◆第十四章:風見 風太
先週の文化祭は楽しかった。
俺達サッカー部は揚げたこ焼きを販売した。
オカルト研究会とか言う怪しい集団に売り上げ競争であと一歩のところで敗退してしまったらしいが俺は楽しかった。
「風太~、この写真ぱないっしょ~!」
「あぁよくとれてるじゃん。」
「でしょでしょ!!早速あっぷしよー!!」
こいつは俺の彼女の夏目花梨、可愛い女だがSNS中毒だ。
いつも自分の近況をネットにあげないと落ち着かないらしい。
お陰で今俺のスマホには文化祭の写真が一杯だ。
それもこれも花梨のスマホのバッテリー切れのせいなのだが些細な問題だ。
俺達は今、街でもおしゃれと噂の喫茶店「チクタクマン」にいる。
今日が練習にならなくてよかった。
正直地区大会は準決勝で敗退して良かったと思っている。
いい汗はかけたし悔いはない。来年勝てばいいだけなんだ。
「風太~、なにぼ~としているの?」
「なんでもないさ。」
「それよりみて~このブリリアントパフェ!!超うけるんですけど!!」
確かにブリリアントパフェは想像以上の大きさで半分以上俺が食べることになった。
「…なぁ花梨、手品は好きか?」
「えっ、なーにー?てじなー?みたいみたーい!」
「しょうがねぇなぁ。」
俺は懐からカードを取り出す。
真っ白なカードだ。
「今からこのパフェの器を消してみるぜ。」
「えーうっそだー!」
花梨は信じてないらしい。
俺がこのカードをもらったのは三日前くらいだったか、通りで変なおっさんからカードをもらった。
マジック用の道具らしい。
確か俺で10人目とか言ってたけどなんの話やら。
「じゃあいくぜ、一、二の三!!」
俺がそういってカードで器に触れると器は消えてなくなる。
「うっそー信じられないんですけどー!」
花梨も興奮している。
「器はこの中さ。」
そういってカードを見せる。そこにはさっきまでそこにあったパフェの器が描かれている。
「えーどうゆうことー!!」
なかなかいいものをもらったみたいだ。
「こうすると元に戻るんだよ。」
そういって俺は器をもとあった場所に戻す。
「えー魔法使いじゃん!!」
「花梨もやってみる?」
「えーいいのー?っていうかーできるのー?」
「簡単だよ、カードで触るだけで出来るのさ。」
花梨にカードを渡して試させる。すると同じようなことが起きる。
「えーマジすごいじゃんこれー!!」
気に入ってもらえたようだ。
「やるよ、それ。」
「え、風太~いいのー?」
「いいんだよ、どうせ貰い物だし。」
俺には持ち歩きたいものも消したいものもないし、いらないものなんだ。
「ちょーうれしーんですけど!ありがとー!」
そのあと映画館に行って流行りの映画の「黒いライオン」を見たり、花梨の買い物に付き合ったりしてたら日が暮れてきた。
「ちょー楽しかったんですけどー!ありがとー風太~!」
花梨はご機嫌だ。
「送ってくれてありがとー!好きよー風太~!」
「あぁ、俺もお前が好きだよ。」
花梨の家は図書館の近くだ。図書館まで送って俺は家へと帰る。
帰り道でスマホに通知が入る。送り主は花梨だ。
「風太のカードで凄いのとれたよー!」
それには写真が添付してあって図書館裏のゾウの銅像と花梨の姿が写っている。
面白い点としては本来銅像がある場所に花梨が立っていて銅像はだいぶ右にずれた位置に写っている。きっと手に持っているカードでずらしたのだろう。
面白いことを思いついたな。
俺はそのメールにいいねとだけ返事をして家に帰った。




