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カミングアウト

楽しんでいってください(´∀`=)

「その、四年生の時にさ、劇があったじゃん。

 お姫様役に私が(ゆう)を推薦しちゃって・・・・・・」


 ずずいっと金瀬(かなせ)は顔を私に寄せてくる。

 私は咄嗟に両手を胸の前に掲げた。


「悠はみんなの前に出るの苦手だったのに・・・・・・!でも、私王子役だったから・・・・・・」


 近い近い。

 顔が近い!


 私の両手では金瀬を遠ざけることはできず、勢いに負けた私は後ろに体を反らせる。


「ねえっ」

 金瀬は私の両肩をガシッと掴んだ。

 体を反らせた意味がない。


 呼びかけに何とか応答する。

「は、はぃ?」


「ずっと・・・・・・」

 金瀬の顔は赤くなっている。

 耳まで真っ赤だ。


 ごくりと唾を飲み込む音が聞こえた。

「好きだった!」


 唐突な言葉に思考が止まる。


 すき?

 隙?

 いや、違うか。

 好き?


「えっと、そ「はああああ!?」


 突如響いてきたのは千冬(ちふゆ)さんの声だった。

 私と金瀬は2人してビクリと体を震わせて声のした方を向く。


 千冬さんは買い物袋を両手にして肩で息をしている。

 走ってきたのか額には髪が張り付いている。


 金瀬はベンチから降りて肩を怒らせながら千冬さんに噛み付く。

「あーー!もうっ!!あなたは!悠の何なんですかっ!!」


 間髪入れずに千冬さんも答える。

「恋人だよ!!さっきもデート中だって言っただろ!!」


「はあああっっ!?」

 今度は金瀬が叫ぶ番だった。


「ちょちょちょ、ちょっと待って2人とも」

 急いで止めに入る。


「千冬さんは、私の姉です!」

 手を添えて千早さんを指し示すと、千冬さんは何か言いたげに私を睨んでいるが、一旦無視する。


「チッ。」


 千冬さんの舌打ちが聞こえた気がする・・・・・・。


 この言葉に金瀬は安心したような顔をしている。


「金瀬・・・・・・、さんは」


 マジなトーンで私の言葉は遮られた。

「さんは止めて。距離を感じる。」


 私は言い直して再度質問をする。

「か、金瀬の言う好きは、そう言う好き、なんだよね?」

 自分で言っていて恥ずかしくなり顔が少し火照る。


 そんな私とは対照的に真面目な顔でコクコクと何度も頷いて私に金勢は近づいてくる。

「悠、好き。ずっと会いたかった」


 先ほどの緊張感など微塵も見せずにまっすぐな言葉をぶつけてきた。

「うぁ、えっと・・・・・・」


 頭の上は茶色で金に染めた髪は少し傷んでいるのかパサついている。

 でも夕陽に照らされて金の髪も、茶色の瞳も輝いている。


 綺麗だし、可愛いし、かっこいい。


 お互いにしばらく見つめあっていたら、間に千冬さんが割り込んできた。


「はい。おわりおわり。中学生に彼女も彼氏もまだ早い。悠、これ持って。はい、帰るよ」

 千冬さんは私に買い物袋を一つ持たせた。


「まっ、待って。悠、返事は・・・・・・、学校でいいかな?」

 茶色の瞳が私を写しているのが見える。


「えっ、と」

 何と言おうか決めかねていると私の返答すら聞かずに金瀬は走って行ってしまった。


 少し走った先で立ち止まりこちらを振り返る。

「ずっと待ってるからっ!!」

 夕陽に照らされていたせいか、金瀬の顔は赤く染まっていた。


 ほんの少し見惚れてしまった。


 帰り道。

 千冬さんは全く、一言たりとも私と喋ってくれない。

「あ、あの・・・・・・」


「・・・・・・」


 喋ってくれないどころか、いつもの狐目も今は開かれている。


 私は横目でチラチラと機嫌を伺うしかない。

 私は口をつぐんだ。


 私と千冬さんの足音だけが響く。


「断ればよかったじゃん」

 千冬さんが話し出した。


 私はそれに内心ホッとする。

「えっと、」


 私が何か言おうとする前に千冬さんは早口で捲し立てた。

「あいつと友達なの?よく知りもしないのに考えてどうするの?というか学校で返事?家族にすらまともに話せないのに学校なんか行けるの?」


 どうやら、千冬さんは金瀬が引きこもりの原因を作ったというところは聞いていないみたいだ。


 よかった・・・・・・。

 金瀬の告白は、私に対してじゃなくて、悠に対してだからよく考えなきゃいけないことだ。

 それにしても、どうしてこんなに感情的になっているのだろう。


「お、落ち着いてください・・・・・・」


 私の言葉は千冬さんの癇に障ったようだ。

「落ち着けって?ふざけるなよ。何にも覚えてない。呼び方も変。何考えてんのかもわからないっ!」


「ち、ちふゆさっ」


「その呼び方だよっ!!」

 私の目を見て睨みつけてくる。

 私の体は萎縮する。

 私は思わず目を瞑った。


「〜〜〜〜っ。」

 千冬さんは何度か呼吸をゆっくりしてから、また歩き出した。


 私は千冬さんの後をゆっくりついていく。

 千冬さんは結局、家に着くまでずっと喋ってくれなかった。

次は6月11日更新予定です!

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