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異世界最強の厨二は英雄譚に憧れる  作者: 結城 柚葉
序章~血筋の覚醒~
3/11

適正検査

「えっと…適正検査ですか?」

 こういうときは、謁見が先じゃないのか?


 そう思ったが、不敬になりそうだったので、口には出さないでおいた。

「はい、適正検査です。適正検査といっても、遺跡から出土した真実の水晶というその人の最大能力を計測する水晶の古代魔導遺産アーティファクトに手を置くだけで大丈夫です。」


 真実の水晶トゥルークリスタルが中二心をくすぐる響きだが、ここで反応する訳にはいかないから心の中だけにとどめておく。


「そうなんですか。」


「はい。勇者様の準備が出来次第、計測をお願いいたします。」


地球で言えば中学生位だと言うのに律義な子だな、俺なんかが中ニ病で、黒歴史増産中だったのに…とつい思ってしまう。


「はい。俺はいつでも大丈夫ですよ。」


そういった直後、見物していた家臣らしきおっさんがつっかかってきた。


「貴様、さっきから聞いておれば聖女様に無礼だぞ!


「あなたの方が無礼に当たりますよ。」


とセレスティアがおっさんに言うと、おっさんは凄い形相でこちらを睨み付け、黙った。


「申し訳ありません。……家臣が不手際をお掛けしました。」


 いまだに、睨み付けてくるが一々つっかかって来るのは流石にウザイと思っていたから、セレスティアが黙らせてくれて助かった。



「では、参りましょうか。」


「それならば、私が!」


 やはり、おっさんがつっかかって来る(と言うかつっかかってこようとする)が、セレスティアがついにキレた。


「これ以上勇者様に迷惑を掛けさせないで下さい。陛下程の権力はありませんが、発言力はありますので私から進言してあなたを辞職させますよ。」


セレスティアが静かにキレている。正直、俺も怖い。


「申し訳ございませんでした…。」


おっさんが苦い顔をしながら、俺にそう言う。


「私が先導いたしますので、ついて来てください。」


セレスティアが先導して、それに俺がついて行く。



 地下階段までたどり着くと、周りの景色ががらっと変わった。


「ここからは、絶対に私から離れないで下さい。ここには、幻覚術式が仕込んであって、自分も入れた半径10m以内幻術無効の効果がついたペンダントを持った私から離れると、横にある穴に落ちるように、なっています。」


嫌な予感がしたが、落ちるとどうなるかを聞いた。


「ちなみに、落ちるとどうなるんですか?」


「死ぬ、とだけ言っておきます。」


うわ…恐っ。おっと…周りの景色の話に戻そう。



 これまでは、綺麗に整えられた絨毯に多くのシャンデリア、その他多くの高価そうな物が配置されていたが、地下は質素な石の壁にがあった。降りていくと、奥には鎖で封印された扉があった。



「この扉は、あらゆる術式を掛け、厳重に封印してあります。これまで幾人もの盗賊が侵入しようと試みていたようですが、幻覚術式はペンダントを持っているか、これは言ってませんでしたが、気配で本当の地形を見破れる猛者か、ですが、そこの扉の見張りは、我が国の尖鋭ばかりで、そう簡単には突破できませんし、万が一突破されたとしても、封印術式が幾重にも重ね掛けしてあります。さらに中央の鎖は概念が込められていてさらに、破壊不能の概念の為、このアーティファクトを突破出来たものは、いません。この封印を解くには、聖属性魔法が使える王家の者が代々受け継いで来た解除術式が必要です!」

と、胸を張って自慢する様子は年相応に見える。


 俺は、この少女は堅苦しい人だと思っていたから、少し驚いた。

 その様子をみているとそれに気がついたセレスティアが頬をわずかに朱に染めて、

「お見苦しいところを見せて申し訳ありませんでした。その…さっきの事は忘れていただけませんか?」

と言い、先ほどの真面目そうな顔に戻った…が、すでに聞いてしまったものは忘れられない。


 だが、聞くなよオーラを出している上にセレスティアの方が立場が圧倒的に上なので、聞けない。……別にざ、残念とか思ってないぞ!


「ええ、別に問題ありませんよ。ちゃんと忘れますから。」


嘘だ…が、さっきも言ったように、相手の方が圧倒的に立場が上なので、ここは無難な答えを返しておく。


「本当ですよ!…話が逸れましたね…。では、解除術式を発動させますので、少し離れていてください。」


 と言われたので、素直に離れると、セレスティアが紅、蒼、翠、金、紫、透明の6つの宝玉の中心に虹色の宝玉が先端に埋め込まれ、天使の翼のような、羽が両側に付いた木の杖を何もないところから取り出した。


……いかにも厨二チックな杖だな…。俺が中学生だったとき、公園でこっそり木の枝を杖替わりにして『†:月光のムーンライトダーク:†』などといって…おっと昔の厨二病だった頃を思い出してしまって、つい封印したはずの厨二病に戻りそうだった。危ない危ない…。

