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はるみちゃんと僕

作者: まこと

 発明家で天才(天災?)のじいちゃんが、一人暮らし大学生の僕のために人形を発明してくれた。



 その名も「はるみちゃん」



 見た目だけなら、そんじょそこらの女子大生に負けないボディをしている。感触も質感も人間そっくりで、ダイナマイトな瓜が2つ並んでいらっしゃる女性だ。


 しかし、はるみちゃんには少し怖いところもある。

 いつも外を見て、僕が近づくと決まって同じ言葉を問いかけるのだ。


「私のこと愛してますか?」


「私のどこが嫌いですか?」


「もっと私を見てください」


 はるみちゃんと2人でいると若干の恐怖が僕を襲う。はるみちゃんは立てないから、いつも椅子に座ってボーッと空を見つめてる。僕はそんなはるみちゃんをボーッと見つめてる。





 僕の1日ははるみちゃんの髪の毛を櫛でとかすところからはじまる。はるみちゃんは人形のくせに朝起きると決まって寝癖がついている。じいちゃんいわく、そこが人間らしさを追求した結果だそうで。


「おはようございます。ヨウジさん。私のこと愛していますか?」

「んー、しつこい女性は嫌いだなぁ」

「私のどこが嫌いですか?」

「はるみちゃん、僕と会話してくれないじゃん」

「エラーを確認しました。少々お待ちください」


 すっとぼけた。


「じゃあ、はるみちゃん。いってくるねー」

「もっと私を見てください」

「じゃあねー」


 今日も元気に大学へ行く。


 毎日はるみちゃんの世話を焼く生活がはじまって半年。はるみちゃんのルックスの良さだけは周りの女子大生に負けない。 どんなに化粧していても、色白美人かつボインなはるみちゃんには誰も届かない。


 ゼミやら何やらで今日も一日が終わる。


 バイトがない日は家でダラダラしながらはるみちゃんの世話をする。はるみちゃんのことはどんな親友にも打ち明けられない極秘事項だから家にも人を呼ばない。


「はるみちゃんただいまー」

「ヨウジさんですか? カツジさんですか?」

「ヨウジだよー」

「ヨウジさん、私のこと愛してますか?」

「はるみちゃんしつこいよ」

「エラーを修正しています。しばらくお待ちください」


 暑くなってきたからかはるみちゃんはちょくちょくエラーを起こし再起動している。


「ヨウジさん、私のこと見てください」

「はるみちゃんどうしたの?」


 突然、僕が近づいたわけでもないのにはるみちゃんはしゃべり出した。


「ヨウジさんはいつもはぐらかすんだから」

「え、どうしたのはるみちゃん。故障? 」

「モテない男はすぐに話をそらすんだから」

「はるみちゃん?」

「はるみは、ヨウジさんのことが好きなんですよ?」


 はるみちゃんはすくっと立った。立てるの!?


「はるみはヨウジさんとイケナイことしたいなぁ」


 !? 僕の思考回路はエロ本までだから!


