東屋
「・・・・様、カザミ様。」
誰かの呼ぶ声で意識が浮上してくる。
うーん。もうちょっと寝たいよ・・・・。というか起されるのが久々すぎるな・・・・とか考えながらゆっくりと意識が浮上する。
「・・・・。えーと・・・はい・・・・・」
ごそごそと布団から這い出て
うまく回らない頭であたりを見回す。
やたら広いベッドの上にいる自分。
それよりも広く木造の温かみのある家具がきちんと置いてある高級ホテルのような室内。
・・・・ぁぁ、寝る前の状態はどうやら夢ではなかったようだ。
「カザミ様、聖女様がお逢いしたいそうです。すぐにご支度をお願いいたします」
ベッドのとなりに品のあるキツい感じの女性が立っていた。恰好からして女神官なのだろう。
キリっとした表情が敏腕女秘書か強面女教師を連想させる。
「あー、はい。すぐに支度します。・・・・えーと洗面所はどこですかね?」
辺りを見渡しながら俺は女の人に聞く。
「あちらです。では私は外で控えさせていただきます。準備ができましたらお呼びください」
彼女は部屋の右奥を手で示してそう言うと一礼してスタスタと部屋の外に出ていってしまった。
俺はとりあえずトイレに行き洗面所で身なりを整える。
それだけでも四苦八苦だった。割愛させていただくが文化が違うというのは大変なのだ・・・・。
普段なら30秒で支度するおれが30分かかってやっと廊下へと出る。
「準備はよろしいでしょうか?」
先ほどの女の人が後ろから声をかけてきてびくっとなる。びっくりしたなぁ、もう。
「あ、はい。おかしなところはないですかね?」
おれは一応身だしなみの確認をしてもらう。
さすがに着た切り雀では女の子の前に出たくなかったので用意してくれてた服に袖を通した。
男性の神官の服のようだった。
女の人は上から下まで眺めた後、
「後ろを向いてください」
そう言われたので後ろを向くと後ろから服をぐっと引っ張られさらにくるっと回されるとベルト替わりの帯をぐるぐると緩めて締め直された。
襟を正されて裾を伸ばされビシッと決めてくれた。
そしてクルリと反転し
「では参りましょう。聖女様がお待ちです」
そう言って歩き出す。まぁまぁの早足で。
少し小走りで彼女についていくと広い庭に出る。
本日は快晴なり。と言いたくなるほど陽気でいい天気だった。
きちんと手入れされた庭をズイズイっと進んでいくと小さな東屋のような建物に通される。
そこにはルシアナが待っていた。
昨夜とは違いラフな服装だった。髪はサイドの三つ編みはそのままだったが左右に下ろされたままだった、後ろ髪は邪魔にならないように結わえてまとめてある。首筋が見えてエロい。服装はゆったりとした長めのワンピースでシンプルだが胸元に豪勢な刺繍が施されてある。
彼女には日光がよく似合い太陽の下では昨日の3倍(当社比)は可愛く見えた。
「ようこそお越しくださいました。昨夜は朝方になってしまいましたがよく眠れましたか?」
彼女は花のように微笑み俺に席に座るよう促す。
彼女に見惚れていた俺はハッとして席にそそくさと移動する。
「ええ、ゆっくり休ませてもらいました。昨日は色々とお手数をかけてすんません」
俺はまず謝り頭を下げる。
「いいえ、こちらこそ色々と分からないことだらけの中、ご迷惑をかけたのはこちらも同じ。改めてお詫びを」
彼女は立ち上がり謝罪をする。
「いやいや、頭は下げないでください。俺もどうも下手を打ったみたいですし今日はそのあたりの話をお聞かせください」
謝罪合戦になりそうなので俺は早々に先手を打つ。
彼女もそのことを察したのか顔を上げてはにかんで
「そうですね。では今後の話をしましょう」
そう言って席についた。
俺も席に着く。
「まず、『魔王』について説明もらっていいですか?実際『魔王』がどんなもんなのか気になって・・・」
ルシアナは少し神妙な顔になり
「そうですね、その話から始めましょう。
まず『魔王』という存在は私たち女神アファーナを崇める教団では存在している。とされています。私たちのこの世界には『魔獣』と呼ばれる脅威があります」
彼女はここでいったん言葉を止めてお茶に口をつける。口を湿らす程度にお茶を飲むとまた語り始める。
「『魔獣』とは人を襲う獣。・・・普通に人を襲う獣はいるのですが・・・『魔獣』は捕食目的で人を襲うのでなく人を襲うために存在する獣というのが正確なのでしょう。
どこからともなく出現して人を襲い葬る。街を襲い暴れる。その脅威に私たちは常に晒されています。」
彼女の表情は悲しみに包まれている。
「このどこからともなく現れる『魔獣』を送り出すのが『魔王』とされています。よって『魔王』討伐は私たち教団の悲願ではあるのですが・・・」
彼女は俺を真剣な表情で見据える。可愛らしさは変わらないが今は毅然とした聖女そのものの顔だった。
「ただ、『魔王』がどこにいるのか?存在するのか?という点が問題なのです。『魔王』を見たもの、その所在を知ってるものはいまだ存在していません」
彼女は目を伏せて話を終える。
ああ、なるほど・・・・つまり魔獣の存在が謎なのでその謎を魔王が送り出している。と過程して話が作られているということか・・・・。
俺たちの世界の悪魔や地獄と同じ装置ということか・・・・。
そりゃあ「魔王なんていません」なんてあの場では言えないよなぁ。
おれは天を仰ぎ大きくため息をつく。
やらかしてるよ・・・・じーさんが嬉しそうに笑ってたはずだわ。いないものを討伐すると啖呵を切っちゃったんだ・・・。
サブタイにさっそく困る落ち。
庭園などにある偉い人が会合したりお茶したりする掘立小屋。あれ「東屋」っていうんだぜっ!!(得たばかりの知識)
すでにストックが尽きてますw
あと「何度も読んだ小説は?」と聞かれたら「自分で書いた小説です(キリッ」
って答えるくらい推敲してます。
私に勝るくらい読んでくれてる方は高評価、ブックマーク、感想をお願いしますw