いていた。延びる直線はやがて右に折れ、先は見通せない。
「じゃあ行こうか」
そう呟いて足を踏み入れた透夜に、三人も続く。
道は長く何度か曲がり、透夜たちはしばらくの間歩くことになったが……。
四人の不安は、幸いにも杞憂であることが分かった。
やがて、地下八階への下り階段が見えてきたのである。
透夜たちは喜びの表情をはりつけてお互いの顔を見合わせた。
「やっと、地下八階へと行けるみたいだね」
「うん! 良かった! ほんとうに行き止まりだったらどうしようかと思ったよ!」
はしゃぐ絵理。杏花とソーニャもそんな絵理を笑顔で見ている。
が、すぐに全員の顔が真剣さを帯びたものとなった。
なぜなら、誰もまだ地下八階へと降りたことがないからである。
以前地下五階で隠された大扉を開けた後、ここからが本番よ、と書かれている石板を目にしたわけだが、次の地下八階からはさらなる未知の領域と言えるだろう。
新たな地下六階では巨大アリの群れ、地下七階では水の精霊らしき魔物、とこれまでに見たことのない姿の敵と戦ったわけだが、きっとこの先も未知のモンスターが多数いるに違いない。
四人は一歩一歩、慎重に階段を下りていくのであった。