「落ち着こうはるみちゃん? まだ夕方だよ?」

「はるみにとってはヨウジさんといるときはいつも夜なんです」

「わけわかんないよ!」


 何ではるみちゃんは浴衣を着ているんだ!! 毎日浴衣だけど。


「ヨウジさん、はるみのこと愛してますか?」

「ああ、愛してるよ!」

「嘘つきは泥棒のはじまりですよ」

「――――」

「真っ赤になっちゃってかぁいい」


 はるみちゃんが浴衣を脱ごうとし、そのダイナマイトを表そうとしたその時――


「エラーを修正しています。しばらくお待ちください」


 はるみちゃんは突然力をなくしたかのように崩れ落ち、いつものうつろな瞳に戻った。エラー修正しています、と呪文のようにとなえるはるみちゃんを見ながら


「明日、じいちゃんっち行かなければ」






 翌日


「じいちゃん!!」


 じいちゃんっちの工房に勢いよく入り込む。


「おお、ヨウジどうした?」

「年始にもらったはるみちゃんなんだけど、昨日俺に迫ってきたんだよ!」

「ほう。筆おろしはおわったか?」

「そんなのまだに決――じゃなくて、はるみちゃんの話! 突然やけに積極的になって立つようにもなったんだよ。今まで少し喋るくらいしかしなかったのに」

「はて?」


 じいちゃんは首をかしげる。


「はるみはそんな設定にしていないぞ?」

「え?」

「はるみはメイドロボットとしてヨウジにあげたつもりだったんじゃが」

「はるみちゃん、メイドとしては全く機能してないよ」

「おかしいな。故障かのう? はるみをもってきているか?」

「もちろん」

 はるみちゃんをじいちゃんに渡す。その瞬間、じいちゃんの目がかっと開く。

「こ、これは…!!!」

「ど、どうしたの?」

「わしが若い時に趣味で作ったはるみちゃん1号じゃわい」

 趣味…そういえばじいちゃんの名前はカツジだった。

「歳をとったからボケて違うやつを渡したんだな」

 そういってじいちゃんははるみちゃん1号を持って蔵へ向かった。それから10分後に同じ見た目のロボットをまた抱えてきた。

「いやー、すまなかったのぅ。これが渡そうと思っていたはるみちゃん2号じゃ」

 そのはるみちゃんは、ちゃんとメイド服(膝下ロング)を着てメガネをかけていて引っ詰め髪だ。

「じいちゃんのメイドの感覚って……」

「ああ、この間テレビで見たアルプスからフランクフルトに来た幼女に厳しくしてるメイドを参考にしたんじゃよ」

「それメイドじゃないと思う」

 はるみちゃん2号は1号と服装と髪型以外何も変わらない。もちろんダイナマイトなものも、2つついていらっしゃる。顔も色白で可愛らしい。

「それを持っていって、また壊れたらおいで」

「うん」

 そうしてはるみちゃん2号との生活が始まった。



「ご主人さま、掃除が終わりました」

「ご主人さま、ご飯が出来上がりました」

「ご主人さま、お風呂を沸かしました」

 はるみちゃん2号は実に優秀だった。僕が何も言わなくても何でもしてくれた。僕より先に気づいて、僕より上手に何事もこなす。でも、

「はるみちゃん、お掃除ありがとう!」

「仕事なので」

「はるみちゃん、この煮付け美味しいよ」

「仕事なので」

「はるみちゃん、お風呂適温だよ」

「仕事なので」

 今度は、僕が何を言っても「仕事なので」しか返事してくれなくなった。他に喋る時も事務的なことしか話さない。まあ、これが普通のメイドロボットなのかな。

 ………なんだか、家の温度が下がったみたいに寒い。

「ご主人さま。暖房を入れました」





 はるみちゃん2号との同居から1ヶ月。僕はある決断をした。

 ある日、じいちゃんっちにもう一度訪れた。

「じいちゃん、頼みがあるんだ」






 僕の家には3人が暮らしている。1人はもちろん俺。もう1人は膝下ロングのメイドさん。もう1人は浴衣姿のメイドさんだ。

「ご主人さま、夕飯ができました」

「おお2号は仕事早いなぁ。ありが――――」

「えーーー!!!あたしは今日マック食べたかったのにぃ」

「仕事ですので」

「もぉぉ!!2号はだまってなさい!」

「ちょっと、はるみちゃんたち喧嘩しないで」

 同じ顔のロボットたちが膨れっ面をしている場面はなかなかの光景だ。

 はるみちゃん1号が、僕に向かってくる。思わず尻もちを着いたところに、はるみちゃん1号が馬乗りになって襟元を掴んでくる。


「ヨウジさん、はるみのこと愛してますか?」

「えっ……と……さぁ、どうだろね」


 僕が蔵から1号を出した気持ちを、ロボットは考えられるのだろうか。そんな事を考えながら、はるみちゃん1号と2号で食卓を囲む。じいちゃんが修理してくれたらしく、はるみちゃん1号はエラーを起こさずに何とか活動している。ただ、なんだか積極的さに磨きがかかっているようだが。はるみちゃん2号は相変わらず冷静に淡々と仕事をこなす。1号が積極的すぎるから、2号の仕事っぷりがありがたい。

 こうなるとは思っていなかった大学生活。2人のロボットと1人の人間でこれからどんな生活が始まるのだろうか。










「2号だって、もっと愛されたい」






 どうやら新しい騒ぎが始まりそうだ。

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