ニケル・ルーベンク
セナの後ろにいる少女は丸くなって意識を失っているようだった。
小さな少女だった。年は10~12歳くらいだろうか?肩くらいまでの亜麻色の髪に少し黒ずんだ血がこびりついている。貧相な服装からして村の子だろうか?俺はセナと少女に近づく。
その時セナの顔色が悪いことに気づき
「セナ、顔色が悪いぞ。どこかにケガを・・・」
そう聞こうとしたとき彼女の腹部が出血で染まっているのをみて
「っセナ!!大丈夫かっ!!」
俺は彼女の傷を見て右往左往する。
こういう場合は・・・ええと・・・消毒っ。
俺は辺りを見渡すがここにはなにもない。
そんなうろたえる俺を見てセナが
「見た目ほどひどくないわ。ただ傷口を洗って縛らなきゃ。ここはまた魔獣が来るかもしれないわ」
そう言ったセナは身体を無理に起こそうとするので俺はそれを静止して最初の戦場を目指し飛び出す。
曲がり角まで来ていたニケルとぶつかりかけて
「セナはそこを曲がったところだ。彼女怪我してる。荷物、取ってくるからどこか綺麗で安全な場所に移動させてくれ」
俺は慌てすぎていて言いたいことを言うと急いで荷物のところまで戻った。
最初に放り出した雑嚢の中に救急用の薬や酒などがあった。
俺はそれらをかき集めてセナの元に戻る。
「セナさん、大丈夫ですか?」
戻ってみるとニケルがセナに肩を貸して近くの荒れてない小屋に移動しているところだった。
俺は荷物を背負い直しニケルの背負っている少女を受け取る。華奢な少女はとても軽かった。
俺たちは小屋に入り、セナと少女を寝かせて
「セナ、薬取ってきた。ニケルもほら。」
俺はセナのおなか当たりの服を慎重にナイフで切り傷口を酒で流す。彼女は痛そうに眉をしかめ歯を食いしばる。しっかりと血と汚れを流した後、酒で消毒した布で傷口を抑えてその辺で拾ってきた汚れてない布でぐるぐる巻きにする。
一旦これで良し。
そして今度はニケルの方を処置する。彼は全身傷だらけだったが致命傷になりそうな傷はなかった。だが満身創痍。次の戦闘は耐えれそうもなかった。
俺が一生懸命治療してるのにああだこうだと文句を言うニケル。
彼は父が医者らしく治療にはうるさい男だった。
1時間ほどかけて2人の治療をして
俺は独り外にでて一応、村をざっと見て回った。
ひどい状況だった。魔獣に襲われ、なす術もなく殺された村人の死体がたくさん転がっていた。
逃げ切った人がいるのかは不明だが相当な死体が転がっていた。
俺は途中で見つけた井戸で全身の返り血を流しその辺の民家で着れそうな服を探し無理やり着替える。
血が腐臭へと変わり始め嫌なにおいが村を覆い始めていた。
俺は急いでみんなの所に戻り
「もう出発しよう。・・・・この村は・・・・もう・・・」
そう告げるのがやっとだった。
セナの顔色は先ほどより悪くなっていた。今は眠っている。
造血剤と痛み止めのおかげで少し安定しているとは言えあまり動ける状況ではなさそうだった。
気を失ってた少女もまだ眠っている。
怪我の治療中にセナが経緯を離して食えた。
セナの前に倒れてた男の死体が少女をさっきの場所に彼女を隠そうとしていたそうだ。そこに魔獣が来て襲われていたところをセナが割って入ったそうだ。
なんとかその魔獣は倒したものの血の匂いに惹かれてすぐに次の魔獣がやってきてそれを捌き切れず咬みつかれてしまったのだそうだ。
そして死を覚悟したとき俺が駆けつけた。まさに間一髪だったようだ。
「これからどこに向かえばいい?駐屯地に引き返すか?」
俺はニケルと相談する。眠るセナの髪を少し撫でてからニケルを見る。
ニケルもボロボロだったがまだなんとか動けるようだ。
俺が巻いたへたくそな包帯を一人で直しながら
「駐屯地は来た道を戻らなきゃならない。ロッソ村の方にあいつらが集まってきてなければそれもありだが・・・。確実に危険を回避するなら南の山を抜ければ迂回して駐屯地の方へ出れるが・・・ただセナさんの顔色が悪い。山を登る体力があるかどうか・・・」
