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◆第七章:小林 俊典 その二

挿絵(By みてみん)


 お待たせしたで!みんな大好き小林君、ここに復活や!!

 今はワイが委員長に忠誠を誓って一週間たったぐらいや。

 委員長が行方不明になった件は次の日家に帰った委員長がいなくなっていた猫を探して家出しとった、ってことになって丸く収まったんや。あんときはほんまに申し訳ないことしたでぇ。

 でも結果として委員長にお近づきできたし委員長のナイスバディも拝めたんや、やっぱり何事も行動が大事ってことやな。


 そいでワイらはカードを配る謎の男を探して今日も駆け回っているんや。

 そうはゆうても手掛かりは今のところゼロ、ワイらがあの謎のおっさんにあった場所で聞き込みをしても誰も突然表れる手品師なんて見たことがないの一点張りや。

 おかしな話や、確かにワイらが声をかけられたとき人気はなかったけどあの目立つおっさんを誰も見てないなっておかしすぎるで。


 んでな、今日は何があったかゆうとな、クラスでも可愛いけど近付きがたいと評判の三奈木ちゃんに声をかけられたんや!


「小林、あんたに聞きたいことがあるんだけど。」

 なんやてー!ワイには委員長という心に決めた人がおるんやで!

「あんたまた下らないこと考えているわね。」

 なんや下らないことって!

「あんたは春日原と違う意味でわかりやすいのね。」

 それって誉められとるんか?

「話を本題にうつすわ、手品師を探しているんでしょう?」

「なんでそれを知っとるんや!」

「私達も探しているの、手品師。」

 なんやこの女、どこまで知っとるんや?

「私はこの学校唯一のオカルト研究会の会長よ。面白そうな話じゃない、私達も混ぜてよ。」

 …なんや急に面倒な話になったで。

 確かに探す人手が増えるのはええんやけど委員長の愛猫、アミュレットちゃんの話をしてええんやろうか?

 オカルト研究会と言えばワイらの入学時に廃部寸前だった学芸部に三奈木ちゃんが入部してそのあと出来たっていうあれかいな…。なんでも文化祭でアメリカの神話がどうたらゆう新聞張り散らかして問題になったって聞いたで。

 そんなやつらにアミュレットちゃんの話をしたらこれ見よがしに記事にするかもしれへん。きっと紙面の表紙は「妖怪骨無し猫をウォッチ!」やな。

「あんたまた失礼なこと考えているでしょ?」

 三奈木ちゃん目がきついで、そんなんやから美人なのにもてへんのや。

「とりあえずワイだけやと判断つかんで、一旦神谷と委員長と話さないけんのや。」

「…あら、やっぱり二人も関わっているのね。」

 …あれ、ワイ余計なこといったんかいな。

「…まぁいいわ、返事は待っているわ。」

 三奈木ちゃんは踵を返して離れてく。

「いい答えが貰えるなら私達の部室に来てちょうだい、部室棟二階の角部屋よ。」

 そういって三奈木ちゃんはふと立ち止まって最後にいうんや。


「でもあなた達が調べているものに辿り着くには私達が必要になるはず、これだけは覚えておいてね。」


 なんかかっこええな三奈木ちゃん、男みたいやで。




 そのあとワイは下駄箱に向かうといつも通り神谷と委員長が待っててくれはった。

「遅いぞ小林。」

 そう急かさんといてぇな神谷。

「まぁ焦っても仕方ないですし。」

 さすが委員長、わが女神やで!

今日も眼鏡とおさげが可愛らしいなぁ!

「なぁ遅れたのには訳があるんや。」

「どうせしょうもない理由なんだろ。」

「違うんや、とりあえず帰りながら話すで。」


 この一週間ワイら三人は同じ道を歩いて帰っとる。

 ワイと神谷は元々一緒やったけど委員長も意外とご近所やったらしいんや。改めて聞いてみるとアミュレットちゃんを隠していた神社はワイの家の神社やったみたいでなんか運命を感じるでぇ。

「三奈木さんがそんなこと言っていたのね。」

 さすが委員長、飲み込みが早いで。

「あいつらカードのことを知っているのか?」

「それはわからんわ。」

「それが大事なとこじゃねぇか。」

「しょうがないやろ、突然話しかけて魔法のカード知ってまっかって聞けるかアホウ。」

「お前なら聞きかねん。」

「確かに。」

 そういって委員長はクスッと笑った!やったでうけたで!


 ワイらはいつも高架下のトンネルを抜けて十字に交差した交差点でそれぞれ別れる。トンネルに入るとき委員長の笑いをとって高ぶるワイの感性がなにかを感じたんや。


「…なんかおかしゅうないか?」


「何かってなんだよ?」

 毎日通るトンネル、踏み入れた瞬間いつもと違う感じやったんや。



「…ここってこんな綺麗やったかいな?」



 高架下で人目につきにくいこともあり夜には不良の溜まり場で有名だったこのトンネルは地元ではこう呼ばれる、「落書きトンネル」。

 なんかもっと格好いい異名があれば話のネタにもなったんやけど、今それはええ。


「…た、確しかに。」

「…私が昨日見たときは違ったはずです。」


 二人も声を揃えてワイに共感してくれる。

 ともかく今日のトンネルはどこかおかしかった。壁一面を覆っていた不良達の作品は1つとして残っておらず、真っ白なトンネルが広がっとるんや。

「…大掃除でもしたんやろうか?」

 ここはワイが小さい頃から通っとった道や、今になって急に大掃除なんて変や、都合が良すぎる。自分でゆうてて逆に疑問点が増えとるわ。

「…おい、小林。」

「…なんや神谷。」

「お前が三奈木から声をかけられたのって今日なんだよな。」

「…あぁそうや。」

「…あいつならなにか知ってるかもしれない。」

「いくんか神谷、でもアミュレットちゃんの件はどうするんや?」


「…行きましょう。」


 委員長が答える。

「何かヒントがあるならやっぱりいくべきです!」

 委員長もやる気みたいや。


「なら今すぐいこか!」


 ワイは二人の手を連れて来た道を引き返す、これならナチュラルに委員長の手を握れるで!

「おい、小林!」

「小林くん!?」

 驚いた二人もワイに連れられて駆け出す。


 …ワイは深く考えられないんや。神様なんてとうに信じてへんねや。せやけど将来も親のやって来たことを真似てなんも考えんで生きていくんや。

 神谷はワイが悩んでるとき一緒に考えてくれた、委員長の秘密を知って困惑していたワイと一緒に友達として悩んで行動してくれたんや。

 委員長は一人で秘密を抱え込んで、一人で解決しようとあがいとった。大事な家族のために一人孤独で戦っとったんや。

 …二人とも考えすぎやねん、人生なんも考えん方が楽やで。

 楽しいと思うことを思うようにやる、それが人生や。


 お前らにはそれが出来る。せやからわいが連れてってやるんや。

 最近訳のわからんことばかり起きるけどワイには関係ない、やりたいようにやるだけや!

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