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BEAST WORLD  作者: 子狐エルザ
第一章:異世界へ編
4/9

4.獣人王との対面

ちょっと体調崩しました。

 「別に変なことはしねぇからいいだろう~?」


 そんな事言われても、手の怪しい動きで説得力0なんですけど?

 でも、この調子じゃ……いつまで経ってもここから出られる気がしない。

 仕方ない、条件を付けよう。


 「わかった。でも、僕が変なことをしたと判断したら僕から半径50m以上離れてよね」

 「ぅぐ……わかった」


 嫌な顔をして一歩後ずさったとこを見ると……変なことを考えていたか、ヤる気はなかったけど条件がすっごく嫌なのか。

 まぁ、これなら大丈夫でしょ。

 ため息を一つ吐き、椅子に座って背中を向けると、もの凄い幸せオーラを感じた。それは背中を洗ってる手から余計に感じた。なんかこっちが恥ずかしくなるな ぁ……


 「なんだか嬉しいなぁ。前はロウガを洗えなかったけど、今はこうやって洗ってやれるんだし」

 「これ、なんだか恥ずかしいんだけど」

 「そんなの今だけだ。俺だって最初は恥ずかしかったんだからな」


 そういえば、拾った当初はすごい緊張してたなぁ……初めて入れた時なんて暴れてたからね。

 今度は逆の立場なわけだ。とりあえず我慢するしかないか。

 背中が終わると前を洗おうとしたもんだから、僕はストップをかけた。

 すると、耳と尻尾がペタンと垂れた。うん、落ち込んでるね。


 「いいじゃんかー、上半身くらい」

 「ダーメ、後ろだけ!」

 「チェ……」


 泡を流して湯につかる。

 あー……これはいい湯だ。なんだかすごくホッ とする。温度も丁度いいし、今日の疲れが一気に吹っ飛ぶ感じがするよ。


 「いい湯だろ?これ、お前がいた世界でいう温泉ってやつだ」


 温泉!?

 実家に温泉ていいなぁ。健康にもいいし、毎日が最高じゃん!!

 なら、今はここでの生活を楽しむしかないかなー。学校もないし、寝て過ごすのもアリかな?あ、それじゃニートと変わんないや……それに、向こうに戻った時に授業についていけなかったらどうしようもないからね。……ホントは嫌だけど。

 でも、どうやって?

 まぁ……教科書や参考書がなけりゃ意味ないし、諦めるか。

 とりあえずもう出よう……のぼせてきたし。


 「ん、もう出んのか?」

 「のぼせてきたからね」

 「んじゃ、俺も出るかね」


 ザバッと温泉から立ち上がり、裸体晒しも恥ずかしがらずに仁王立ちになって言い出した。

 ……この獣人には羞恥心てのは存在しないのだろうか?存在していることを願う。じゃないと、元飼い主としてこっちが恥ずかしい。

 タオルで頭と体を拭き、着替えをもって風呂場から脱衣所に戻る。

 僕は残った水気をさらに拭き取って服を着ると、濡れてスリムになったロウガは端のほうにある部屋の中に入っていった。あの部屋は何だろうか?

 しっかし着た後で思ったけど……この服、なんかめっちゃ恥ずかしい!

