神官 キヨシュウ・バラガン
俺は目を瞑りゆっくりと息を吸う。
そして静かに同じくらいゆっくりと吐き出して
顔を正面に戻しルシアナを見る。
「とりあえず『魔王』については分かりました。
次は俺の『スキル』についてなんですが・・・・」
そう話を切り出そうとした時
「ルシアナ様、お時間です。次の公務が押しております。」
俺をここへ連れてきてくれた女官が話に割り込む。
「もうそんな時間ですか?話はまだ終わってないのですが・・・?」
ルシアナは抗議の声を女官にあげる。
女官は首を振り冷静に彼女の抗議を一蹴する。
「いいえ、本来の仕事をずらして時間を作ったのです。これ以上ほかの方々に負担を強いるわけには参りません。本来、このようなことに時間を割いてる暇もございませんので」
女官は厳しい目でこちらを見ている。
・・・なんとなく気づいてはいたが・・・・あまり歓迎されてないようだ。とくにこの人には。
「でもファイネン、カザミ様は・・・」
そう彼女が食い下がろうとすると
ファイネンと呼ばれた女官は話を遮る。
「この方の浅はかな発言で今まで以上にお立場がよくありません。他との軋轢を少しでも減らすために今は優先すべきことをお考え下さい」
ファイネンは厳しく諭す。
「ファイネン!!言葉が過ぎます!!」
さすがに今の言葉にルシアナが叱責する。ファイネンは不承不承ながら非を詫びるように首を垂れたがルシアナもファイネンの言を聞き得れたのだろう。
「カザミ様、申し訳ありませんが今回はこれで失礼します。できる限り早めに時間を作りますのでまたその時に話し合いましょう」
彼女は立ち上がり申し訳なさそうに謝罪をする。
その姿を見て後ろのファイネンの眉間にに明らかな皺がよる。
「い、いえ。お気になさらず。俺はすることがありませんから独自でいろいろと調べてみようと思います。俺の行動の自由は制限されてるのですかね?」
そう聞くと
「いえ、特には。ただ入ってはいけない場所などが多々あります。部屋に入ったりするのは避けていただけると助かります。なんなら案内の者をお付けしましょうか?」
ルシアナは心配そうに聞いてくる。
「ルシアナ様、あとのことはわたくしが伺います。早く次の公務へ」
ファイネンは静かに促す。ただこちらを睨む目は鬼のようです。・・・・怖い。
「わかりました。ファイネン、悪いけどお願いね。ではカザミ様。またお会いしましょう」
そう言って彼女は俺に笑顔で会釈をする。
そんな彼女を俺は呼び止めて
「あ、あのひとつだけ。俺の名前は盛斡で。加佐見の方が性名なんです」
そういうとルシアナは驚き
「そ、そうなんですか?すいません、失礼しました。ではモリアツ様。またお会いしましょう」
もう一度会釈をして彼女は踵を返した。
ファイネンが俺の前に立ち、礼をして
「すみませんがカザミ様。少しこちらの庭にてお待ちいただいててもかまいませんか?私も所用がありますので」
そう彼女が申し出てきた。目が・・・怖い・・・。
「ああ、かまいません。庭の中を散策してても?」
俺は天気もいいし少し歩きたかった。
「・・・かまいませんが誰かに会いましたらできれば避けていただけますよう。よい思いはされぬことになると思いますので」
ファイネンはそう言うと一礼をして素早くルシアナを追っていった。
それを見送ると俺は少し背伸びをした。
今の一連の会話からルシアナの立ち位置というのはどうも微妙なようだ。
その微妙な立ち位置であるところに昨日の俺の騒動。たぶん彼女はだいぶん危うい状況と考えてもいいのかもしれない。
・・・・さて、どうしたもんか。情報が少なすぎて困ってしまうな。
とりあえず歩きたかった。
綺麗に造園された庭を気の向くままに歩き始める。
気温は暖かく春くらいの気候なのだろうか。
花々が庭のあちこちに咲いていていい香りが漂っている。
でもルシアナの香りには劣るがな。なんてことを考えながら歩いているとベンチのようなところに人が座っている。
おっと、誰かいたら避けろって言ってたな。
俺は物陰に隠れる。
そこに座っている人物に俺は見覚えがあった。
接触するかどうか一瞬迷ったが意を決して近づいていく。
「昨日はどうもお世話になりました」
俺が声をかけると男はビクッとなってこちらを恐る恐る振り返る。
「・・・・あ、あなたは・・・・」
男は俺を見てギョッとする。
昨日俺にスキル発現の儀を執り行ってくれた神官だった。
年の頃は20代後半くらいだろうか。口ひげのせいでおっさんかと思ったら思ったより若いようだ。
ヒョロリとした感じで耳が隠れるくらいの髪はくせ毛なのかウェーブがかっている。
顔は少しやつれ目の下にクマができている。
昨日はこんな感じじゃなかった気がするが・・・
「いい天気なのに顔色悪いっすね?」
俺は気さくに声をかけることにした。
「ぁ、ああ。昨日の失敗でね・・・・少し・・・・」
昨日の失敗?ああ、スキルを読みそこなったことか。あの程度で失敗?
いや、本来あの瞬間しか『スキル』を見ることができなかったとしたら大失敗か。じーさんの前だったしな。
「あまり落ち込まないほうがいいんじゃないですか?問題はなかったんだし」
出来る限り軽い感じで俺は話をしてみる。
「・・・・そうはいかないんだ。あれだけの大舞台だったんだ・・・・。取り返しはつかないよ。」
彼は泣いているのか声が震えている。
ルシアナを見てても思うが相当仕事のやり悪そうな場所みたいだな。あのじーさんがトップなら分からんでもないか。
「まぁ挽回の機会もありますよ。そうだ、俺に協力してくれないっすか?俺が活躍してルシアナの立場がよくなったら君も協力者として名を上げる機会を得れるわけですし」
ふいな思いつきだったが妙案だな。と自分で思った。
彼はその話を聞いてこちらを見て胡散臭そうにしていたが
少し考えて
「・・・それはいいかもしれないね。このままならどうせ冷や飯食らいになるのは確実だ・・・。
君たちに力を貸して失敗したところで失うものはない・・・・か」
男は少し前向きに考えたようだ。
「俺はカザミ モリアツ。『女神の使い』をやってます」
俺はそう言って手を差し出す。
その手を見てキョトンとする男。
ああ、もしかしてこの世界には握手の習慣がないのか。俺は彼の手を取り無理やり握手をして
「俺たちの世界の仲良くしましょうの証ですよ」
そう言った。彼はよくわかっていなかったが
「僕はキヨシュウ・バラガンです。この教団で『スキル』研究とスキル発現の儀を執り行うのを仕事にしてます。よろしく」
また変な脇役が増えた・・・
いまだに「ルシアナ」の名前をちょいちょい忘れますw
メインヒロインなのにww
女の子の可愛いを表現する語彙の陳腐さに頭を悩ませております。
これから女の子増えるのにどうしたらいいんだ・・・・・。
女性を口説くのが得意な方ご教授をお願いします。
女の子口説くのが不得意な方は高評価、ブックマーク、感想をオネガイシマスw