始まる!魔法少女
完全に趣味です。気にしないで。
魔法少女っていいですよね。
私の名前は恵文鈴!ぴっちぴちの小学五年生!
骨董が趣味のおじいちゃん家の倉で見つけた、穴の空いた丸い石。まさかそれが、魔法少女になるためのアイテムだったなんて!
「私の名前は藺相如。お前を真の魔法相如にしてやろう。手始めに世界を救うのだ!」
……少女の字がなんか違うような気がするけど気にしない!
「リンリン!魔法少女に、なっちゃうんだから☆」
シャッラーン!
璧が光る。
「鈴、敵だ。この町の北東、寺町。」
「……今、何時だと思ってるの?」
私は不機嫌だと分かるように言った。
だって時計を見て!夜中の二時だよ!?
「2時だ。いや、言いたいことは分かる。だが、『歳月不待人』ともいうではないか。私も昔――」
「もー、わかったよ!相如さんの昔話は長いの。ふぁぁ~、じゃ、行くよ」
「……まあいい。気を張っていくぞ!」
C市寺町、公園。
「海外の人?とても怪人には見えないよ!」
「人を見た目で判断してはいけない。いや、怪人か。」
うーん、でも人っぽい見た目だとやりにくいよ!
「では真の姿を見せてやろう。破ァッ!」
璧から光の波動が広がる……さっきの外国人さん、大きな虎になってる!
こ、これが真の姿……。
「地察星『青眼虎』。雑魚だが……見逃す理由にはならんな」
「たしかに、これは危ないね!行くよ、相如さん!」
私は巨虎の前に出る。
うぅ……っ、やらなくちゃ!
「ふははは、力を感じるぞ。貴様、俺とやるつもりか」
「私が居る限り、この街に手出しはさせない!」
璧を構え、高らかに宣言した。
「リンリン!魔法少女に、なっちゃうんだから☆」
シャランシャラン、と鈴の鳴る音が響き、光が集い始める。
光の粒が線を描き、線が糸になり、糸が服になり、服が体を包む。
頭におっきいリボンもつけて!
「魔法少女リン☆リン、ここに参上!」
「……前から思っていたが、君は意外とノリノリだな、蘭。」
い、いいの!憧れてたんだから!
「グルゥ……喰い甲斐がありそうな小娘だ。オラァッ!」
「来たぞ、鈴」
む、やるっきゃないのね!
「な、何か武器はないの!?」
「武器は口先半分だ」
「使えないよ!」
は、こんな事してる場合じゃない!
虎さんが飛びかかってうわあああああああ
「あああああああ!UFO!」
「えっ!?ど、どこ!?」
振り向く虎。
え、そこでだまされちゃうの!?さすがに小学生でもウソだと一瞬で見抜けるウソだよ!?
「これが武器だ。私はこの能力で数々の敵を欺いてきた。名付けて、『完璧の小傷』。相手が馬鹿でればあるほどすぐに騙せる。」
なんて卑怯な……って、早く逃げないと!
「む、UFOなんて無かったぞ!貴様、俺を騙したな?もう許さんぞ!」
虎の筋肉が一層盛り上がった。
目は怒りで充ち、牙は残酷に光る。
「ど、どうしよう!さらに怒っちゃったよ!」
「まあ、落ち着け。堂々としていればよいのだ、堂々と」
ど、堂々とって……小学五年生に無茶な要求しないでよ!
「喰われても良いのか?しかもこんな可憐な少女だ。ただ食物として喰われるだけなら良いが、もしかすると性て――やめろ叩くな!傷が付いたらどうする!」
「私だって傷が付きそうなんだよ!」
「嫌なら堂々としていろ。まぁ、大丈夫だ。」
……そこまで言うなら。
精一杯の虚勢を張って、胸を張って、堂々と相手を睨みつける。
時間的には数秒、しかしあまりにも長い数秒の後……
「(な、なんだこの威圧感は……こいつ、本当にただの小娘か?)」
「なんか、うまくいってる?」
「これが第二の能力。名付けて『黽池の会』。相手を脅し、威圧することにかけて、私はプロだ」
それは誇るべき所なのかな……。
そ、そんなことどうでもいいんだよ!とにかく倒さないと!
