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捕捉話 彼女の世界 ルシアナⅠ

本編を読むのにあまり関係ない話なので

読み飛ばし可です。

外伝的というか世界観捕捉の話になるので

小難しい話となります。

ガタッゴトッ、ガタッゴトッ・・・・

馬車は大きな音を立てて揺れる。乗り心地はよくないが車内には質のいいクッションが多数置いてあり、それなりに快適ではある。

ルシアナは窓の外を見た。

聖都を出て少し経つ。聖都はすでに後方で小さくなっている。

今日は法王の縁者とガルゴール伯の息子との婚礼のために彼の領地にて3日間の婚礼の祝賀会、結婚式、披露宴に参加するために馬車を走らせている。

ルシアナは気が重かった。

ガルゴール伯領は法王のリュセウス公直属の土地であり正に敵地であった。

敵というのも間違っているがリュセウス家とルシアナの実家、ミュラル公爵家、そしてバンセント公爵家、リンバリー公爵家の4家は聖都を中心に東西南北を各州として納める大貴族であった。

この4家が持ち回りで法王を受け持つしきたりとなっており実質教団のトップというわけであった。

現在法王を務めるランバトルドはリュセウス公爵家から立った法王だ。現在、リュセウスとミュラルの2家のみが力を持っていてほかの2家はただのお飾りと化していた。

そのためリュセウスとミュラルは政敵という形となり、いろいろなところでぶつかり合っていた。


ルシアナはつい4ヶ月前までなんの取り柄もない少女だった。父の野望のために40歳を超える小女趣味が噂の伯爵の元へ政治結婚をさせられるためだけのただの道具の予定だった。

だが4か月前、形だけで受けたスキル発現の儀ですべてが一変してしまった。


彼女が得た『スキル』は聖女の証『女神託宣』だったのだ。


彼女は聖女となった。


スキルを得て最初の神託は

「あなたの思うがままに事を成しなさい」

という女神の言葉だった。無心の祈りの中、聞こえたその声は透き通るような響きで今でも頭の中に残っている。

ルシアナは聖女として自分の信じる道をいこうと心に誓った。


聖女は四公爵家とは切り離された教団の象徴。

その聖女がミュラル家から出たのは揉め事の種でもあった。彼女の父ガッサ・ミュラルはすぐに彼女の政略結婚を破棄。彼女を家の顔にして政権を狙おうと画策し行動を始めた。

ルシアナはそれに抗った。彼女は思いとは違った父の考えに従うわけにはいかなかった。

父の傀儡の糸をはねのけっ自らの足で立つこととした。

だが彼女には力がなかった。

父ガッサは彼女の思いと関係なく彼女の名を使い政略を練り、動き回った。

それは現法王ランバトルドの逆鱗に触れる形となりミュラルとリュセウスは正面を切って敵対した状態となっていままで以上の激しい政戦を水面下で続けているのが現状だった。

このままではいけない。ルシアナはいつも思い悩んでいた。権力の奪い合いになんの価値もない。その労力を女神アファーナを信じる人たちのために使うべきだと。

そのため彼女は教団内の有力者に協力してもらえるよう毎日いろいろな人と会談をして助力を願っていた。まだ手ごたえはないが現状がよくないことを憂いている人たちは多い。

だがルシアナが聖女として独自に動いていると言っても皆、信じないか疑うかのどちらかであった。

父の暗躍の賜物であったが、どちらにせよいまの現状、両家の政争に巻き込まれたくないと考える人の方が圧倒的に多かった。


そしてルシアナは『女神の使い』と出会う。

数少ない味方しかいない孤立無援の彼女には本物の『使い』の登場に救われた思いだった。

女神アファーナは彼女に事を為せと力を貸してくれたように思えた。


モリアツの登場から三日。父に動きはない。

法王はモリアツの『魔王討伐』の言葉から価値はなしと踏んだようだった。

それを理由にルシアナを中央から排する気でいるのだろう。魔王討伐をせよと言ったのはそういうことだと思っている。

だが、それはルシアナにとってはチャンスではないか?と彼女は思っている。魔王を討つという名目でなら諸侯も力を借してくれるかもしれない。

実際、神話にしかでてこない魔王の討伐の助力を何人かに会ってみた時に頼んでみたが冷笑しつつ力を貸してくれると約束を得れた。

例え軽んじられてるとは言え多少の進歩と言えた。

なにより父の思惑と離れることができたのだ。


「はぁ・・・・」

ルシアナは大きくため息をつく。

車内はありがたいことに誰もいない。

いつもならファイネンがいるのだが彼女にはモリアツの世話をお願いして残ってもらった。

たまには一人になりたかった。

車外には警護の兵や御付きの者たちの馬車に囲まれており、まったく一人とは言いづらかったが今のところここ最近では一番「一人」という状況に近かった。

これから行くところは歓迎されない敵地。

だが新郎のガルゴール伯の息子、ロックバルトは聡明で民の人望は厚いが父親や周りのリュセウス家の腰巾着の貴族たちには疎まれていると聞く。

一度話してみたいと思っていた人物だった。

それにこの式にミュラル家から呼ばれているのは聖女である自分だけというのも好都合であった。

リュセウス家の中にも今を憂いてる者もいるかもしれないという思いはある。この機会を逃す手もなかった。

ただ、新婦は法王の血筋の者なのが難点だった。

40歳バツイチの悪い噂の絶えない女性で完全な政略結婚だった。ようは面倒な女性を押し付けられた挙句リュセウス家のいいなりにされるという悪い状況だ。

よって法王自らもこの式には参加されるという事態のためルシアナの風当たりが死ぬほど強いものになるのも必死だった。

だが負けるわけにはいかなかった。

聖女としてやるべきことをやるのだ。という意気込みは変わらない。

・・・ただ気が重いのは変わらなかった。


「はぁ・・・・・」


もう一度ため息をつく。

そういえばモリアツはマーファに会えただろうか?彼女は少し変わっているからひどいことされてなければいいが。


モリアツ。自分が出会ってきた男性とは少し違う雰囲気を漂わせていた。

少し何を考えているのかわからないが妙に波長が合うというか一緒にいて落ち着く。

聖女として自らを律してからこっち、久々に女の子として笑った気がする。

彼の優しい目にとても惹かれた。元々男の人と接する機会があまりなかったためとても新鮮に感じた。

男性に触れたのも初めてだったのをあの夜、自分の部屋に戻ってから気が付いた。

そしてキス・・・・


それを思い出すと顔が一気に熱くなり真っ赤になっているであろうことが自分でも分かる。

当然、はじめての経験だったし教団の見習い女官で寄宿舎に入ってた時にほかの女の子が話してたのをきいたことがあっただけの行為だった。

あんな・・・・頭の中がふわふわするような行為だったとは当時は夢にも思わなかった。


ルシアナは窓の外の流れる木々を見ながら少し火照った顔でモリアツを思った。

優しい彼は今なにをしているのだろうか?

ホントは掲載するかどうかいまも悩んでいるのですが

ルシアナ視点での話というか彼女の周りの状況というお話です。

本編にはほぼ関係ないため載せるひつようすらないのですがw

長いし補足説明ばかりだしでいいことはないですが読んで頂ければこの先の展開に少し面白みがでるかと。

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