寝息を立てているセナを見てニケルがそう答える。
「どちらにせよ、ここにはこれ以上長居はできない。それこそ奴らが血の匂いで集まってくるぞ」
俺は意を決してセナに声をかける。
「セナ、起きてくれ、セナ。ここは危険だ。無茶かもしれないが南の山に入ろう。その方が危険が少ないそうだ」
彼女の頬に触れすこしぺちぺちしてみる。
「ぅ・・・ぁ・・、モリアツ?私どれくらい寝てたの?」
セナは周りを見渡し経過した時間を確認する。
「ほんの30分くらいだ。ここは危険だ、イチかバチかになるが南の山に分け入ろう。
ここよりは安全だし行けるようなら駐屯地を目指そう」
俺はそういって眠ってる少女を背負う。
ニケルが少女が落ちないように紐で固定してくれる。
セナも状況を察したらしく頷いてゆっくり立ち上がり、顔をゆがめながら必要なものを集めて持つ。
「ギィィィィィィ」
外で嫌な鳴き声が遠くに聞こえる。しかも複数だ・・・。
俺たちに緊張が走る。
「急ごう。どっちにいけばいい?」
準備ができて俺たちは休んでいた小屋から外に出る。
「そっちの道をいけば山に入るはずだ。道は・・・たぶん獣道程度しかない。暗くなる前に行けるところまで行け。まっすぐ南を目指せば降りれるはずだ」
ニケルがそう俺に指示する。指示の内容が・・・変だ。
「ニケル、何を言ってる?お前が案内してくれ」
俺はニケルを見る。
彼は小屋から出てから自分の武器の状態を確認している。持つべき雑嚢などの荷物をもっていなかった。
ゆっくりしでてきたセナにニケルは近づき
「セナさん。つらいでしょうが山頂に向けて歩いてください。・・・必ず生きて帰ってください」
ニケルはそう言って彼女の手を握った。
セナは頭が回っていない感じで暫く彼を見ていたが急に目を大きく見開き彼の手を振りほどきニケルの頬を叩く。
「一緒に来なさい。命令よ!!!」
弱弱しい。あまりにも弱弱しいビンタでニケルは苦笑いして
「大丈夫っす。少しあいつらをかく乱したらすぐ追いかけます。
こう見えて俺、以外にやるんですよ。
そうですね。じゃあ約束してください。帰ったら俺とデートしてくれるって。そしたら俺絶対帰れますから」
そう力なく笑うニケル。
俺はもうなにも言えない。
セナも怒りで火を噴きそうな顔をしていたが
一瞬でくしゃっと泣きそうな表情に崩れる。
「わかったわ!!一緒にデートしましょう。だから、必ずよ!!いいわねっ!!」
そういうとニケルの首に手を回して抱き着く。
「あたりまえじゃないですか。
俺、セナさんに憧れてるんっす。
キスするまでは死ねませんよ」
ニケルは優しく彼女を抱きしめてすぐに離す。
そして俺に目配せをした後
「・・・行ってください。おれはあいつらをひっかき回した後で追いかけますんで」
・・・本来なら。
本来なら俺がやるべき仕事だった。
だが、気を失った少女とセナをかばいながら
山を登れるほどの体力をニケルはもう持っていないのだろう。
「わかった。必ず追いついてこい。待ってるぞ。行こう。セナ」
俺はいつまでも歩こうとしないセナの手を引いて歩き始める。
ゆっくりと。
力強く。
振り返ることだけはできなかった。
ニケル・ルーベンク
彼の名を俺は思い出すたびに悔しくてつらかった。
てきとーに湧いて出たキャラがめっちゃ男前でした。
この話の冒頭へと続くシーンはあっさり適当にの予定だったんですが
思った以上にピンチ&無双ができて個人的には楽しかったです。
さて、ヒロインは語ったので今度は欄外スキル紹介
主人公の『完璧防御』
意外とこれが一番無敵の能力で
パッシブスキルの上弱点らしい弱点があまりないという。
唯一自傷のみがダメージですかね?
あと窒息にも対応できない。という仕様です。
なかなか進みませんがブックマーク、高評価、感想を頂けるとブーストがかかりますのでお願いしますw




