◆第十八章:筑波 善財 その二
なんだこいつは?
フルフェイスのマスクにピチピチのライダースーツ、おまけに訳のわからない声。
かなり体格がいいことから男だろうとは思う。
こいつが噂のサイボーグか?
訳がわからねぇがとにかくまずは風見だ、あいつを捕まえて情報を聞かなきゃな。
「ソウハサセナイ!」
俺が風見に近付いたのに気付いてそいつは近付いてくる。見立そんなに早くはない。
とりあえず風見を捕まえてさっさと逃げるぜ。
「サイボーグミサイル!」
そいつは恥ずかしげもなくそう叫ぶと手の甲から何かを飛ばしてくる。
それは俺の肩にぶつかる。
強い衝撃と共にグチャリと気味の悪い音がする。
「痛っ、なんだこりゃ?」
真っ黄色な液体が肩につく、おまけに臭い。
俺はこれが何か知っている。
ペイントボールだ。
防犯用品で強盗に投げつけることでそいつを目だ立たせ捕まえやすくする道具だ。
あのヘルメット野郎、クソ面倒くせぇものぶつけてきやがって!!
俺が足を止めるとそいつは距離を詰めてくる。
すると突然そいつは自分の両手の甲を強く叩きつけ謎の構えをとる。
「サイボーグノパワーハジョウジンノニバイ!!」
なんだかよくわからない挙動だったが俺は気付いた。
あいつの右手の甲だけ白い。
あれはカードだ。
「サイボーグパーンチ!!」
俺は鳩尾を思い切り殴りつけられる。
殴られた瞬間に不思議な感覚を味わった。
一度殴られたはずなのに二度殴られた様な強い衝撃が体に走る。
クソ痛ぇ…!!
「ぐはっ!」
そのまま俺の体は後ろにぶっ飛ぶ。
なんなんだこいつは!?
「ショウネンヨ、ダイジョウブカ?」
風見に巻き付けた俺の鎖をそいつがほどく。
あいつのせいで計画がむちゃくちゃだ!
ともかくこの場に長くいるのはよくない。
夏目の写真をみてここにくるやつらが他にいるかもしれない。
そしてそれはなにかしらカードに関わりのあるやつだ。
差詰めあの変態ヘルメットもそんなところだろう。もっと手早くやるんだった。
ともかく他のやつらにカードのことがバレるのは不味い。
「サァカンネンするんだな。」
ヘルメット野郎はそういい終えると突然踞る。
…は?
「ムむ、カツドう限界のヨうだ。」
先程まで甲高かったヘルメット野郎の声が段段渋い声に変わっていく。
「さらばだ少年達!」
急に渋い声になったそいつは颯爽と逃げ去りやがった。
…不味い、不味いぞ。
あいつをこのままにするのは不味い。
全身変な格好で声までおかしいあいつはここで逃げられたら正体がわからねぇ。
確かに風見をこのままにするのも不味いがあのヘルメット野郎は確実にカードを持ってやがった。
逃げた理由はわからねぇがあいつは強い。
このままだといつあいつから狙われるかわからねぇ…。
まずはあいつを仕留めるのが先だ!
俺は汚れた肩にカードをつける。
すると服の汚れと臭いは消えカードが黄色になる。
「ペイントボールの汚れだけ」をカードに取り込んだ。
色々と使い方を勉強しててよかったぜ。
「糞が!!」
カードが白に戻るとその下にドロッとした黄色い液体が落ちる。
殴られた腹が痛ぇ…、糞が…。
とにかく計画変更だ!
まずはヘルメット野郎!
あいつを潰してカードも奪わせてもらう!!




