◆第二章:小林 俊典
ワイの名前は小林や!
なぁなぁ!聞いてつかぁさい!
ごっつぅ不思議なことがあったんや!
昨日の帰り、ダチ公の神谷と別れた後の話や!
胡散臭いおっさんに声をかけられたんや!
それでな、急に手品を見せてくれはる言うもんやで。
せやから是非ともごっつぅ凄いの見せてつかぁさいって頼んだらな!
何とお札から水入りのコップを出してくれたんよ!!
あれはヤバかったわ!
ワイも手品やったことあるんやけどさっぱりネタがわからへん!
ほいでな、凄いのはここからやで!
ワイがびっくりしとるとな、そのおっさんがそのお札くれるゆうんよ!
お札だけもらってもしゃあないで!ってツッコミいれる前にな、そのおっさんも消えてしまうんやねん!
イリュージョンや!!
そいでな、お札だけ残ったんやけどそのお札がなんかわからんけど凄かったんや!
ほんまにものの出し入れが出来る魔法のお札やったんや!
なに?なにをゆうてるかわからん?
ワイにもわからんわ!!
とにかくヤバいもんを手にいれてしまったんやけど手にいれたからには使わにゃ損やろ?
そんでどれだけものが入るんか試してみたんや。
最初はおっさんの真似で湯飲みでな!
ほいで家にあるもの片っ端に試してみたんやけど気付きたことがあんねん!
まず一度に入れておけるものは一つや、湯飲みを入れたまま別のものをいれることがでけへんねん。
せやから新しいものを入れるためには入れてあるものを出さなあかん。
そいで驚くべきことにな!
このお札は生き物も入れれるんや!!
うちの近くにおる野良猫で試してみたんやけど猫も吸い込めるんや!
勿論出した後は元気にしとったで!
このお札すごない!!
そいでな、ワイの悪戯心に火がついたんや!
猫が入るんなら人も入れれるんやないかってな!
愛しの委員長を間近で眺めれるんやないかってな!!
ちょっと下心が出てしもうたがそうでなくてもこのイリュージョンであの娘のハートもいちころやで!
そうと決まれば善は急げや!
いつもは神谷と一緒に帰るんやけど帰りの遅い委員長と放課後二人きりになったところがチャンスや!
今まで話したことはないんやけどこのお札のお陰でなんか勇気が沸いてくんねん!
今日こそ委員長とお近づきになるんやで!
***
ってな訳で今にいたるんや。
「じゃあな。」
「ほなな!」
校門前でワイらは別れの挨拶をする。
神谷には先公に呼ばれとるって伝えたら、すんなりかえりはった。
なんか心ここにあらずって感じやったけどな。
あいつの髪が風になびいとったわ、散髪が嫌いやからな神谷は。
いつものアイツらしくなかったんやけど今はそれより委員長や!
何でかは知らんけど最近いつも教室に残って読書してはるんよ!
動物解剖学?とかいう難しそうな本を読んでるみたいやけど読書姿もかわええな!
とりあえず神谷にも怪しまれんよう一旦教室を出て図書室辺りで待機や。
十分もすればクラスメイトも大体帰るやろ。そうゆうクラスや!
さらに図書室の窓から帰る生徒の様子もわかるし一石二鳥や!
滅多に図書室なんか来んけど放課後も人は少ないなぁ、みんな部活か塾なんやろな!
ワイのうちは神社やっててどのみちワイも跡取りやし今は青春を満喫させてもらうんやで!
しっかし人おらんな、うちの図書室は。
学校が見渡せる窓があって日当たりはいいんやけど利用者は少ないようや。
まぁワイもこの古くさい本の匂いちゅうやつはそんな好きでもないから人が来んのもわかるわ。
それでも図書室におるんわ、二組の五条と同じクラスの三奈木ちゃんやな。
三奈木ちゃんはショートカットでボーイッシュでな、顔も可愛いんやけどなんかオカルト系の本を山積みしてはるし悪い噂も多い、あんまり関わらん方がええやろな。神主の息子がゆうのもアホやけどな!
五条はおかっぱ頭の男子でな、一年の時同じクラスやったがなんかこれといって目立つやつでもないしほっといてええやろ。
さて、ぼちぼち十分経つし委員長が帰った様子もない!クラスの連中も概ね帰ったようやし愛しの委員長に会いにいざ出陣やで!!