『完璧防御』
ルシアナはうんしょ、っと立ち上がり台車からでる。そしてなにかに気づいたように
「あ、そうだ。この水晶球から半径1メートル以内から離れないでください。この部屋は実は魔法で監視されてます。これは私の友達が用意してくれた、その、魔法の監視を誤魔化すことができるアイテムだそうです。ただし有効範囲から離れると探知されてしまうらしいので気を付けてくださいね」
彼女は力強く説明をしながら手に持った水晶球と一緒にベッドへと上がる。
半径1メートルを気にしているようだ。
男と2人ベッドの上、というのは気にならないらしい。・・・そう考えるとドキドキしてきたっ!!
やっと夜目に慣れてきた。彼女の持ってきた薄紫に光る水晶球の光源を頼りにとりあえずルシアナを見る。
どうやら寝間着のようだ、生地のよさそうな薄手のノースリープのワンピのような服をきている。サイドの三つ編みもほどいており、その名残で少しウェーブががかっている。ほのかに香る彼女の匂いが俺の動悸をさらに加速させた。
彼女は急に間合いを詰めてきて顔を近づけてくる。
お、おい、この状況で・・・・何もするななんて
む、無理かもしれないっ・・・・。彼女の吐息が聞こえてきそう。なによりいい匂いでむせて狂い死にそうです。たすけてーーー。
「一応ファイネンが周りに探りを入れて間者はいないと確認はしてありますが小声で話しますね」
ルシアナは会話を円滑に行うために間合いを詰めたようだ。そう分かっても頭の中がぐるぐると血液が高速循環しているようにぐわんぐわんする。は、鼻血でたりしないだろうな??
鼻をゴシゴシしてみる。よし、出てない。
「昼間は申し訳ありませんでした。どうしても外せない用事があったもので・・・」
彼女は申し訳なさそうに小さくなる。
そこでやっと俺は冷静さを取り戻す。
「いえ、俺の失態で立場が悪くなったりとかしたのですか?」
俺は少し心配になり彼女に問う。
彼女は慌てて顔を上げて
「いいえっ!そんなことはないんです。元々私の立場が微妙というか・・・。その…聖女としては日も浅くまだ周りとうまく噛み合ってないのです」
彼女は少し悲しいのか悔しいのかよくわからない表情を浮かべた。
俺は彼女のそんな表情が悲しくてつらくてなんとかしてあげたい気分になる。
このまま抱きしめてしまいたいっっ!!!
という欲求に駆られるがそんなことをして拒絶されたらどうしようという恐怖で動けなかった。
そんな俺の気を知ってか知らずか彼女は急に顔を上げて
「私のことよりモリアツ様の『スキル』の話をしないとっ!!この水晶球の効果は2時間が限界らしいのです」
なるほど。それで2時間後に回収にくるなのか。
「あーその件ですが昼間に俺のスキル発現の儀をしてくれた神官覚えてますか?俺、あいつと話す機会があって少し聞いてみたんですよ」
俺はキヨシュウと知り合った話をした。
ルシアナはびっくりして
「そうなんですか?すごい偶然ですね。それで『スキル』についてなにか分かったのですが?」
俺は頭を掻きながら
「いやぁ・・・それがさっぱりでして」
大きく出た割に成果がなかったので恥ずかしくなり上目遣いで目を逸らす。
彼女は少し落胆したように
「・・・そうですか。とりあえず3つあるスキルを早めに解明してしまわないと。今後どうするかにも関わってきますし・・・」
そう少し落ち込みムードとなったが
「私もこの水晶球をくれた友人に相談してみたんです。優秀な魔法使いで教団の魔法部門にいる子なんですが」
彼女は明るく友人の話をし始めた。
「その子が言うには『完璧防御』『必中必殺』は読んで字の如しだろう。『時空自在』については少し確認してみたい。って言ってました」
その友人をとても信頼してるのであろうことが伝わってきた。
「おれとキヨシュウ・・・発現の儀の神官も同じ意見でまとまりました。だから『必中必殺』に関しては実験するにしても細心の注意が必要だということ。『時空自在』については魔法部門に相談してみた方がいいこと。とりあえずすぐ確認できるのは『完璧防御』だろう。ということでした」
俺の話をコクコクと可愛く頷きながら聞いてたルシアナは
「そういうことでしたら。私が友人に勧められた『完璧防除』のスキルの確認のやり方がこれです!!」
彼女は誇らしげに手を力強く前に突き出す。あぶねっ。殴られるのかと思ったら手に何か持っている。
「・・・・針・・・・ですか?」
