5.シェイドは実は……
何だろう……すごく心地いい。
モフモフとしてて暖かくて……、まるで何かに布団か何かにやさしく包まれているかのように感じる。
ゆっくりと目を開くと目の前には毛があり、五感をしっかり働かせると、僕とシェイドが抱き合っていることに気が付いた。しかも、シェイドは全裸なわけで。
「うおおおぉぉぁぁぁぁ!!!」
「ぐへらぁ!!」
驚きのあまり、いつもなら冷静に対処している僕でも、さすがにジャーマンスープレックスをくらわしてしまう。
ビックリした、あービックリした!!
ちょっとやりすぎたかもだけど、罪悪感は全くない。何があったかはわからないけど、たぶんシェイドが悪い。……はず。
にしても、なんか胸元が柔らかかったような……気のせいだよね?
「ってぇな……いきなりなにすンだよ……」
「起きたらいきなり目の前に寝てる全裸の奴に抱かれてたらビックリするわ!!ていうか、なんで全裸なんだよ!?」
「え、なんか暑いからだけど……ていうか、抱き着いてきたのはロウガからだぜ?いつものように」
まさかの僕から!?
いや、待て待て……確かに昔っからシェイドを抱きながら寝てたけど……まさか、体がシェイドを抱きながら寝ると覚えてしまってる?
なんてこった……
orz状態になって落ち込むと、肩をポンと叩かれた。
「いやぁ、俺は嬉しいねぇ。なんだかんだ言ってもロウガは俺を想ってくれてんだから」
高笑いしながらそう言われた。
言いがかりはよしこさん。
なんとなくボディパンチをしたくなったため、襲い掛かろうとしたら、シーツに足を取られて思いっきりシェイドに倒れこんだ。
「シェイド様、ロウガ様、朝食をお持ちし……」
二回扉をノックされ、メイドのネズミ獣人が入ってきて、顔を真っ赤にしだした。
今の僕たちの姿は、全裸のシェイドを僕が押し倒してるような姿なわけで……
「まったく……大胆だな、ロウガは……」
フッとイケボイスでシェイドが言うと、「お楽しみ中失礼しました……」と、言ってネズミ獣人が急いで部屋を出て行った。
え、ちょ、誤解して行かないでぇ!!
思いきり押し飛ばして追いかけようとしたけど、途中ですっころんでしまった。
地味に痛い。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫だけど……なに余計な事言ってんのかなぁ~?」
シェイドの襟元を掴んで思いきり前後に揺らす。
何かを言ってるようだけど、揺らしているから全く聞き取れない。
手を放し、再びorzモード。
「早く朝食食べようぜ?昔の人間のとこに行くんだろ?」
「わかってるよ……」
放置されていった朝食(オムレツとスープ、牛乳)はなんとも庶民らしいメニューだった。
しかし味はプロが作ってるからか、比べ物にならないくらい美味しい。
食事を終え、部屋を出ると羊の獣人の呼び止められた。
「失礼ですが、お体のサイズを測らせていただいてもよろしいでしょうか?シェイド様のお洋服ですとブカブカのようなので……こちらで作らせていただきます」
あ、それはすごく助かるかも。
なにせ、僕の服は制服しかないからね。文句なしでOKですよ。
王室間への道を聞いといて、シェイドを先に行かせて僕は測ってもらう。もちろん廊下ではなく部屋でだ。
羊獣人のメイドがメジャーで身体のサイズを測っていき、メモ帳に記入していく。
デザインを聞かれたけど、デザインなんて考えつくはずもなく……おまかせにした。どんなデザインになるかな、楽しみだ。
服は今日の夕方にはできるとのこと。丁度いい時間かもしれないね。
王室間へ向かう途中でいろんな獣人に挨拶され、ちょっと照れるけど挨拶を返す。
別にここまでしなくてもいいんだけどなぁ……慣れてないから恥ずかしいし。
やっと王室間に辿り着くと、目の前にそびえ立つバカでかい二つ扉を見てものすごく躊躇った。だって、とある漫画で見たものすごく重い扉みたいなんだもん!
