知っていること、知らないこと
た、大変お待たせしました!
読んでいただけるとありがたいです!
私は自分の部屋に戻り、改めて眺めてみた。
カーテンが開かれている。
窓からは暖かな日差しが差し込み、雲一つない青空が広がっていた。
どこかに行きたくなるくらいいい天気だなぁ。
そこから視線をずらすと、固く口の閉ざされたごみ袋たち。
しっかりと纏められたちょっときわどい本たち。
天井と壁には何のゲームかもわからないイケメンたちのポスターが張り付けられている。
起きた時よりは断然ましになったこの部屋は見違えるほどきれいになった。
こう、明るい部屋でイケメンたちのポスターをよく見てみると結構いいキャラな気がしてこなくもない。
このまま貼っておくのもいいかな・・・・・・。
部屋の感想はひとまず置いておいて、今わかっていることの確認をする。
枕元にあったスマホを手に取り、メモ帳のアイコンをタップする。
今わかっていることは・・・・・・。
・紬さんがお母さん
・四人姉妹
・紅と碧は小学校六年生
・私は小学校四年生から引きこもり
・楓夏さんと千冬さんは高校生?
・私は中学二年生であること
・緊張やストレスで過呼吸になること
・今日は7月28日の日曜日
順に書き出していった。
本当に訳の分からない事態だ。
目が覚めてからはや三日も経ってしまった。
いや、まだ三日目、か?
「本当に、なんでこんなことに・・・・・・。できることなら魔法の使える異世界にでも行きたかったんだけど・・・・・・」
「本当に行きたいのか?」
聞こえてきた声に何も考えないで私は答えた。
「行けるならこんな訳の分からない所よりはね、え?」
声の聞こえてきた方向に体をギギギッと向ける。
そこには千冬さんの姿があった。
「だが、俺はお前を行かせたくはない。今日は帰さないぞ」
千冬さんは私の方を見てはいない。
視線は手元にある本に注がれている。
本の題名は・・・・・・。
『帰宅部の君を帰らせたくないっっ!!』
うおぉおおい!?
何してくれちゃってんの、この人!?
私のBL本が!!
って、違うっ!
私のものではなかったわ!
ていうか、いつからいたのこの人!?
ちゃっかりと私の部屋に侵入し、私が時間をかけて掃除したというのに、紐で括った漫画がすべて解かれてそこらに散乱している。
「ま、待ってよ・・・・・・。どうして僕のことなんかを・・・・・・。それは俺が今からじっくr」
千冬さんは声色を変えながら音読をしてくる。
「ちょちょちょっ!!な、なにしてるんですか!?人の部屋でっ!!というか音読はやめてっ!」
私は千冬さんに突進をして、本を奪い返そうとする。
「お姉ちゃん、こういうのはまだ悠ちゃんには早いかなって思うけど~」
それは私も思いましたよっ!!
千冬さんの身長に私が勝てるはずもなく、本を持った腕を高く掲げるものだから、もっと手が届かない。
「~~~っ!そっれ、は、私のじゃないっです!!」
必死にジャンプをして取り返そうとする。
しかし、表情の読めない千冬さんは私に本を返そうとはしない。
「悠ちゃんのじゃない、ね・・・・・・」
千冬さんは狐目のまま、私を一瞥してから、漫画に目をやった。
「悠が引きこもって何をしているのかと思っていたけど・・・・・・」
そういいながら私に漫画を押し付けて、机の前にある椅子に腰を掛けた。
あまりにも簡単に帰ってきた漫画に私は呆然とする。
が、すぐに我に返って抗議の声を上げようとした。
こ、この人!!
本当に性格悪い!!
