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大掃除①

 (つむぎ)さんに家でゆっくりしていていいと言われたが、流石に何もしないわけにもいかない。 


 掃除をする前に、二階の洗面所で顔を洗い、歯を磨いた。

 歯ブラシは、昨日紬さんに用意してもらったものだ。


 ~昨日の夜~


 夜ご飯を食べ終えて紬さんの部屋のソファに座っていると、歯ブラシを持った紬さんが現れた。


「あ、それは私のですか?すみません。持ってきてもらってしまって・・・・・・」

 私は申し訳なく思いながらソファから立ち上がり、歯ブラシを受け取ろうと右手を出した。


 しかし、紬さんは歯ブラシを持ったまま、ベッドを指さした。


 ―ベッドに座れってことか。


 大人しくベッドに座った。

 すると、紬さんは私に歯ブラシをやっと渡してくれた。


 紬さんは終始ニコニコと私を見つめている。


 シャカシャカシャカ・・・・・・。


 しばらくの間歯磨きの音だけが響く。

「そろそろかしら」


 ―ん?そろそろ?


 紬さんはベッドに正座した。

 そして私の肩をつかんで紬さんの膝の上に私の頭を乗せた。


 私は歯ブラシを噛んだまま、口を閉じる。

 突然のことに目をぱちくりとさせるしかなかった。


(ゆう)ちゃ~ん、ほら、お口開けて~」

 そういいながら、紬さんは歯ブラシを手にした。

「へぇ、ひ、ひゃ。ひふんへ、へひはふ・・・・・・」


 ―じ、自分でできますよ!!


 私の心の声は届かない。

 紬さんは微笑んだまま私の歯を隅々まで磨いてくれた。


「ほんっと~うに、いつぶりかな?」

 歯を磨き終えて、私は口から垂らさないようにご飯をたくさん口に貯めたハムスターのように、頬を膨らませている。

 紬さんの声を聞いて、私も正座をした。


「悠ちゃん、と~ってもかわいいわぁ」

 そういって、私の頭をわしゃわしゃとまた撫でた。


 紬さんは懐かしむ顔をして、私を見ている。

 多分、私の知らない悠を思っているのだろう。


 何とも言えない雰囲気の中、私は頬を膨らませているのが限界になってきた。

 手を口元に添える。


 それを見た紬さんが慌てて私に洗面所で口をすすぐのを許してくれた。

 私はすぐさまベッドから飛び降りてすすぎに行った。


 ―空気の読めない子でごめんなさい!


 ~~~~~~


 ということがあった。


 洗顔に歯磨きを終え、すっきりした私は鏡を見ながら、(こう)の言っていた言葉を思い出した。


 ―『なんていうかさ、笑ってるの?何回か見て思ったんけど、ひきつっているようにしか見えないし・・・・・・、目もあんまり笑ってないよね?』 


 そうなんだろうか?


 (こう)に頬をつままれたためか、少し柔らかいような気がする。

 試しにニッと笑ってみた。


 ダメだ。

 確かにひきつってる。

 目が笑っていない。


 もう笑わないことを心に決めて二階のリビングから階段を使い、一階に降りていく。

 階段は両サイドに壁があって、リビングの様子を見ることはできなくなっている。


 一階は二階よりもアンティーク家具が多い。


 まずは、この体のことを知るところからかな。

 でもそれには私の、この体の人の部屋を何とかしなくちゃいけないし・・・・・・。

 虫、出てきたらどうしよ・・・・・・。


 部屋のごみをじゃんじゃん捨てていかなければいけないため、ごみ袋を探す。

 ごみ箱はキッチンの横にあり、キッチンの横には棚が置いてある。

 人様の家なので少し抵抗があるが物色させてもらう。

「あ、あった!」

 ゴソゴソと探し、一番上の左から二番目の引き出しに市指定のごみ袋があった。


 燃えるごみ用と燃えないごみ用の袋を手にして、私は部屋の前に来た。

 これから来るであろう悪臭に備えて、息を吸って、吐いて、もう一度吸った。

 覚悟を決め、部屋の扉を開けると窓は昨日と同じで開いたままだった。


 あ~、閉め忘れてた!!


 幸い、クーラーはついていなかったからいいものの、人様の家でやってはいけないことだ。

 昨日、最初に目を覚ました時の香りはもうしなくなっていた。


 一度、深く息をしてからごみの片づけへと移った。


 まずは床に落ちているごみを拾い、分別していく。

 ペットボトルはラベルをはがして、容器は後で洗うために端にまとめて置いておく。


 30分ほど経っただろうか。

 段々と集中力が切れ始めて、漫画が気になりだしてきた。


 タイトルの内容が・・・・・・なんか、凄いな。


 『一生俺たちは親友だ。~親友なんかじゃ我慢ができない~』

 『君のすべては僕のもの①』

 『君のすべては僕のもの②』

 『帰宅部の君を帰らせたくないっっ!!』


 少しだけのつもりがだいぶ読んでしまった。

 読み終わった後。


 はぁ・・・・・・。


 私はこういった方面に興味はなかったのだが、こういう世界もあるのかと感心した。

 そして遠慮なくこの漫画を集めて括ってごみ袋の中に入れた。


 思い出は心の中に。

 さようなら。

 そして、中学生にはまだ早いと思うよ。お姉さん。


 そうして部屋の掃除を再開する前に、殺虫スプレー、ビニール手袋、マスク、雑巾・・・・・・はなかったので、床に脱ぎ散らかされた服をはさみで切って雑巾とする。

 準備は完了。


 私はお掃除を再開した。

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