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一触即発


セナと二人で部屋を出る。


「こっちよ。ついてらっしゃい」


そう促すと彼女はスタスタと歩き始める。

小柄な金髪の少女を俺は追いかける。

ツンケンしているが意外と面倒見はいいようだ。身長のせいで子供がお姉さんぶってるようにしか見えないのが難点だが。綺麗な金髪を後ろから眺めながら歩いていると


「ホントに入るの?討伐隊。あんたにやれるの??」


セナは急に立ち止まり、振り返ってそう問いかけてきた。真剣な表情だ。大きな翡翠のような瞳が吸い込まれそうなほど魅力的だと思った。俺は少し思案して


「やっぱり役に立ちませんかね?でも他にやれそうなことがなくて・・・」


そういうとセナは呆れ顔になり


「使えないとは言ってないわよ。それこそ魔獣の前でアホ踊りでもして食いつかれてくれればいいだけだし。飲み込まれて喉に詰まるもよし、腹の中で暴れてくれてもよし。足止めになってくれればそれだけで大助かりよ。そこまでやる覚悟があるのかって聞いてるの!!」


そう聞かれるとなんかひどい扱いだなと思った。

でも戦えない自分がなにかするにはそれが最低レベルの仕事なのだろう。

俺は神妙に頷き


「そうすることでなんらかの役に立てるなら」


そう言ってニッコリと笑ってみせた。

セナはその笑顔にたじろぎ、引きつった笑顔で


「・・・す、すごいわね。その意気は買うけど相当のヘンタイね・・・」


なんかひどい。

セナは納得いったように頷くと楽しそうにくるりと舞うように反転してまた歩き出す。金色の髪がふわりと舞う。


「ま、せいぜい頑張んなさい。爪の先くらいは期待してあげるわ」


そう言いながら顔だけ振り返り微笑んだ。



しばらくは下らない雑談をしながら広い廊下を歩いていると前に4人の男たちが屯って談笑をしていた。セナはその集団を見ると明らかに不機嫌になり足を止めて舌打ちをする。

男たちは20代くらいだろうか。全員しっかりとした体格。動きやすいトレーニング用の服装、手には木刀を持っている。


「こっちはちょっと通りたくないわ。引き返して別の道から行きましょう」


そう言って踵を返したところで男たちの中の一人がセナに気づき声をかけてくる。


「ようセナ、来てたのか。きてたならなんで教練場に顔をださないんだ?最近つれないんじゃないか?」


男の一人がニヤニヤしながら大きな声で呼ぶ。


「お?男連れたぁめずらしいじゃねーか。見たことねーにーちゃんだな。その女がおっかねーのしらねーの?」

長髪の男がそう言いながらゲラゲラと笑う。

いえ、知ってます。さんざん魔法を食らった上に蹴りまで食らいました。

俺は心の中で返答する。

セナは気にせずこの場を去ろうとする。

男たちは無視されたことにイラッとしたのだろう。


「おい!!シカトかよ。同じ部隊の仲間にたいして失礼じゃねーか!!」


男の一人が素早く走ってきて行く手を阻む。

他の連中もこちらへきて俺たちを囲む。


「最近、まったく教練場にこないじゃないか。俺との勝負を避けてるのか?」


最初にあいつらがたむろっていたところに残っていた連中のリーダー的存在の男が余裕ある態度でセナを挑発する。

セナは大きくため息をつき


「あなたたちと関わりたくないからここを去ろうとしてることもわからないの?面倒だから絡みたくなかったの。それくらい察しなさいよ。子供じゃないんだから」


取り囲んだ男たちをキッときつく睨みつけてセナは辛辣な言葉を放つ。


「なっ、なんだとっ!!」


通路を遮った身長が小柄な男は真っ赤な顔をして怒りに震えている。


「てめぇ、調子に乗ってんじゃねーよ。この人数相手に勝てると思ってんのか!!」


取り囲んだ長髪の男がすごむ。

セナはそんな威嚇も意にも介さずといった感じで睨みつけ


「何?女一人相手に3人がかり?いいわよ。そんなに地べたとキスしたいなら今すぐ全員眠らせてあげるわよ?」


セナはすでに腹に据えかねるといった感じだった。

なによりこの間感じたような「力」の収束をセナの周りに感じる。

だが取り囲んだ男のうち、さっきから黙っている坊主頭の一番ガタイがいい男からも同じように「力」の収束を感じる。セナが魔法を放てばあの男も魔法を使う気がした。

というか俺がくらった威力のやつをボコスカ撃ち合っていいもんなのか?そもそも女の子相手に3人がかりはさすがにまずいだろ。俺は見かねて止めに入る。


「あの、すんません。俺ちょっと資材装備部に用事があって隊長さんに彼女に案内してもらえと言われてるんです。すいませんが行かせてもらってもいいですか?」


