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捕捉話 彼女の世界 ルシアナⅡ

ガルゴール伯領は聖都に近い位置で馬車で半日走れば着く場所にある。

式はガルゴールの館で盛大に行われ、リュセウス公爵縁の貴族たちが続々と詰め掛けていた。

法王は翌日の結婚式に参加となるため前夜祭には現れない。ルシアナとしては動きやすいのは今日ということになる。

館に着くとガルゴール伯爵が自ら出迎えてくれた。

伯爵は今年52歳頭部は禿げあがってはいるが均衡の取れた体格。穏やかで人は良さそうだが押しに弱そう優柔不断さの漂う風体。


「ようこそ、聖女ルシアナ。本日は我が息子のためにわざわざありがとうございます。明日の式の女神の祝福、よろしくおねがいします」


彼はニコニコと教団の挨拶紋とお辞儀をする。

ルシアナも胸の前で人差し指と親指を合わせ三角を作りお辞儀をして


「いいえ、本日はお招きいただきありがとうございます。微力ながらお手伝いをさせていただきたいと思います。よろしくお願いします」


ガルゴール伯は恐縮して


「いえいえ、ルシアナ様にはあまり居心地がいいとは言えぬかもしれません。極力他の方々とは接点を持たずともよいよう配慮いたしますのでごゆるりとご滞在ください」


彼は現状をよく理解しルシアナのために尽力してくれるようだ。それに恐縮しながら


「いいえ、できればいろいろな方とお話する機会を設けたいとおもっております。お力添えをお願いします」


ルシアナは強い意志を示すようにガルゴール伯を見据える。

ガルゴール伯は少し困った顔をしてルシアナをなだめる。


「ルシアナ様、本日は我が家最大の行事でございます。できれば来賓の皆様には穏やかに過ごしていただきたいと思っているのです。もちろん、ルシアナ様にも、ですよ」


やさしくそう言われてルシアナは少し反省をした。

そうだ。傍から見て望まれぬ結婚だとしてもお祝いの席だったのだ。


「すいません。考えが至りませんでした。私も楽しい時間を過ごさせていただきます」


そう言うと

ガルゴール伯も穏やかに笑い


「そうしてください。さっ、長旅でお疲れでしょう。ゆっくりやすんでください」


そう言って館の中へと案内してくれた。

夜まで時間があったが下手に動くこともできず時間を持て余した。

夕刻には準備のために付き人たちがせかせかと身の回りの準備をしてくれる。

湯浴みをすませ、髪を整えられて、多少の化粧をされる。こういう着飾ることが今までなかったためルシアナはいつも戸惑う。

綺麗にめかしこんでもらい、控えめなドレス風の聖女衣装。アイボリー寄りの白いドレスに細かい刺繍を施されている。主役は花嫁花婿のためできる限り目立たない衣装としていた。

準備ができていざ前夜祭の会場へ。

この館一番の広間へ通される。


「聖女、ルシアナ様が参られました」


扉が開きドアマンがそう室内に声をかける。

扉の向こうは煌びやかな世界が広がっていた。

多くの人の視線が集まる中、ルシアナは室内へと足を踏み入れ、お辞儀をして歩きだす。

雅楽団の静かな音楽が流れる中たくさんの人のささやきと談笑の声で室内は静かにざわついている。ルシアナはまず館の主、ガルゴール伯の元へ行き、挨拶をすませる。

その後、リュセウス家のご歴々に挨拶をして回る。そんな彼女に近づく男


「これはこれは。お若い聖女殿。ご機嫌麗しく。

本日はよくぞ我々リュセウスの縁のある式にご参加いただきまして、お父上がよく許可してくれましたなぁ」


割腹よい腹を惜しげもなく突き出し態度のデカさよりは小さな声で、それでもだれよりも声の大きい男、バドガーラ・リュセウスはニヤニヤしながら話かけてきた。

バドガーラは法王の甥に当たる人物でなにかと公式の場に出てきては敵を煽るので有名な人物であった。

ルシアナは内心うんざりしながら


「バドガーラ様、お久しぶりでございます。」


と軽く挨拶をした。できれば関わりたくはなかった。


「ふん、祝いの席でなければいかに聖女とはいえミュラルの人間に足を踏み入れてほしくないものだが今回は、アシュレイ様のためと思えば仕方ないのだろうねぇ」


アシュレイとは今回の花嫁であり法王のはとこに当たる女性だった。ルシアナは表情を崩すことなくニコニコと笑いながら


「本日は盛大なお祝いの席にお呼び頂きうれしく思っています。ではあちらの方に御用があるので失礼しますね」


当たり障りなくこの場を去ろうと会釈をしてクルリと回れ右をした矢先、バドガーラは声のトーンを落として


「ふん、すました女だ。聞いたところによると端女に産ませた女だそうではないか。聖女が聞いて呆れる。『スキル』に恵まれたからと調子に乗るなよ」


ルシアナは一瞬固まったがもう一度振り返り、ゆっくりお辞儀をして微笑みその場を離れる。

談笑の席とは言え公然と聖女たるルシアナに侮蔑の言葉を投げてお咎めがない、この場所はやはり敵地なのだと実感する。

気落ちしてもいられない、次から次へと顔を合わす人すべてににこやかに挨拶をして回らねばならない。それが聖女たる自分の仕事であった。


もう何十人と挨拶を交わし少し談笑して離れるを繰り返し、笑っている自分は本当に笑えているのだろうか?などと考えてしまう。

そしてまた次の男爵夫婦の前に行き、お辞儀をして挨拶をする。ふと感じる優しい気配。

あ、この気配を知っている。

そう思った時フッと頬に手が触れた感覚に襲われる。そしてあの夜のようにゆっくり優しく髪を頭を撫でられ「がんばれ」、そう聞こえた気がした。

ルシアナはハッと驚き振り返る。

そこには誰もいない。

でもたしかにルシアナはモリアツの優しい手を感じたのだった。


「どうかされましたか?」


話していた男爵が突然振り返ったルシアナを怪訝な表情で見る。

ルシアナは少しだけ背後の空を見つめた後、夫婦の方に振り返り


「なんでもございません。本日はお会いできてうれしく思います」


そう答えルシアナは屈託なく優しく微笑んだ。

「あら・・・」

夫人はルシアナの笑みにつられて優しく微笑む。

その微笑みは夫婦の心に温かいものが広がるくらいの良い笑みで彼女こそ聖女であると確信させるものだった。

それ以降のルシアナと話した人たちは彼女に多大な好感を持って帰っていった。

最後の部分がやりたかったがためだけにこの話を書きました。

本当に必要のない部分まで作る羽目になり、え?晩餐会の状況ってどんなのよ?

雰囲気がわかんねーとなり

大幅にはしょりにはしょって物語としては微妙極まりない感じになりましたね。

煮詰めが足りませんでした。反省してます。

次は元に戻ります。

ついに戦闘に向けて物語は進んでいきます。

やっとというべきかw

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