しかし、そうする前に千冬さんが話し出した。
「こ~んないい部屋で、いいもの読んでたんだね?すっごく心配したのに意味なかったんじゃない?」
そういって天井に目を向けた。
私もつられて天井を見上げる。
天井にはイケメンたちがさわやかな笑顔を浮かべている。
私はそれを聞いて少しむっとした。
体は中二でも、中身は28歳だ。
知っていることも多い。
望んで引きこもりになる人もいればそうではない人もいるだろう。
それに、引きこもるうちに自身の心の拠り所を決めるのは自由なはずだ。
この体にとっての拠り所はこういいうイケメンたちだったんだろう。
「ず、ずる休みしたことありませんか?」
私は考えるよりも先に言葉が出てしまった。
千冬さんは私に顔を向ける。
「?」
私は俯きがちに一生懸命に考えながら言葉を紡いでいく。
「体は何ともなくてもなんか、心が疲れたりとかで、ずる休みしたり。心が疲れてるからずるじゃないのか・・・・・・?と、とにかく。ただ、単純に休みたいとき・・・・・・。休めたっ!!って思うのと同時に、休んじゃったって、後悔する感じ。みんな学校なのに私だけこんな風に休んで、みたいな。」
千冬さんは黙って、椅子から立ち上がった。
「・・・・・・」
私の方に向かって歩き出す。
「だから、こんなにガリガリになったの?だから、目の下にクマを作ったの?誰にも言えないまま一人になって・・・・・・。私たちがいる世界よりも魔法の使える世界が良かった?」
千冬さんは早口でそう言ってきた。
私の目の前に来た千冬さんは私の両腕を痛いくらい掴んだ。
「い、痛いです・・・・・・」
顔を上げても身長のある千冬さんの表情は見れない。
「大切に思ってるのに・・・・・・」
千冬さんから弱弱しい声が漏れた。
私はその言葉に反発する。
「大切に思われているってわかっていても、難しいときはあるんでs・・・・・・わっぷ」
いきなり目の前が真っ暗になる。
千冬さんに思いっきり抱きしめられた。
デジャヴだな・・・・・・。
一体、千冬さんはどうしちゃったんだろう。
どこで間違えたか・・・・・・。
魔法の世界のくだりが地雷だったんだろうか。
段々と意識がもうろうとしてきた。
ふわふわな千冬さんの胸で窒息死するのか・・・・・・。
さよなら、私の短い人生。
途切れそうな意識の中で能天気な楓夏さんの声が響いてきた。
「おーい、ちーふゆー!夏休みの宿題見せろっ!って!お前っ!!」
ガバッ
「ひゅはあ”ぁぁぁあっ」
私は思いっきり息を吸い込んだ。
楓夏さんがまた私を助けてくれたみたいだ。
本当に死ぬかと思った。
まじで!
二回も助けられて・・・・・・。
楓夏さんには足を向けて寝られないな。
なんて思っていると千冬さんが楓夏さんに怒られていた。
「おまえっ!最近変だぞ!!どうしちゃったんだよ?・・・・・・えっ。泣いてる?」
え?
うそ?
私のせい?
「うっせえよ!泣いてねえよ!」
普段とは違う口調で千冬さんが怒鳴った。
私も楓夏さんも驚いて、体を硬直させた。
そのまま私の方に顔を向けることなく、千冬さんは私の部屋からいなくなってしまった。
「ゆ、悠。お前、何したんだ?」
呆気にとられた楓夏さんは私に声をかけてきた。
「い、いや、何も・・・・・・。ただちょっと言い返しただけ・・・・・・」
言い返しはしたが、直接的な攻撃なんてしていない。
私の返答に楓夏さんは顔をしかめて、それから眉尻を下げて私を見た。
「千冬はお前のこと大事に思ってるんだ。お前が引きこもってからあいつ、一時期ふさぎ込んだんだぞ?特に、うち、一回ぼやがあっただろ?そん時にお前を千冬がかばってさぁ。・・・・・・覚えてるよな?」
「そっ、そんなっ!?」
そんな話は知らない。
私の反応に楓夏さんは悲しそうな顔をして見せた。
「あぁ、っと。責めるつもりはなくて・・・・・・。千冬のやけどもそんな大したものじゃないしさ?でもよかったよ。お前が部屋から出てきて、千冬も嬉しs」
「や、火傷!?」
楓夏さんの言葉を遮って私は驚いた声を上げる。
それを聞いた楓夏さんはしまった!という顔をした。
「あぁあああ!いや、覚えてないなら!それでいいっ!うあぁ、余計な事言っちまうから、その、またな!悠!姉ちゃんは忙しいからよっ!!」
そういい捨てて、逃げるように楓夏さんもいなくなってしまった。
私は一人自分の部屋に突っ立っていた。
そんな話は知らないよ・・・・・・。
投稿日決めても過ぎてしまって申し訳ないです。
次は21日か22日に投稿します。。。(汗)