できるだけ低姿勢に男たちを見渡しながらそうお願いする。

男たちは沈黙し俺をじっと見る。

次の瞬間、道を塞いでた男が容赦なく俺を殴り倒した。痛くはない。


「おめーに用はねーよ。勝手にしゃべんじゃねぇ!!」


ぁぁ、めんどくさい・・・・。そう考えた次の瞬間にはセナは詠唱に入っていた。

あ、まずい。俺は彼女の集中を邪魔しようと足にしがみ付く。いや、かっこ悪いしセクハラっぽいけど倒れてた俺にはそれしかできなかった。

沈黙していた大男もブツブツと唱え始め

他の2人はセナを止めようと襲い掛かろうとした瞬間


「そこまでだっ!!お前らもやめろ」


リーダーの男が一喝する。

すると全員ピタリと止まる。セナも一応止まった。リーダーは俺を見てこちらに歩いてくる。


「そこのお前。見たことないが何物だ?」


セナを止めようと彼女の足にしがみついてた俺にリーダーが声をかける。少し考えて


「え、えーと今日から入隊希望の一般男性です」


だいたい間違っていない説明をする。

あ、一般男性はちがうのかなー?なんて考えてると


「急に入隊なんかできるわけがないだろう。よほどの強『スキル』持ちか?だがスキル発現が行われた話は聞いてな・・・・お前、例の『女神の使い』か?」


リーダーと思われる男は鋭い顔つきになり俺を睨む。この男、なかなか情報通で感がいいようだ。

へんな誤魔化しは事態を悪化させそうだなー。

そう考えて


「そうです。おれが『女神の使い』です」


立ち上がってそう答える。

リーダーは険悪な表情に変わり


「そうか。お前が・・・いいだろう。今日の所は見逃してやる。その代わり明日、この鍛錬場に来い。実力が見てみたい。セナ、無駄に絡んですまなかった。謝罪しよう」


そう言って道を開ける。

他の奴らも俺に対して殺気めいた視線を送ってはいるものの手だしするのはやめたようだ。

セナは息を吸いありえない大きなため息をつき


「行こう」


そう言ってもう一度方向転換をしてリーダーの横を通りすぎる。

俺もセナについていく。

リーダーの横を通りすぎようとしたとき道を塞がれ


「明日、忘れるな。俺はケルヴィン・スナトルフだ。お前は?」


俺より少し身長が高いケルヴィンを見て


「あー、俺はカザミ・モリアツです。明日から同僚です。よろしくお願いします」

そう言ってお辞儀をしてケルヴィンを避けてセナを追いかけた。


小走りにセナに追いつくと


「あああああーーー!!イライラする。あいつらに会いたくなくて教練場は避けてたのに。なんであんなとこにいるかなぁ・・・」


急に叫び声を上げて怒りをあらわにし頭を抱えその場にしゃがみ込む。

そうとう嫌いらしい。


「どういうやつらなんです?」


俺が聞くと嫌そうな目で俺を一度みて、立ち上がりながらため息交じりに


「シュレンを崇め奉るやつらよ。シュレンの家の分家というか家来というか。なにかとシュレンと張り合うアタシを目の敵にしてんのよ。あ、別にシュレンと仲悪いわけじゃないのよ?いいライバルだとあたしは思ってるわ。ただあたしンちとシュレンの家はあんまり仲良くないのよ」


そう言って少しうんざりした顔をした。

なるほど。家がらみか。いろいろあるのだろう。


「それよりあんたも眼つけられたわよ。明日行くの?あんまりお勧めはしないわよ。確実にリンチね。なんか理由をつけて行かないほうがいいわ」


セナはそう言いながら俺の顔を見る。

俺は少し思案して


「いいよ。行ってみます。俺はほらどんな目に合っても痛くはないですからね。いっちょ揉んでもらうのもありだと思ってますよ。隊長も言ってたじゃないっすか、戦闘は慣れだ。ってね」


俺はちょっとかっこつけてそういってみた。

セナは少しあっけにとられた後、馬鹿を見るような目で笑い


「なにそれ、でもまぁそれもいいのかもね。どうせなら一発やり返してやりなさい」


そう言って俺をじっと見る。綺麗な緑の瞳が俺を見据える。黙ってるとよくできた愛らしいお人形のようにも見える。


「あんた、なかなか面白いわね。顔は好みじゃないけど嫌いじゃないわ」


ひどいことを言って愛らしい少女は華やかな笑顔を向けてくれた。

みんな大好きイキリーナのはずだったのになんか寡黙なイケメンが出来上がってしまった。

おかしいぞぅ???

セナとの絡みがなく彼女の魅力を伝えたくて追加シーンとなりました。

魅力がいまいち伝わりませんでしたがw

金髪美少女でモエる人は高評価、ブックマーク、金髪モエと書いた感想をオネガイシマス。

高評価入れてくれた方がいて超嬉しかったです。これからも頑張ります!!

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