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056 四種類そろったこれは特別なアイテムなのか

 戦いの後の小休止を終えた後、四人はこの部屋の探索を再開することにした。


 先ほど開いて鎧の騎士たちが出てきた大扉の向こうには通路がのびており、その先にはさらに扉があった。こちらの扉は迷宮の通路でよく見かける扉と同じサイズであった。そばにはボタンもある。


 一応警戒しつつ、そのボタンを押す透夜。たちまち目の前の扉が上へとあがっていく。その先はすぐに行き止まりになっていたが、突き当りの壁にくぼみが開いていた。


 くぼみの中に台座があり、そこにはふたつのペンダントがかけられていた。デザイン的には地下六階で手に入れ、絵理と杏花が現在身に着けている、火や水をかたどったような宝石がついたあの首飾りに似ている。


 透夜はこの時思い出したが、あのふたつのペンダントも今見ているものと同じような台座からつり下げる形で安置されていた。


 ひとつは黄色の宝石がペンダントトップにはめ込まれている。宝石の形は真四角に近かった。


 もうひとつは緑色の宝石がペンダントトップにはめ込まれている。その宝石は風の刃が激しく渦巻いているような様をかたどっていた。


「私たちが持っているペンダントと同じシリーズのものに見えますね」


 興味深げな声を出す杏花。


「ということは、黄色の方が土で、緑の方が風をイメージしてるのかな?」


 ゲームなどでこういった知識のある絵理が推測を口にする。その推測は透夜、ソーニャが抱くものと同じであった。


「じゃあ、これは私と透夜がもらっていいかしら?」


 ソーニャは絵理と杏花のほうを見ながら言葉を述べる。すでにペンダントを身に着けている二人はもちろんうなずいた。


 となると残る問題は、透夜とソーニャでどうペンダントを分配するのかということだが。


 ソーニャは二種類のペンダントを前にし、あごに手をあてて首を少し傾げながらつぶやく。


「土はちょっと……私のイメージと違うっていうか……あ、べ、別に透夜には土属性がお似合いとか土臭そうとかそういうこと言ってるわけじゃなくてね!?」


 言ってる言ってる……と透夜だけでなく絵理と杏花も思ったが、二人の少女はそのことについて指摘する気にはなれなかった。風のペンダントの方を欲しがるソーニャの気持ちが理解できるからである。


 慌てて弁解したソーニャに透夜は小さく笑いながら自分の意志を伝えた。


「僕は正直言ってどちらでもかまわないですから、先輩が緑色の方をつけてかまいませんよ」


「そ、そう? ありがとうね、透夜」


 ソーニャは満足気な笑みを浮かべて緑の宝石がついたペンダントを手に取った。


    ◇◆◇◆◇


 広間へと戻ってきた透夜たち。ソーニャの首からは緑色の宝石の、透夜の首からは黄色の宝石の飾りがついたペンダントがそれぞれかけられている。


「やっぱり、何か魔法の効果があるのかな?」


 絵理が、自分が身に着けている火をかたどった赤い宝石のペンダントと、杏花の胸の前で揺れている水滴をかたどった青いペンダントを見つめながらそう言った。


「そうだね。ああいった感じで安置されていると、何か特別なことがあっても不思議じゃないって思うよ」


 透夜も先ほど手に入れた首飾りのペンダントトップをつまみながらそう答える。


「まあ、何も効果がなくても嬉しいけどね」


 ソーニャもかつての絵理、杏花と同じく綺麗なアクセサリーが手に入ってご機嫌のようだ。


「四人でおそろいのペンダントって、一体感が増していいですね」


 杏花もそう言って全員の持つペンダントを眺める。


 これでいわゆる地水火風がそろったことになる。魔法の効果があるにしろないにしろ、このアクセサリーからは何か特別なものが感じられた。


「そういえばこれって、ルビーとかサファイアみたいな本物の宝石だったりするのかな?」


 絵理は自分のペンダントトップを持ち上げ、目の前にかざした。まるで宝石鑑定士のように片目をつぶって赤い輝きを見ている。絵理の場合『本物の宝石』という言葉は『高価な宝石』という意味で喋っている可能性が高そうだ。


「私のはエメラルド、透夜のはトパーズってところかしら? ……そうだったら嬉しいんだけどね」


 ソーニャが小さく笑いながら絵理を見つめた。透夜と杏花もソーニャの気持ちがよく分かる。


「あの金貨のことを思い出すと、あまり期待はできませんね……」


「確かにね」


 杏花の言葉に透夜も笑う。あの時手に入れた金貨が純金だったら、そんな夢も見られたかもしれないが……。


 ただ、少なくともこのペンダントにはあの金貨のような安っぽさはない。ペンダントトップについているのが高価な宝石であろうとなかろうと、質感もデザインも素晴らしいものに思えた。それは確かだ。それに杏花が言ったように、統一感のあるアクセサリーを仲間でつけているというのは何だか嬉しい。


 ……と、そんなことを和やかに話している四人であったが、空を舞って押し寄せる魔物の影を見つけた透夜が一声かけると、たちまちペンダント談義を切り上げて戦う者の顔になった。


 全員がそちらを注視する。


 そこにいたのはこの階ですでに一度戦っているモンスター、ジャイアントバットだった。あの時ほどの数ではないにしろ、徒党を組んで透夜たちの方へと向かってきている。討ち漏らした相手も混ざっているのかもしれない。


 今回はソーニャもクロスボウで狙いをつける時間はなさそうだ。銀髪の少女は愛用の両手剣を構える。


 透夜たちもそれぞれ己の得物を手に持ち、巨大コウモリの群れを迎え撃った。


 地下七階に来た時ほど一方的ではなかったものの、透夜たちは大した怪我をすることもなく戦いは終わった。

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