「そうです。これでチクッと刺してみるのが良いかと。名称からして防御に関連するスキルなのは間違いないでしょうから。マーファはシュレンの剣で切り捨ててもらったら早い。って言ってたんですが・・・それはさすがに・・・」
おいおい、お友達は思考が物騒だぞ。
針か。たしかにこれなら名前通りでなかった場合もたいした怪我はせずに済みそうだ。
「わかりました。じゃあやっちゃってください」
俺はルシアナの前に手を出す。
彼女はキョトンとして俺の腕を見てそして俺の顔を見る、
「ええぇ~~~???わ、私がやるんですか?」
うん、大声を出さないところが素敵だ。
「え?そのつもりで持ってきたんじゃないんですか?」
俺はニヤニヤしながらルシアナを見る。女の子に針を刺してとせがむ男。傍から見たら変態みたいだ。
「いえ・・・・自分でやってもらおうと・・・痛そうなのはちょっと・・・」
彼女はたじろぎながら少し後ずさる。
「そんな・・・俺に自分で自分を痛めつけろと・・・」
俺は少し悲しそうな演技をする。
「そ、それは・・・・・」
少し困った顔をする彼女を見て俺は満足した。
「嘘です、針、貸してください。自分で確かめてみます」
俺は満足の笑みで彼女に手を出す。
その顔をみてからかわれたのだと気づいた彼女は
「む~~~、冗談だったんですね」
とむくれながら針をくれる。うん、なんか普通の女の子らしい反応が新鮮だ。
俺は針を自分の指に向けて
「では試してみます」
針に力を入れてみる。
ザクッ
あ、痛っ
「・・・・針、刺さっちゃいました」
針をすぐ引き抜くと血が小さいドームを俺の指先に作る。
「!!大丈夫ですかっ!!!」
彼女は素早く俺の手を取り指を抑える。
そして集中するかのごとく目を瞑る。
彼女が指を離すと指先の血のドームは潰れてこすれていたが傷口はなくなっていた。
「防御、できてませんね」
俺は血で汚れた彼女の手を取りベッドの横に置いてあったタオルで彼女の手を拭く。
「あ、すいません。痛くなかったですか?」
彼女は心配そうに俺を見る。
そんな彼女に笑いかけながら
「子供ではないので痛くないですよ。この程度ならたいしたことではないです」
そういうと彼女は少し赤面をして
「す、すいません。大げさすぎましたね・・・。血があまり好きではないもので・・・」
彼女は俯きながらそう答えた。
うーん。可愛いなーと思いつつも当てが外れたのが気がかりだった。『完璧防御』というくらいだから傷一つつかないのかと思ったんだが・・・・
条件があるのか?何らかの発動条件があるような話をキヨもしていた。
それを満たしていない?たとえばなんだろう?
いろいろ思考してみてひとつ試してみたいことができる。
「ルシアナ、心ぐるしいお願いをしていいですか?」
俺は彼女に向き合い真顔でお願いをする。
その顔を見て彼女も真面目な顔をして答える。
「はい。私にできることならなんでも」
「やりづらいでしょうがやなり俺の手に針をぶっ刺してください」
俺はドM発言をする。
「・・・・やはり・・・・そうなるんですね・・・」
彼女も同じことを考えたようだ。
そう、試してみるべきは自傷ではなく他傷なのだ。「防御」である以上外敵から守るためだろうという結論だ。
「わかりました・・・・。頑張ってみます・・・」
彼女は俺から針を受け取り俺の手を取る。
触れる手があ、あったかい~。そんなことを考えると急に彼女の匂いを強く感じた。
間近にいるルシアナの顔いつ見ても愛らしい。薄着なので肌の露出も多い。つい胸元に目が行く。昨日膝枕をしてもらった時に見上げた神の峰を今度は上から眺める。実に・・・ご立派で・・・触ってみたい・・・なんか・・・すげームラムラします!!
「・・・・ツ様。モリアツ様??痛くないですか?」
彼女の心配そうな顔が近づく。え?そんな、痛くないです。むしろこう頭の中がクラクラして痛くなるのは下半身・・・。もう思考がおかしくなっていた俺
「針、刺そうとしてますけど刺さらないです。痛くないですか??」
彼女はもう一度俺に声をかけながら手に力を込めている。
あ、忘れてた
「え?そういえば・・・ぜんぜん痛くないです」
俺は針と手を見る。彼女が結構力をいれてるが見て取れる。だが針は俺の皮膚に触れているだけでそれ以上進まないようだ。
なるほど。これがスキル『完璧防御』か。
女の子が無意識に積極的だとしてもなにもできないのが「童貞」!!
そしてやっと無双に一歩近づきました。
というか進行遅すぎ。すいません。
どうしても過程を省けないのです。
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