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ピロンと、ラインの通知音が鳴った。
『ねえ。あれ、作ってる人いる?』
なんで聞いちゃうかな。誰かがうっかり答えちゃったら注意事項破っちゃうことになるじゃん!
『つか、既読少なくない? みんな見てないの?』
『今いない子たちは、ちょうどチョコ持ってって告ってるんじゃなぁい?』
『私はあのレシピじゃないよ、結局』
『ウチ、今から渡してくるよ! あ、これって作ったこと教えることにカウントされる?』
『何も言わないのが正解だったかもねー。ツイッターとかインスタとかやばくない?』
『なに、なんかヤバいの?』
『この話題、しないほうがいいレベル』
『えー! 超気になるんですけどww』
『見たけど、あんなん何とも言えなくない? レシピのせいって決まってないし。信じてないし。あたし、作ったけどなんともないよ』
『ちょ。言ってんじゃん』
『これ、お呪いじゃなくて呪いだったんじゃないの……』
クラスのグループラインはこのあとぷつりと沈黙した。
作ったことを言えば自分か相手に呪いが降りかかるかもしれないからなのか。それとも、連絡ができないような状況になってしまったのか……。
気味が悪くて、この不気味を共有したくて、誰かに電話してみようかとも思ったけれど、それが注意事項を破ることにつながったらと思うと、できなかった。
何か情報を得ていないと不安になってきてツイッターを見ると、さっき見たような投稿がどんどん増えている。それに憶測が加わったり、おまじないレシピに関連すると思われる投稿をまとめる人も出始めた。
もはや怖いもの見たさ。都市伝説でも目の当たりにしている気がした。
《手作りチョコゲット! でも、これ、あのレシピじゃないよな? 食べて大丈夫?》
《やばいことが起こった。職場で義理チョコ配られたんだけど、食べたやつら、みんな胸おさえて苦しそうに倒れた。あのレシピ使ったらしい。俺はツイッターで見てたから、手作りって聞いて一応食べなかったから助かった》
《皮膚科にきたら、なんかすっごい顔がただれた人がいっぱいいて引くレベルだったんだけど、なにか近くで事故でもあったのかな》
《あのレシピ、出来上がったの味見してから胃がヤバい。死ぬかも》
他にもたくさん、まとめを見れば“あのレシピ”が関係してそうな投稿がいくらでも見れた。
自分は手を出さなくて良かったと胸を撫で下ろしつつ、テレビやSNSをずっとチェックしてしまったので、夕方外が暗くなり始めてから、慌てて友チョコ作りを始めた。夕飯を作りたいお母さんに、台所を占拠していることを怒られながら……。