そのキャラは一週間修行してやっと開けれてたし!
まぁ、さすがにそこまで重くはないんだろうけど……僕にとってはめちゃくちゃ重いんだろなぁ……。
扉に手をかけて、せーのっと声を出して思いきり押すと、見た目に反してかなり軽く、勢い余って中に倒れこんでしまった。地味に痛い。
前を見ると、シェイドと獣人王が驚いた様子でこっちを見ていた。
うわ、恥ずかしっ!
「おい、大丈夫か?」
近づいてきて手を差し出してくるシェイド。行為に甘えて、立ち上がるのを手伝ってもらう。
ううん……こうしてみるとイケメンなんだけどなぁ……あ、僕はケモナーじゃないんであしからず。
「派手な登場したとこで早速だが、元人間の場所がわかったぞ。南区にある飲食店にいるようだ。種族は獅子だ」
飲食店……か。
なら、今は仕込みとかで忙しいんでない?
行くのはピークが過ぎたあたりの方がいいかな?
「話は通してあるから時間は気にしなくていいぞ」
え、今心を読んだ?
プライバシーの侵害だ!と思ったけど、どうやらブツブツと口に出していたらしく。獣人の聴力スゲー!
地図を渡されると、この城は北区にあるのがわかった。
まるで正反対の位置じゃん!
うぅん……まぁ、走ればいいトレーニングにはなるかな?
そう思っていたら、シェイドが僕を持ち上げた。……お姫様抱っこで。
「よーし、んじゃ早速行くかぁ!!」
「え、ちょ、自分の足で行くっての!」
「早く着くにこしたことないだろ?それに、俺は早く帰ってお前とイチャイチャしたい!!」
そんなの、こっちからお断りだからね?
よくそんなの恥ずかしがらずに言えるな……
「ちょっとロウガは残ってくれ。シェイドは廊下で待ってろ」
「は?なんで……」
「ちょっと話が……な」
ブツブツと不満そうに呟きながら王室間を出ていく。
体格がまるっきり違う僕と獣人王の二人が残り、王室間は静寂に包まれた。気まずい……。
「さて……早く行きたいだろうが……残ってもらってすまないな」
「いいですが……どうしたんですか?」
「お前は我が子、シェイドをどう思ってる?」
どうって……うぅん……
「息子さんは向こうでは最初はかなり反発してたけど、時が経つにつれ、かなり懐いてくれましたね。今じゃ体格や力がシェイド……さんが上だから体力がキツイっていうか……」
「息子さん……か。言っとくが、シェイドは娘だ」
……はい?
いやいやいや、ちょっと待って……は?
え、シェイドって雌なの?
向こうの世界でお風呂に入れてるときにちゃんと確認してますよ?
動物病院でもちゃんと……
「え、でも付いてるものは付いて……」
「ここで風呂に入った時に見たか?」
「……」
そういえば見てない。
ていうか、雄だと思っていたのにわざわざ股を見る必要ある?ないですよね。
姿が変わっただけでなく性転換とか……
「まぁ、そんなわけで娘をよろしく頼む」
なに?その、もう向こうの世界には戻れないみたいなセリフは?
とりあえず、「はぁ……」とだけ言って、王室間を後にする。
シェイドになんの用だったんだとしつこく聞かれたけど、とにかくスルーして、ブカブカの服を着たまま街へ向かう。
途中でチラッと横目でシェイドを見ると、やっぱり違いがわからない。
でも、朝に感じた胸元の柔らかかったのは、やはり本物だったんだ。
なんだろう、そう思ったら急に罪悪感が……いや、今は気にしないでおこう。
とにかく、南区の飲食店へ行って話を聞かないと!
名前や言葉使いからして雄だと思うよね




