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捕捉話 彼女の思い セナⅠ

「もっと早く走って!!追いつかれるぞっ!!」


全力で馬を走らせながらセナは追いかけてくる魔獣との距離を確認して前を走る部下たちを叱咤する。

後方からはものすごい勢いで追従してくる魔獣『暴炎獣 ファクマグス』は口から炎を吹き出しながら追いかけてきている。ファクマグスは中型魔獣の中では小柄だが、体内で発火性の粘膜液を作っておりそれが発火して火の玉を放ったりする極めて危険性の高い魔獣である。

今回セナたちの隊がたまたま巡回していた村を襲撃していたところに遭遇した。

村人の避難をさせつつ、魔獣の気を引き誘導しながらここまで引っ張ってきた。ファクマグスは火を使う魔獣である以上周りの延焼を防ぐために平野部や水辺で戦闘するのが好ましい。セナたちは近くの川を目指して馬を全力で走らせているところだった。


「狼煙矢を上げてからどれくらい経ってる?」


セナは前を走る男に大声で尋ねた。


「もう30分くらいは経ってますよ!!カザミのやつはまだですかっ!!」


男は後方の魔獣がついてきているか確認しながら答える。

セナが怒りをあらわにする。


「まったく!!あいつなにやってんのよ!!」


いくらなんでも狼煙をあげてから時間が経ちすぎている。もう一度上げるように指示しようとした矢先に


「いやぁ、悪い悪い。実は起きたままの恰好だったせいでさ。服探すのに戸惑って少し時間がかかったんだよ」


「きゃああああああ!!」


突然、後ろから抱きすくめられて耳元で声を掛けられセナは驚きで大きな悲鳴を上げる。

反射的にうっかり肘鉄をいれてしまう。

ゴスッといい音がした。男は肘鉄を食らったあたりをさすりながら


「ひっどいな。まぁ脅かした俺がわるいけど肘鉄は酷い」


突然現れた男はセナの馬の後ろにまたがっていた。


「ギュワァァァァァァァァ!!」


魔獣が吠える。セナたちの後ろに差し迫ったファクマグスは大きく口を開け頭をのけ反らす。

火の球を吐き出す仕草だった。

セナはまずいと思ったが馬が急に重くなったせいで戸惑って動きが鈍い。

切り返して魔獣の攻撃を避けるのは不可能だとセナは感じた。


「あ、まずい」


後ろに跨っていた男も後方の魔獣が攻撃動作に入ったのを確認し、ぱっとセナから手を離して後方へと身を投げだす。


「えっ。モリアツ?!!」


セナは一瞬のことで驚いたが驚いたことが無駄なことを思い出す。

その時、魔獣は口から火の塊を男に向けて吐き出される。男は盾になるように身体を広げ、吐き出された火の塊を全身に受ける。火球ではじけ飛び燃え上がり、そのまま地面に転がり落ちた。


「モリアツっ!!」


セナは馬を巧みに操り左に旋回して方向転換をしてモリアツの元へ馬を走らせる。

そして馬上で精神統一を始める。

地面に転がっているモリアツだった炎の塊はそのままむくりと起き上がり何かを投げる。

モリアツが投げた物は大した速度もなく手元を離れたがどんどん加速していき魔獣にヒットするときにはすさまじい速度と化していた。


ブチュッ


という音と共に加速した物が魔獣の正中線を貫き通り、魔獣はグタリとその場に倒れた。

セナは馬上で詠唱を完了させて


「フローズンジャベリン!!」


とモリアツに向けて氷の槍の魔法をかける。


「いだだだだだ」


ザクザクザクと空中に出現した氷の槍は男にめがけて飛んでいきヒットする。モリアツはヒットするたびに変な声を上げたが氷の槍が彼の身体に纏わりつく火と相殺し合い消化していった。


「まったく、いたずらなんかしないでさっさとやらないからそういう目に合うのよ」


セナは馬の手綱を取り直し、馬を制御して減速しながら男に近づく。


「ひどいよ。セナ。身を挺してかばった仲間にこの仕打ち」


男は上体を起こし身体に付いた煤を払いながら立ち上がる。

セナは飽きれながら


「燃え続けるよりはいいでしょ?って前くらい隠しなさいよっ」


セナは顔を真っ赤にして目を逸らす。


「なんだ、セナ。人と話す時は眼を見てするもんだぞ!!」


モリアツはニヤニヤしながら仁王立ちをする。セナの反応を面白がっているのだ。

面白がってるのが癇に障ったセナはまた詠唱を開始して、モリアツに手をかざし


「ライトニングシェル!!」


魔法を唱える。逃げようとしたモリアツは間に合わず雷撃の繭に包まれ


「ガガガガガガガガッ」


と変な声を上げながら痺れて倒れる。


「そ、それはない・・・・ひ、ひどいぃぃぃぃ」


電撃でビクビクしながらモリアツは抗議した。

『完璧防御』を持つモリアツだが一応感覚に訴えるものは効果がある。熱さや寒さ、電気の痺れなどは多少だが効果はある。嫌がらせレベルでしかないが。


「ふん、へんなもの見せつけるからよっ!!」


セナはぷいっとモリアツから離れる。馬から降りて魔獣へと近づいていく。

魔獣はまだ動きだしそうな姿だったが眉間に大きなこぶし大の穴が開いていた。

モリアツの『必中必殺』で投げられた石ころが突き抜けた後だった。


「今回は頭部まで綺麗に残ったわね。マーファが喜ぶわ」


セナは死骸をかるく検分すると戻ってきた他の隊員に狼煙矢を上げるよう指示をだす。

回収班を呼ぶのだ。

他の隊員から外套を借りて羽織ったモリアツが近づいてきた。


「どうよ?俺もだいぶんうまくなっただろ?」


自慢げに胸を張るモリアツ。

その言い方でカチンときたのでセナは褒める気が失せて


「ふん、そろそろ慣れてもらわないと困るわよ。『女神の使い』様は魔王討伐に精をだしてもらわないといけないんだからっ」


そう皮肉を言う。

モリアツは魔王討伐の話が出るとぐぅの音がでない顔をするのだ。今回も


「ぐぅ」


と言って黙りすこしシュンとする。

相手の痛いところを突いたのを少し後悔して胸が痛くなった。


「ま、まぁさっきは助けてもらったしね。感謝はしてるんだからねっ」


そういうと少し顔が火照ったのを感じてモリアツから顔を背ける。

最近、モリアツと話してると時々自分の感情を制御できない時がある。彼を見ると、彼と話しているとドキドキすることが多い気がする。

気のせいだと思いたい。

セナはそんなことを考えながらモリアツから離れた。

閑話を挟みます。今回は本編みたいなものですが一人称でないものはすべて閑話扱いにしようと思ってますので。

世に言うツンデレ娘セナの心境みたいなものを書ければなと。


ツンデレスキーな人はブックマーク、高評価、ツンデレサイコーと感想をお願いしますw

ちなみに私はツンデレ好きです。気の強いツンデレ最高!!

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