 だって、まさに異世界の王子って感じの服なんだもん!!……遅いって言わないでね。


 「お、似合ってるじゃん似合ってるじゃん!!」


 いつの間にか出てきてたロウガは、濡れてペタンとなった時とうって変わり、フワッフワのモッフモフな毛皮になっていた。モフッたら気持ちよさそうだ。

 そして、着ていくのは僕が今着ているのと全く同じなわけで。……うん、僕の服が戻ってきたら速攻で着替えよう。

 脱衣所を出ようと廊下への扉を開けると、モフッとした壁にぶつかった。

 上を見上げると……銀色の毛並みをした大きい狼獣人がそこにいた。

 腕を組みながら、僕のことを見下ろしていた。


 「お前がロウガか」

 「え……そう……ですが……」


 威圧感がハンパない!!マジこえぇ……

 確認しなくてもわかる。絶対この国の国王……獣王じゃん!!そして、シェイドの父親でもある。


 「あ、親父!!ロウガに何してんだよ!!」


 シェイドにグイっと引っ張られた。

 あ、ちょっと脳が揺れた感じがした……めっちゃクラッとしたよ…イェン


 「なに、お前が連れてきた人間を見に……な」

 「さっき説明したんだから別にいいだろ!!」

 「お前が話をちゃんと聞かなかったとこもあるだろう?」


 ん?なにか重要な話だったのかな?重要な話ならちゃんと聞こうよ。僕に関する話なら余計に……さ。

 獣王が僕の方に向きなおし、ゴホンと咳払いを一つ。


 「ロウガよ、シェイドから重要な事は聞いたか?」

 「重要な事……?」

 「人間がこの世界に来ると身体が適応するために獣人の身体になってしまう」


 ……はい?

 今、なんて言いました?


 「は!?なんだよそれ!!」

 「なんだ、知らないで連れてきたのか?」

 「知るかよ、んな事!」


 え、え、マジで言ってるの!?

 僕が人間から獣人に……?ジョークじゃない……よね、あの表情は。

 向こうに戻った時どうすんの?

 それよりも今は……


 「シェイド……どういうことかなぁ?」

 「ぅ……」

 「異世界に拉致ってきただけでなく、人間の姿まで奪うの?」


 シェイドの肩を掴んで威圧感をかけると、両の眼がいろんな方向に泳いでいる。

 うん、気まずいよね。気まずいとそうなるよね、僕だってそうする。

 まぁ、そこは知らなかったみたいだし……そこだけは許してあげようかな。

 問題は……


 「あの……僕が帰れるようになるまであとどのくらいですか?」

 「ふむ……次の満月だから一週間後だな」

 「姿が変わるのはどのくらい……」

 「個人差だと思うが……早くて三日、遅くて一週間だろうか」


 間に合いませんね、わかってました。

 獣人に変わって向こうに戻ったら……動物の姿になってしまうんだろうか?それだけは嫌!獣人の方がまだマシ!!

 とは言ったものの、まだ完全に変わると決まったわけじゃない。

 個人差と言っていたし、もしかしたら変わるのは一週間より先かもしれない……なら、まだ希望はある!


 「これだけわかるってことは、過去にも人間が来てるんですよね?」

 「ああ、150年前と830年前にな。だからまだはっきりとは言えん。150年前の人間は城下町にまだいるはずだから……参考になるかわからんが、聞いてみたらどうだ?

 「……え?」


 え?150年前が健在?15年前とかじゃなくて?

 ……もしかして、獣人って寿命すごいの?

 普通の動物は人間より寿命がに短いけど……まさか、獣人の寿命って人間の倍以上?

 うわぁ……どうしても長生きしたい人には嬉しいだろうけど、人間やめてまで長生きしたいとは思わないだろうな。

 ……いや、中にはケモナーってのがいるし、その人種なら喜んでなるだろうね。

 僕はケモナーじゃないから喜んではいない。


 「150年前って……獣人の平均寿命って……どのくらいなんですか?」

 「種族にもよるが……平均は500歳だ」


 まさかの5倍以上!?

 そんなに差があるとは……さすがにクラっときましたよ。

 とはいえ、向こうの世界に帰れれば問題ない!!……はず。


 「とりあえず明日の朝までに調べておいてあげよう。今日はゆっくり休むといい」

 「はい、そうします」


 そう言って、一度お辞儀してから横を抜けて元の部屋へと戻る。

 シェイドも後ろから隣へと駆け寄ってきた。

 チラッと見ると、花が咲いたようなニッコリとした表情をしてこっちを見た。

 ううん……この顔を見ると、とても王子には見えん……。まぁ、それは僕の前だけで、他の獣人の前ではキリッとしてたし。

 部屋に戻ると、すぐさまベッドに入った僕を見たシェイドが尻尾を揺らしながら、何かを待っているような表情をしていた。

 あの顔は、いつも僕が寝ようとしたときに見ている眼だ。

 一つため息を吐いて、掛布団を少しめくって布団をポンポンと叩くと、パァッと明るくなって嬉しそうに入ってきた。

 いつもと同じでなんて嬉しそうな顔をするんだろうか。

 とにかく、明日は獣人になった元人間の話を聞くんだし、もう寝よっと。

みなさんは人間を捨ててまで長生きしたいですか?

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