「な、なにか必殺技とかないの!?こう、どーんみたいな!」
「どーん、か。ないこともないぞ。」
あ、あるんだ。
最初っからそれを使っておけば……まあいいや!とにかく使っちゃおう!
「じゃあ、私の言うとおりにしろ。」
「う、うん」
「私は別に戦う気などありません!と言え」
「わ、私は別に戦う気などありません!」
こ、これで良いのかな……。
ええと……私にはさらに怒っているように見えるんだけど、目の錯覚かな?
「戦う気が、無いだとぉ?」
「はい、そうです!と言え」
「はい、そうです!」
本当にこれで良いのかすごく不安になってきたよ!
「ふん、だからなんだというのだ。俺が貴様を喰わない理由にはならん!」
「私たちが戦って何になるというんですか!」
「知らんな。俺が怪人でお前が俺を倒す。洪信が伏魔殿を開いたときからその運命は決まっていたのだ」
「運命がなんだと言うんですか!運命に翻弄されるのではなく、運命に抗うことが私たちにできる『生』なんです!」
と、言えと相如さんが。
「運命の不条理は存在するのだ。それだけはどうしようもないものがな」
「そんなもの、やってみないとわからないです!」
「……そうか。やってみないと……」
と、相如さんが言っています。
全部そうなんだよね、うん。
何かすっごい罪悪感だよ!
虎さんも何か思うところがあるらしくじっと考え込んでいるみたい。
そして、ゆっくり私に歩み寄ってきた。
「……鞭で私を叩いてください」
「変態さんだよ!」
急に変な要求してきたよ!
「さぁ、早く私を!鞭で!」
「しょ、相如さぁーん!」
「これが私の第三の能力。『刎頸の交わり』だ。相手が『なんとなくそうかなー』と納得すると急に鞭で叩かれたくなる。」
「……」
なにか、なんなんだろう。
こう、必殺技って、それ?
「さぁ、箱に奴を封印するのだ」
「……箱?」
「ポケットに入っている。ああ、違う右だ。」
右ポケットに……これかな。
指輪とか入れる箱ぐらいの、小さな箱。
「かざすだけで良い」
「こう?」
すると箱が光り……鞭が出てきた。
「……てっきりこの箱に封印するものかと思ってたよ」
そして何かがっかりだよ。
「いや、合っている。ただしその鞭で相手が満足するまで叩かなくてはならないが」
……もうなんなの。
うぅ……しょうがないか……
「えいっ」
ピシッ
「あぁっ!も、もっと強く!」
……。
「……えいっ!」
ピシッ
「あぁっ!もっと……もっと……!」
ピシッ
「あぁっ!」
ピシッ
「あぁっ!」
箱が光り、虎も光って、箱の中に吸い込まれた。
「よし、回収完了だ。お疲れ様、鈴」
「……お疲れ様。」
なんか。
なんか思ってたのと違うよ……。
もっとキラキラしたものだと思ってたんだけど……
「これが世界というものだ。覚えておけ、鈴。」
「これが……世界」
夜明け前、空が白むまで変態さんを鞭で叩くのが世界……。
世界……。
「なわけないよ――――――!」
夜は明けていく。
魔法少女の時間は終わる。
だけど昼が在れば夜があり、光が在れば闇がある。
魔法少女の時間はまたやってくる。
世界から、悪が消えるその日まで。
藺相如っていう人がいるんです。春秋戦国時代の人なんですけど。
なんか、少女っぽくないですか?
ってことで魔法相如にしてみました☆
てへっ(やっちゃったっZE)
てことで完全に趣味です。ありがとうございます。
更新?そんなモノ知らんよ