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ややこしい人間関係

次は6月12日投稿予定です!

 千冬(ちふゆ)さんの歩くスピードは一定で変わらない。

 対する私は息を切らしながら追い続け、今では結構な距離が空いている。


 そうこうするうちに見覚えのある建物が見え始めた。

 二階建てで白と黒のモダンな家が見えてくる。


 表札に『五色(ごしき)』と表記されている。


 千冬さんは私のことなど気にもかけずに先に家に入ってしまった。

 私もすぐに後を追って玄関の扉を開けると、リビングに続く扉は開けられたままで、明るい(つむぎ)さんの声が聞こえてきた。

「おかえりなさ〜い!」


「・・・・・・」

 千冬さんの靴は乱暴に脱が散らかされている。


「た、ただいまです・・・・・・」

 靴を脱いで千冬さんと私の靴を揃えて並べる。

 それから買い物袋をリビングへと運ぶ。


「あら〜、仲良くできなかった〜?」

 困ったような顔で首を傾げる紬さん。


 ちょっとは仲良くできていたんですけど・・・・・・。


「母さん、なんであたしについて行くように言わなかったのさ!?」

 ヒョコッとソファから顔を覗かせたのは楓夏(ふうか)さんだ。


「楓夏ちゃんが忙しいって言ってたんじゃないの」


(ゆう)と千冬の2人で行くんなら話は別だよ!あー、やっぱあたし追いかけとけばよかった・・・・・・」

 紬さんに向かって大きな声を出し、独り言のように呟く。


 うーんという風に眉根を寄せる紬さんに対して、楓夏さんは唸ってドタドタと私の方に向かってきて両肩に手を置いた。

「千冬のことは任せろ!」


「あ、はい・・・・・・」


 後ろを振り向いて次は紬さんに声をかける。

「母さん、今日は上で千冬と食べるから!」


「わかったわ〜。できたら持っていってあげる」

 微笑みながら紬さんは二階に行く楓夏さんを見送った。


 すっかり日も沈んだころ夜ご飯の準備が終わり、私、紬さん、(あお)(こう)で食卓を囲む。


 今日の夜ご飯はミートスパゲッティ。

 調理中の時からいい匂いで涎が溢れ出しそうなくらいだったのに目の前に置かれると、居ても立っても居られない。


 千冬さんと楓夏さんがいないだけでこんなに静かになるのか。

 カチャカチャと食器とフォークが擦れる音が響く。


 美味しいはずなのになぜだかよく味わえない。


 食べ終わり、食器を下げようと立ち上がりながら、今日は紅と朝話したっきりなのを思い出す。

 紅の方へと目をやる。


「・・・・・・」

 目が合わない。


 次は声をかけてみる。

「こ、紅・・・・・・」


 私の方をチラリと見たあとまた逸らされた。


 え、私なんかした!?


「先にお風呂入る。今日は悠とお母さんが皿洗いね」

 そう言って二階へと行ってしまった。


「・・・・・・」

 私は呆然として立ち尽くすしかない。


 そんな私の隣に碧がきて私に耳打ちする。

「今日の朝の熱烈なハグが恥ずかしかったんじゃないかな?」


「そ、そうなのかな?」

 碧に目を向ける。


「違うっっ!!」

 二階から部屋着を持って降りてきた紅はそう吠えてからお風呂場へと消えていった。


 私と碧はお互いに目を合わせる。

「怖かったね?」


 私はコクコクと首を縦に振った。


「ふふふ。私もお風呂にはーいろっと!それじゃ、お皿洗い頑張ってね!」

 二階へと向かう碧の背中を見送ってから、キッチンに移動して皿洗いを紬さんと一緒にした。


 人間関係がややこしくてゆっくりと自分のことについて考える暇もない。

 一人でいる時はこんなこと考えなくてもよかったのに。

「ふぅー」


 思わずため息をついてしまった私に千冬さんは優しい言葉をかける。

「仲良くなれると思って一緒に行かせたの。ごめんね?」


「い、いえ!途中は仲良くなれたんですが、最後に私のせいで怒っちゃったみたいで・・・・・・。逆になんだかすみません・・・・・・」

 私は水道から一定を保って流れ出る水を見つめる。

 皿についた泡はすぐに流れ落ちていった。


「こんな風に簡単だといいんですけど・・・・・・。綺麗さっぱりに」


「謝らなくていいし、頑張らなくていいのよ。焦らないで、もっとゆっくりでいいの」

 私の言葉に千冬さんは聞いたことのある言葉を返した。


「その言葉・・・・・・」


 千冬さんの方を見ると、千冬さんも私を見て微笑んでいた。

「いい言葉でしょ?私この言葉好きなの。ふふふ」


「はい。すごくいい言葉です」

 私も千冬さんに微笑んで見せた。

 うまく笑えているかはわからないけど。


 皿洗いを終えた私は怒涛の一日を過ごしたせいか、ソファに深く腰をかけてすぐに意識を手放した。


「・・・・・・ん!!」

 私のことを呼ぶ声がする気がする。


 もー少し寝かせてください。


「だーめ!!悠お姉ちゃんは私と寝る約束したでしょ?」


 今のは口に出してないはずなのに・・・・・・。


「ふふ、出てるよ〜」


 意識が次第にはっきりしだして、覚醒に向かう。


「はへっ」

 目を開けると可愛らしい碧は私に跨って至近距離で私の顔を覗き込んでいた。


 私は慌てて飛び跳ねて体を起こした。


 ゴチンッッ


「「いっっったあ!!」」

 体を起こす拍子におでこをぶつけ合ってしまい、二人して悶絶する。


「ご、ごめんなさいっっ!!大丈夫?」


「だ、いじょーぶっ!えへへ」

 碧が涙目になりながらへにゃっと笑って見せる。


「それより悠お姉ちゃん!お風呂に入って早く一緒に寝よう!ほら、お姉ちゃんの服と下着!わたし二階で待ってるからね!」


 起き抜けで回らない頭だが、押し付けられた服を見てすぐにお風呂に入らなければいけないのはわかった。

「おおお、お風呂、えと、二階に行く。はい」


 私は復唱して頷いた。

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