剣聖 シュレン・ミト
「ちょっと・・・まっ」
「待って」と言おうとした時にはもう頭に衝撃があり痛くはないが吹っ飛ばされる。
頭から地面に叩きつけられバ、ウンドして宙を舞い、そのままもう一度地面に叩きつけられて砂煙を上げながらゴロゴロと数メートル転がるが痛くはない。
そんな俺の頭を首からすっ飛ばす気で斬りつけた女性はすました顔で剣を眺めている。
「ふむ。剣の刃こぼれも起きないのですね。やはり衝撃は起こりますが君にヒットした物体自体にもダメージはないのですね」
一瞬男性かと思うほどの凹凸の少ないスラリとした長身。顔も中性的で宝塚の麗人と遜色はない。切れ長の目は鋭く口元は仏頂面。サファイアを思わす綺麗な青の長い髪をきれいなポニーテールしにて紙紐で結んでいる。
服装は男性用の神官服をもう少し動きやすく絞って仕立て直している。
迸るような強さが目に見えるような女性、教団唯一の剣聖、シュレン・ミトは愛剣の心配をしていた。
いやいやいや、痛くないからといって容赦なさすぎじゃないですかね?遠慮なしとは確かに言ったけど初対面でこの容赦のなさはさすがに凹むんですが・・・-^
昨夜、ルシアナと甘い夜を過ごした俺はとても清々しい朝を迎えた。
つい早起きなんかしちゃったりして今までやったことのない朝のランニングとかしてみたり、朝食を優雅に食べてみたり、部屋に置いてあった分厚い本を読めもしないのに開いてみたり。
今すぐ目の前に魔王なんか出てきても
「おのれっ!!魔王!!許さんぞ!!」
とか言って素手でぶん殴っちゃうくらい俺はなんでもできそうな気分で午前中を過ごした。
昼食を食べてたまには筋トレでもしてみるかと意気揚々ににストレッチを始めたところに部屋をノックされた。
「失礼いたします。お時間よろしいでしょうか?ルシアナ様が面会を求めております。ご支度をお願いいたします」
ファイネンさんがいつものように丁寧にお辞儀をして迎えに来た。
「あ、はい。すぐ準備します。廊下で待っていてもらえますか?」
ストレッチのために脱いだ上着を着直し、昨日ファイネンさんに正してもらったように身だしなみを整えて廊下にでる。
今日は出たところにファイネンさんは首を垂れてまっていた。
「おまたっ・・・ぶっ」
ファイネンさんは面を上げると同時に腰を落とし素早く間合いを詰めてきたと思ったら拳が飛んできた。水月、喉、人中とほぼ正確に時差なく撃ち抜かれる。正中線三段突き。容赦なく飛んできた拳で俺の身体が衝撃でのけ反る。
痛くはない。
俺は後方へすっ飛ばされるように倒れる。
ゴンッと地面に頭を打ったが痛くはなかった。
「ちょっ!!・・・ちょっと、な、なにするんですかぁ~~」
俺は上半身を起こし突然のことにびっくりする。
いや、マジびっくりだからね。
彼女はスッと普通に立っていた。
「失礼しました。スキル解明おめでとうございます。」
彼女は会釈をしながら祝福を淡々と告げる。
いや、マジびっくりだから。
明らかに祝ってねーし。殺意が顔に出てるし。
目が怖いし。
俺は立ち上がりながら
「・・・俺、なんかしました?」
そう問うと彼女はスタスタと歩き始めた。
あ、シカトされた。とりあえず小走りで追いかける。昨日に増して早いんですけど。
ほぼジョギングで彼女について行くと
昨日の庭を通り少し離れへと進んでいく。
次第に人の手の入っていないであろう森林へ出る。そこを10分ほど進んだところに開けた場所があった。
俺は息切れしながらスタスタと息も切らさず歩くファイネンについていった。
そこにはポニーテールの長身の人物が待っていた。
「来たようですね。ファイネン殿、お手数をおかけしました」
長身の人物はファイネンにお辞儀する。ファイネンも止まり会釈をする。
俺は肩で息をしながらそんな二人の前で中腰になり息を整えようと必死だった。
「君が『女神の使い』を自称し、ルシアナを困らせた人物か」
少しトーンの低い声だが男性にしては高すぎる。
ここで女性だと俺は初めて気がついた。
「はっ、はっ、はっ・・・・き、きみは・・はっ、はっ・・・だれ・・・はっ・・・だっ・・・・」
俺は息絶え絶えに彼女に問う。
そんな俺の情けない姿を嫌悪剥きだしで見てきた道に目を走らせながら
「たいした距離ではなかったと思うのですが、君は身体をもっと鍛えた方がいいですね。男として情けなさ過ぎますよ」
彼女は冷徹にそう言う。そのキリッとした眼差しには明らかな侮蔑の感情に溢れていた。
「・・・・・はっ、はっ、ご、ご忠告どうも・・・・はっ・・・」
俺は歓迎されてないのをすぐに悟った。
「私はシュレン・ミトと申します。この教団の魔獣討伐部隊で『剣聖』という職を頂いて魔獣の討伐の任に当たらせていただいてます。そしてルシアナの古くからの友人です」
彼女は自己紹介すると形だけお辞儀をした。
礼を重んじる人なんだろうが俺にはその礼すら必要ないと思われたらしい。
彼女が噂の切り捨て御免人か。
「ルシアナとマーファに頼まれて仕方なく君の『スキル』の能力を確認するのを頼まれました。ルシアナには危険ないようにと頼まれてはいるが、マーファには全力で構わないと聞いています。残念ながら私もマーファと同じ意見だ。君はどちらの意見が良いですか?」
彼女はその返答次第ではここで俺を消すつもりなのかもしれない。そう感じさせる殺気をはらんでいた。
俺はやっと落ち着いた呼吸を整えるため大きく息を吸って
「かまいません。全力でお願いします」
力強くそう答えた。
2人目のヒロイン現る。ファイネンに殴られる。は我ながら面白いネタだと思いました。
この世界の人はある程度みな身体を鍛えてます。そうでないと死んじゃいますからね。
さぁアクションシーンも増えてきます。
・・・大変だなぁ。
女の子に正中線三段突きを食らってみたいあなたは高評価、ブックマーク、自分のMっ気を感想で熱く語ってください。ちなみに僕はサービスのSです。