そして、扉の前まで歩くと、中厨チックな杖を構え、詠唱を始めた。


「我が力は、いにしえの祖より受け継ぎし神聖なる光。我が英知は、聖典バイブルに記されし英霊の智徳。我が光は、神よりもたらされし聖光ホーリーライトなり。我が力を代償に汝、その力を解放し、幾つもの闇を解き放ち彼の者のその姿を顕現させよ。解除術式第1節、封印解放シールリリース

その言葉を紡いでいくうちに魔法陣は大きくなっていって、その中心に少女が立つその様子は、とても幻想的で美しい。

 しかし…しかしだ!詠唱が中二すぎて痛い!中二病で魔法剣士設定でやっていた黒歴史が蘇ってしまう…。


 話が逸れてしまったので一度戻そう。封印に使われていた鎖が粒子になって消え去り、扉がゴゴゴ、という音を立てて開いた。

扉の奥には、幾つもの部屋があり、そのうちの一つ入ると、ぼんやりと仄かに輝いている水晶があった


「コウキ様、これが適正検査をする真実の水晶です。」


 改めて見てみると、そこにぼんやりした力が宿っている…気がする。

「これは、それぞれ、武術の適正、魔術の適正、そして、聖剣を使う適正の3つで勇者を選定するための、アーティファクトです。では、早速、そこに、手を乗せて下さい。」

 言われたとおり、手を乗せた。すると、情報が頭の中に直接流れ込んでくる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

武術適正 C

魔術適正 B

聖剣適正 F

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


情報量少ないな…。



「どうして…?勇者召喚されるときに神に加護が与えられ、適正がオールSはずなのに・・・。」


 どうやら、セレスティアにも、情報が流れ込んだみたいだな…。それにしても、どうしたんだ?


「あの、どうかしたんですか?」


何か、いいにくそうな顔だな…

「その…非常に言いにくいのですが…勇者の適正があなたには存在しません…。すみません、この事をお父様…いえ、国王陛下に報告しなければならないので謁見の間まで着いてきていただけませんか?」


 ラノベ主人公なら、ここで驚くはずなのだが、不思議と俺は冷静だった。


「分かりました。」


 俺は地球に返されるのだろうか?

 部屋を出ると、扉がひとりでにしまり、鎖がついた。何か特別な工夫がされているのだろうか?


「さっきの封印解放シールリリースは封印されたものが解除される前の状態に戻って、一定時間経過すると、自動的に封印される仕組みになっております。」


そんな仕組みになっているのか…。


「では、謁見の間に参りましょう。」


セレスティアはそう言いはなった後、地下階段を上り、豪勢な廊下を渡り、とてつもなく大きい扉の前で止まった。


「セレスティア・ホーリーレイト・ミラー、陛下の下に参上いたしました。」


「よかろう、入れ。」


壮年らしくも威厳のある声が扉の奥から聞こえてきた。

その声がすると、扉が開いていって、絨毯がしかれているその先には、玉座に座り込んでいながら引き締まったら肉体をしており、威厳を感じさせるような人がいた。


「セレスティアよ、此度の勇者はどうであるか?」


「…それが、武術の適正C、魔術の適正B、聖剣の適正はF、とても勇者と呼べる強さではありません。」


「なっ…そんな…それでは、我が国が儂の代で…。」


 国王や、大半の大臣らしき人々は驚いているが、適正検査の前に突っかかってきたおっさんと、よくラノベでいる貴族っぽい人が、軽蔑の眼差しを向けてきた。


「アルデバラン陛下、こんな雑魚、魔王軍の身代わりにいたしましょう!」


 と、貴族のお坊ちゃんらしく、肥えた身体をしており、その取り巻きらしき奴らも、「そうだそうだ!」などと喚いている。


「そんな事はせん、元はといえば、あちらの世界から勝手に拉致しただけなのだ。勇者で無いというのなら、これ以上、この国の事情に巻き込む訳にはいかぬ。第一、お主等の発言を許可しておらぬ。」

 と、アルデバランと呼ばれた国王が言ったのだが、その内容からして、俺は地球に帰して貰えるのだろうか?発言が許可されないかもしれないがどうしても、気になったので、聞いてみる。


「陛下、発言宜しいでしょうか?」


「うむ、許す。」


 許可を貰ったので、話し始める。


「陛下、私は地球と呼ばれる星から召喚されましたが、その星へと帰していただけますでしょうか?」


アルデバランは目を逸らしながらこう言った。


「それが、送還陣が魔王軍によって、壊されてしまったようでな…すまん。」


 要するに、帰れないって事か。それなら自分で変える方法を探すしかないか。それに、異世界を探索する事も夢だったしな。そう決め言おうとした瞬間…


ーーーゴゴゴゴゴという地鳴りと共に、謁見の間の天井に穴があき、「フハハハハ、魔王軍四天王竜使いのバラードここに参上!」などと言って、人の肉体に翼と尻尾がついたような奴が降ってきた。


 どんな奴かを、分かりやすく一言でまとめるなら、半竜人といった感じだ。

しかし、こうしてみると…小者感満載だな…。

いよいよ主人公最強が近づいてきました!

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