ペア―ルック
今私は、軽いパニックに陥っている。今日の為に買った黒のプリッツスカートが、どのトップスにもまるで合わない。ベージュのニットと合わせようと考えていたけれど、当ては大外れ。そのせいで、クローゼットと部屋を何往復したことか。ベッドの上には、洋服の山がそびえ立っている有様よ。スカートを諦めるわけにはいかない。一目惚れして、この日の為に買ったんだもの。何としても今日の旦那とのデートは、これで行きたい。洋服選びにかれこれ1時間近く格闘しているけれど、今頃、旦那は怒っているかしら。
今僕は、軽いパニックに陥っている。今日の為に買った紺のウールパンツが、どのトップスにも合わないのだ。チェックのシャツと合わせようと考えていたが、当ては大外れ。そのせいで、クローゼットと部屋を何往復したことか。ベッドの上には、洋服の山がそびえ立っている有様だ。ウールパンツを諦めるわけにはいかない。一目惚れして、この日の為に買ったんだ。何としても今日の妻とのデートはこれで行きたい。洋服選びにかれこれ、1時間近く格闘しているけれど、今頃、妻は怒っているだろうか。
やってしまったわ。今日はつくづくついてない。クローゼットの棚の上に置いていた紙袋が倒れて、中から洋服が流れ落ちてきたの。着なくなった洋服たち。こんな事なら、さっさと処分しておけば良かった。私は紙袋を棚の上から一旦降ろして、散らばった洋服を中にしまっていく。まさかこれが、更なる悲劇を生むなんて。長年均衡を保ち続けていた棚の上が紙袋をひとつ抜いたことでバランスを崩し、棚の上に置いていた靴箱が、私の頭上に落ちてきたの。さほど痛みはなかったけど、泣きそうになる。私はその場に座り込んでしまった。紙袋から流れ落ちてきた洋服で、クローゼットは泥棒に荒らされたような有様。もう、何なのよー。
物音がしたので、僕は手を止めて妻の部屋の方に視線を向ける。何かあったのだろうか。気にはなるが、今は心配している余裕はない。先ほど棚の上に置いていた紙袋から洋服が流れ落ちてきて、クローゼット内が泥棒に荒らされたように散らばっている。こんな事なら、さっさと処分しておけば良かった。それにしても、今日はついていない。僕は頭をさすりながら、靴箱を棚の上に戻す。
私は流れ落ちてきた洋服の中から、懐かしいモノを発見した。旦那とペアールックで買ったクマのアップリケが付いたトレーナー。付き合い初めの頃に行ったテーマパークで購入したもの。テーマパーク特有のハイテンションでしか着ることが出来ない恥ずかしい品。プリッツスカートに合うわけはないけど、否、合ったとしても着て行くわけがないけど、懐かしさに思わず袖を通してみた。行き詰っていた空気から逃げ出したい思いだったのかもしれない。姿見の前に立ち、自分の姿を眺める。オシャレなプリッツスカートにクマのアップリケのトレーナー。可笑しくて笑えてくる。ああ~、何やってんだか。こんな事をしている場合ではないのに。今頃、旦那は怒っているに違いない。でも…
僕は何をやっているのだろう。早く決めなくてはならないと言うのに。でも着ずにはいれなかった。僕はオシャレなウールパンツにクマのアップリケが付いたトレーナーを合わせている。可笑しくて笑えてくる。ああ~、何やってんだ。こんな事をしている場合ではないのに。今頃、妻は怒っているに違いない。でも…
この格好で部屋を出たら、笑ってくれるだろうか…思い切って廊下に一歩踏み出してみた。
終