◆第十五章:五条 是清 その二
SNSって怖いよねー!
誰が見てるかもわからないのに写真とか載せるやつの気が知れないよー!
それはそうと僕は神の力を手に入れてから色んなことを試してきたんだ!
夜に徘徊しているボケたじーさんばーさんを捕まえて遊んでみたり、色んな動物の解体実験もしたなぁ!
昔から人と遊ぶことよりも生き物の解体が好きだった僕にとって何でも好きに奪える神の力は理想的な力だったんだ!
勿論お父さんやお母さんにバレないよう一回一回処分するのは大変だったなぁ…。
でも途中で気付いたんだ!
簡単に綺麗にする方法があるって!
やっぱり習うより慣れよ、だね!
その方法を知ってから掃除も簡単になって捗った捗った!!
そしたら今度はさ、僕と同じ神の力を持っているやつが現れたんだよ!!
いやー興奮したなー!遂にライバル登場かって!!
まっ、弱かったからすぐに倒しちゃったんだけどね!
そして勝ったら神の力が増えたんだ!やったね!
それからさ、高校生活を謳歌しながら平凡な毎日を過ごしていたんだけどさ!
なんか色んな噂が流れてきたんだ!
怪しいオカルト研究会に正義のサイボーグ!池での怪奇現象に謎の怪盗!!
楽しそうなことがとっても一杯だね!!
それで情報通になろうと思って学校中の生徒のSNSをずーと眺めていたらさ、なんとびっくり!また新しい神の力を持っている人がいるじゃないですか!!
僕は嬉しくなってすぐに家を飛び出したよ!!
そしたら君がいたんだ!!
「って訳なんだよ夏目花梨さん!!」
僕の前にはドラム缶がある、彼女はこの中に入っている。
「いやーでも本当によかった!君が丁度一人で歩いていて!捕まえるのが簡単だったよ!」
正確に言えば彼女の頭だけドラム缶からでているのである。
でも大丈夫!彼女は生きているよ!
因みに目はタオルで隠してここがどこかわからないようにしてあげてるのさ!
「やっぱりさ、人が多いとさ、恥ずかしくってさ、僕の神の力は引き出しにくくなるんだ!君が一人でいてくれて本当に助かったよ!」
彼女は泣いている。
「いやいや、僕は別に君を泣かせたくてここにつれてきた訳じゃないよ!」
「他の神様の力をもっているやつを知っていたら教えて欲しいだけなんだ!」
「教えてくれないとこうだぞー!」
僕はマッチに灯をともす。
彼女がはいったドラム缶の回りには薪がくべてあり横には灯油缶が倒れている。
僕はマッチ棒をそこへ投げつける。
彼女は声にならない悲鳴をあげる
「ファラリスの牡牛って知ってる?」
「…助けて。」
「昔ローマで作られた道具でね!美味しいお肉を焼くための道具なんだ!」
「…助けて、助けて、助けて、助けて。」
「なんちゃって!嘘です!正解は楽しい拷問具でした!」
「助けて!助けて!助けて!助けて!助けて!助けて!助けて!」
「あれ?でも正確には違うか!処刑用だったっけ?」
「あぁぁ熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱いぃ。」
「…しょうがないなぁ、話の途中なのに。」
カードを彼女の頭に近づける。
すると彼女の姿は消え、カードに苦悶の表情を浮かべた少女がうつる。
「今度はこれね!」
そうゆうとカードを別のドラム缶の前で振りかざす。先程と同じ様に彼女の頭だけがドラム缶から姿を表す。
「暑かったろうから今度はキンキンに冷やしておいたよ!」
彼女の体は急速に冷やされる。ドラム缶の中は氷で一杯になっているのさ!
「いやぁぁぁぁーー!!」
「それでね!ファラリスの牡牛って言うのはね!牛の形をした真鍮性の像でね、中が空洞なんだ!そこに人をいれて焼くとその人の悲鳴が牛の鳴き声に聞こえるんだって!面白いでしょ!」
「いやぁぁぁぁーー!!」
「ねーねー話をきいてよ、今度はじっくりお話しして他のやつのことを聞こうと思っていたのに!」
「タスけてよぉぉ…、おねがぃだからぁ…。」
彼女は悲鳴をあげるばかりで会話にならない。
「…本当にしかたないなぁ。」
またカードで彼女にふれ、カードにうつす。今度は何もない空間に彼女を放す。
「どう?大丈夫?」
僕は声をかける。
「さっき足の神経だけ抜いておいてあげたから立てないでしょ!」
彼女は地面に膝をつく。
「あ!折角だからいいものを見せてあげるよ!」
僕は胸ポケットから真っ黒なカードを取り出す。
「これね!僕の必殺技!」
「そうだね、技名はブラックボックス!!とか格好いいかな。」
そう言って僕は今もなお燃え続けるドラム缶にそのカードを向ける。
すると一瞬で黒い塊がそれらを覆いつくす!!
「これはね!実はね!ただの真っ黒に塗った段ボールなんだ!!そう!名前の通りただの黒い箱なのさ!」
「でもね!この箱はどんなものでも消すことが出来るのさ!」
「凄いでしょ神の力!」
「…ってあれ?気を失っている?」
夏目ちゃんは根性ないな…、まぁ僕と同じ現代っ子だから仕方ないね。
「とりあえずカードにしまっとこう!」
僕はカードで彼女に触れて彼女をしまう。
「さてさて後片付けっと!」
僕の前に何度か黒い箱が現れたり消えたりを繰り返すと回りにあったがらくたはすべてなくなった。
「ところで神様?もう力は配り終わったんだよね」
少年が声をかけると薄暗い闇から人影が現れる。
「そうですね、今回は十枚で十分です。」
あからさまに目立つシルクハット、首にまいた銀色のマフラー、くたびれたスーツの下に派手な模様のシャツを覗かせる、長身で白髪、何か浮世離れした、いかにも不審者というべき男は一人呟いた。
「十だけにってことですか!面白いですね!」
男は無言だった。
「それよりみんなを集めれたら戦いの舞台を用意してくれるんですよね?」
「ええ、約束しましょう。」
男は答える。
「私のステージを貸してあげます。」
「やった!ありがとう神様!」
「ならそろそろお父さんとお母さんが心配するんで僕は帰りますね神様!」
少年がそういった時には誰もいなかった。
水滴の滴る音だけがどこまでも続くような空洞に響き渡った。




