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◆第一章:神谷 優輝

挿絵(By みてみん)


 俺は神谷優輝、地元では進学校を銘打っているものの特出することのない普通の高校に通う二年生だ。

 趣味とかは特にない、普通に学生をしているんだと思う。


 俺の住んでいる町は丁度都会と田舎の間位で電車は三十分おきに通っている。

 けど便宜はよくわからない。

 俺と電車の接点は友人の小林と帰り道に落書きだらけの高架下を通るくらいだから。

 俺も小林も帰宅部同士でいつも同じ道で帰るんだ。




「なぁ神谷?」

「なんだよ小林?」


 大体帰り道で話をふっかけてくるのは小林だ。


「どうやったら委員長と付き合えるやろか?」

「……告白すればいいんじゃないか?」


「それが出来たら苦労せんわ!お前中学一緒やったろ、なんかいい情報ないんか?」


「……んなこといわれても絡んだことないからなぁ。そもそもなんで委員長なんだよ?」


 小林はその坊主頭を輝かせて言う。




「黒髪眼鏡っ子はな、世界を救うんやで!」




「なんだそりゃ。」




 小林と同じクラスになってから2ヶ月間ずっとこの調子だ。よほど委員長が好きなのだろう。

 だが俺は小林と委員長が話をしているところを未だ見たことがない。

 俺がいうのもなんだが情けないやつだ。


 小林と交差点で別れて徒歩五分位のところであの謎の男に出会った。

 さっきまでのあいつとのたわいもない会話が随分昔の様だ。

 気付いたら俺は家に帰っていた。

 一軒家に親父と二人で暮らしている。親父の帰りは遅いからほとんど一人きりだ。


「これで答えがわかりますよ。」

「上手く使ってください。」


 先程の男の言葉が頭をよぎる。あの男を信用するわけではないがこのカードにはその言葉を納得させる何かを感じる。

 改めてそのカードを見回す。

 大きさを図ったところ縦幅約10cm、横幅約6cm。

 何で出来ているかわからないそれの表面は、最初にグラスが描かれていたとは思えないほど真っ白でどこか不気味だ。

 裏表はなく両面が純白なのだ。


 だがそれ故に好奇心を駆り立てる。

 小さい頃の様な純粋な好奇心だ。



「これで答えがわかりますよ。」



 わかるとは言っていたが教えてはくれなかった。

 ……絵が実物になる、俺はあの男の出したグラスに触ってはないが水を飲む仕草にはリアリティーがあった。

 ……とにかく試してみるしかない。

 家にあったシャーペンとグラスを用意した。

 

 俺の考えは三つ。


 仮説一、カードに書いた絵が実物になる。

 仮説二、カードに物がしまえる。

 仮説三、やっぱりただの手品、目の錯覚だった。

 

 ……自分で言っていて恥ずかしくなるが一と二は夢見すぎ、現実は三になるはずだ。


 だけどこのカードには何か異質なものを感じる、試してみるしかない。




 まず仮説一だ、シャーペンで絵を描く。

 消しゴムで消せるはずだし、まず一筆入れてみよう。


 軽い気持ちだった。

 

 異変はすぐに起きたんだ。

 シャーペンで書こうとした線は空を切る。


 ……おかしい。


 強く押し付けて書いている筈なのに。

 カードとペンの間に膜があるかのように……。


 線が書けない!?


 早速このカードはおかしい。


 他のペンも試した。マジックペン、筆ペン、鉛筆、……どれもカードを汚すことが出来ない。


 紙のようなのに特殊なプラスチックなのか、……いや違う。

 さっきまで手に触れていても気が付かなかったが膜のような何かに覆われている。

 透明な膜があるのか、膜そのものが白いのかもわからないが確かな違和感があった。


 撥水性のいい物体なのか?

 恐る恐るグラスにいれた水にカードをつけてみる。


 するとどうだろう、カードは濡れていなかった。


 水につけた指先には滴が垂れるのにこのカードは何事もなかったように滴がつかなかった。

 油を塗っている訳じゃないのに、本当に空気の層があるかのように何も起こらなかった。


 膜がなんなのか知るために色々と試した。

 油につけても水と同じく滴は垂れず、ハサミを入れても切れなかったし、針も刺さらない。火で炙っても燃えないのだ。

 折ってみようと曲げるとグニャリと弾力を持つが折ることは出来ないし、ちぎることも出来ない。


 やはり何かおかしい。

 これがなんなのかはわからないが日常的に手にはいるものではなかった。


これだけで十分ファンタジーなのだが俺は何も考えず先にたてた仮説二の検証を行った。




 結果から言えば仮説二が正解だった。




 理屈はわからない。

 グラスをカードに近づけて入らないかと、起きるわけがない妄想をした。





 それが起きた。





 側にあったグラスは消え、カードに消えたグラスと同じ模様が浮かびあがる。


 ……夢をみているのだろうか?

 いつからが夢なのだろうか?


 両面真っ白であったはずのカードに手に持っていたはずのグラスが描かれていた。

 慌てて出したいと思うとカードの絵は消え手元にはグラスが戻っていた。


 今まで漠然としていた未知への恐怖がはっきりとした確信に変わる。

 自分の知っている限りではこんなものはアニメや漫画でしかみたことはない。

 未来の猫型ロボットが持っているようなあれだ。

 何度かグラスの出し入れを試しているとあの男の言葉を思い出した。



「上手く使ってください。」



 何故こんなものを俺にくれたのか?

 そもそもあの男が何者なのか?

 何に使えと言うのか?

 わからないことだらけだが一先ずは自分の中に留め、なに食わぬ顔で親父の帰りを出迎え、最低限の家事を済まして床についた。


 朝目が覚めても確かにカードはあった。


「……夢じゃないのか。」


 この時点ではこのカードの事は誰にも話すつもりはなかった。

 人に話すにしてはわからないことが多すぎるからだ。




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