やけど〈千冬side.〉
最近は忙しくてドタバタしてました!
またやっていただけると嬉しいです!
私は、一番目に生まれた子で千冬なんて名前がついているが、生まれたのは夏だった。
しかもその日は台風があったらしい。
私が生まれた次の日に生まれたのは楓夏だ。
カラッと晴れて夏の日差しが強かったらしい。
名前通りでとても羨ましい。
正直、私は自分の名前が好きではない。
小学校のころ、いろいろ言われた言葉のせいだ。
初対面なのに生意気な男子に言われた。
『夏に生まれたのに千冬なんて変』
私はそれを言ってきたやつの顔面にグーパンチをいれた。
学年が上がって、クラスのトップ、仲良し三人組に囲まれて言われた。
『なんか、おばあちゃんみたいだね』
私はそれを言ってきたやつに金魚の水槽の水をぶっかけた。
金魚は無事だからヨシ。
これに関してはなかなかぶっ飛んでるやつだと私自身も思う。
そして、言わなくても察せられるだろうが他にもいろいろやらかした。
その度に頭を下げるのは母さんだった。
問題を起こすたびに母さんは叱るけど、最後は抱きしめてくれた。
それがとても好きだった。
私は一人っ子が羨ましかった。
楓夏だけじゃなくて、悠が生まれた。
かと思えば次は紅に碧唯が生まれた。
楓夏は普通に性格がかわいくない。
容姿は悪くはないが、姉妹ゆえに譲れないものも多く、言い争いは毎日。
紅と碧唯は可愛いとは、思う。
けど、紅は楓夏に似て生意気なところがあるし、碧唯は私に若干似ている気がする。
悠は特に好きではなかった。
母方の祖母に言われたひとこと。
『あらぁ、千冬ちゃんと悠ちゃんは目がと~っても似ているのねぇ。髪も真っ黒で可愛いわぁ』
私はその日、家に帰ってから絵の具で髪を茶色にした。
母さんは悲鳴を上げた。
・・・・・・。
気を引くにしてももっと別の方法があったと思うのだが、小さいころの私はこんなことばかりやっていた。
母さんに頭を下げさせて・・・・・・。
あぁ、でも馬鹿にしてきたやつらには悪いなんて微塵も思っていないけど。
親が学校に行って先生と面談するやつで、私は先生からの評価も素敵だった。
要約すると以下のとおりである。
『落ち着いて見えるようで、実際は一番の問題児』
大人の前ではおとなしいが、見ていない間に何かをしでかすのが私だった。
そんな問題児も変わる日はやってくる。
私が9歳の冬、一日たりとも忘れもしない出来事は起こった。
雪が降って、体の芯から冷えるような寒さが続くようになった。
そんな気候に体の小さな悠は風邪をひいた。
私も悠に便乗して風邪ひいたかも、なんて言って仮病を使った。
楓夏に紅と碧唯は学校に行ったが、悠と私は家にいていいことになった。
お昼、母さんは買い物に行って悠と私だけが残された。
母さんは私の仮病を見抜いていたんだと思う。
悠を見ておくようにと言いつけられた。
リビングで寂しくないように布団が敷かれている。
そこに6歳の小さな悠が眠っていた。
私はそれを横目にソファに寝そべっていた。
風邪ひいたくらいであんなに心配されるなんて。
『あ~、腹立つなっ』
悠の方を向いて右目の下を引っ張って、舌を出してベ~っとあっかんべーをした。
・
・
・
・
カチャカチャ・・・・・・
チッチッチッチッ・・・・・・
物音に目を覚ました。
気が付いたら眠ってしまっていたみたいだ。
音の聞こえる方へ目をやる。
小さな子の後ろ姿が見えた。
悠がキッチンで台の上に乗っていた。
鍋でお湯を沸かしている。
熱そうな湯気がモワモワと広がっている。
そしてそれを小さな体で、よりにもよって手前側に鍋の取っ手を取ろうとしていた。
あ~、あれは絶対にこぼれるな。
なんて頭で冷静に考えながらそれを見た瞬間に私の体は走り出していた。
お湯が鍋からこぼれだす。
スローモーションみたいにその時は時間が長く感じた。
悠を突き飛ばした私はそのままお湯をかぶってしまった。
ガチャンッ!
全てのお湯を流し切った鍋は床に鈍い音を立てながら転がっていった。
キャンプの時の火の粉、日焼けなんかと比べ物にならない、痛みや熱さに私は泣き出した。
泣きながら悠も泣いている声が聞こえてくる。
小さな子2人でパニック状態では何もできない。
そのまま痛みがずっと続くと思った。
ぐちゃぐちゃの思考の中で、涙で視界もはっきりしないまま、いきなり私は左の腕を引っ張られた。
立たされて歩かされていったのはキッチンで、水道の水で右腕を冷やされる。
私の涙は少しおさまった。
『このままにしておいてね』
悠がはっきりとそう言った。
いつもはもっと子供っぽい声色なのに、全然違う気がした。
悠なのに悠じゃないみたい。
その後、すぐに母さんが帰ってきた。
悠が電話したみたいだった。
それからすぐ病院に行って、処置をしてもらった。
家に帰ると悠は母さんにこってりしぼられて、火の扱いも禁止になった。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で私に謝りに来た。
『ご、ごべん、なざっ・・・・・・』
私は、どうしたんだっけ?
なんて答えたんだろ。
ただ、悠が私に近寄らなくなったことだけは覚えてる。
元々は私が悠に会うのを避けていたけれど、この一件以来、私は今までとは打って変わって悠に話しかけに行くようになった。
『ねぇ、悠』
私の声に反応して肩を揺らす。
『あ、えっと』
目線は私の顔に向かったが、フラフラと彷徨わせて頑なに私と目を合わそうとしないで、それから私の右腕を見た。
それ以降も悠は私と話すとき無意識に右腕を見るようになった。
目が合うことは少なくなった。
私はそんな悠が愛おしくてたまらない。
〜〜〜〜〜〜
「あああ!あの!?ひ、1人でっ!ちょっ!?」
回想に浸っていたら私の妹が大きな声で抵抗して邪魔をしてきた。
私は着替えたが、悠はまだだから悠の部屋まで来た。
悠も忘れはしないだろうと勝手に思っていた。
「はぁ、お姉ちゃん相手に何恥ずかしがってるのぉ?」
悠の着ているスウェットをたくしあげて脱がせていく。
覚えてないことはいいこと?
わからない。
「じ、自分でできますよっ!ち、千冬さんは外に出ててください!!」
悠に押されるが細い体なうえに力も弱くて、私の体はびくともしない。
「仕方ないなぁ〜。早くきてねぇ〜」
私は悠の部屋から出た。
思い出して。
もう一度見せて。
不安気なあの表情を。
次は31日に投稿します!




