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070 罠かもしれない……でも踏むしかない

 新たな魔法の力を身に着けた後、ひと眠りして失った魔力も回復させた透夜たちは食糧庫から続く別の道を歩いていた。


 やがて突き当りに扉を発見し、ボタンを押して開けると中に入った。かなり大きい部屋である。


 部屋全体を見まわしてみるが、とりあえず辺りに敵はいない。入ってきた入口の他に、向かいの壁に二つの扉があった。


 そしてその扉以上に気になるものが部屋には存在していた。床スイッチだ。


 二つの大きな床スイッチが、それぞれずいぶんと離れた場所に設置されてある。どちらもちょうど、二つある扉の正面のライン上だ。


「踏んでみる?」


 質問をしたていではあったが、その言葉が否定されることはないと透夜も思っていた。


 壁に設置してあるボタンは押してみたくなるし、床に設置してあるスイッチは踏んでみたくなるものだ。罠の可能性があったとしても。


 実際反対の意見がでることはなく、四人はまず向かって右側にある床スイッチへと近づき、透夜が代表として踏む。


 ガタン、と勢いよく床に沈むスイッチ。しかし何かが起きた様子はない。


 透夜がその場からどくと、スイッチもまた元の位置に戻ってきた。


 続いて向かって左側にある床スイッチへと近づいた。今度は絵理が代表として踏んでみる。


 同じようにガタン、と鳴って沈んだものの、やはり変化はない。絵理がスイッチから離れると、やはりスイッチは元の位置へと戻る。


「これはあれかしら……ふたつのスイッチを同時に踏まないといけないタイプ?」


「僕もそんな気がしますね……そしたらたぶんあの扉が開くんじゃないかと」


「どうしよう? やってみる?」


 絵理の確認に、もちろん全員が肯定の頷きを返す。


 ただ、何があるか分からないため、念のために二人ずつに分かれてスイッチの側に立つ透夜たち。


 組み合わせはそれぞれ透夜と杏花、絵理とソーニャという形となった。


「じゃあいくよ?」


「うん!」


 離れている絵理に向けて声をかけ、手をあげる透夜。絵理も大きな声で返事をして応えた。


 ふたりはいっせーのせ、で同時にスイッチの上へと飛び乗る。


 ガタン、とスイッチが沈む……と共に突然、とてつもない音と振動が響き渡り、部屋の中央が大きな鉄格子でふさがれた。天井からいきなり降ってきたのだ。


 部屋中にまたがるその鉄格子により、透夜と杏花のコンビ、絵理とソーニャのコンビという組み合わせで綺麗に分断されてしまう。


「ああああ、やっぱりっ!?」


「トラップかなとは思ったけど!」


 トラップの可能性を考えても踏まずにいられない自分たちの習性が恨めしい。


 透夜は慌てて周囲を見た。鉄格子で部屋が端から端まで完全に分かたれたうえ、先ほど入ってきた入口はいつの間にか扉で閉ざされている。鉄格子と同時に扉もおりてしまったのだ。


 その代わり、先ほどまで閉まっていたはずの反対側にある二つの扉が開いており、その両方からそれぞれの部屋へと侵入する敵の姿が見えた。


「敵が来てる! 気をつけて!」


 透夜の叫びに三人が慌ててそちらを確認し、すぐに各自、戦闘態勢を整える。


 幸い、出てきたモンスターはこれまで何度も戦ったことのある青騎士だ。数こそ多いものの、今となっては恐ろしい相手ではない。まずは四人が各々ファイアーボールを撃ちこむと、それだけで敵の大半は金属の残骸となり果てた。


 あとは透夜、ソーニャがそれぞれ前衛を務め、手に持つ剣で残る青騎士を叩き斬っていく。絵理と杏花もジャベリン系の魔法で後ろから援護した。


 戦力的に分断されたはずの四人であったが、あっさりとこの戦いに勝利するのであった。


    ◇◆◇◆◇


 敵を殲滅したものの、鉄格子は上がらないし入ってきた扉も未だに閉まったままだ。


 とりあえず青騎士が出てきた扉にそれぞれ入ってみようということになり、お互いタイミングをあわせて扉をくぐる。


 それぞれの扉から続く通路は中で合流していた。二人と二人は安堵の表情を浮かべて手を振りあう。


 しかし問題は先へ進む道がないことと、またも二手に分かれて踏むような床スイッチのしかけがあるということだ。


「これを踏んだら罠が解ける……と思いたいけど」


 ふたたび二人ずつに分かれて、床のスイッチを同時に踏む透夜と絵理。


 すると外から大きな音がする。おそらく、鉄格子が元に戻る音であるはずだ。


 それに加えて、今いる通路のちょうど真ん中付近にある壁が振動し、腰ほどの高さに小さなくぼみが生まれた。


 まずは一旦外に出て、先ほどの大部屋へと戻る透夜たち。


 予想通り、鉄格子が完全にあがって入口の扉もふたたび開いていた。どうやら出られるようになったらしい。四人はほっと一息をつく。


 改めて先ほどできた壁のくぼみへと近づいた。


 そこには空のガラスビンが置いてある。他には何もない。


「はい、杏花さん」


 透夜がつかんだ唯一の戦利品は杏花に手渡される。四人の中で一番所持数が少ないのが彼女だからである。


「ありがとうございます」


 杏花は礼を述べて自分のベルトスロットにガラスビンを差し込んだ。


 これで杏花も、絵理とソーニャに並んでビンの所有本数が4となった。


「それじゃあ、戻ろうか?」


 透夜の言葉に全員がうなずき、罠が解除された大部屋を通り抜けて元の広間へと戻るのであった。

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