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『波間歌集』  「タザリア王国物語」より

それぞれの宿命

 同じ大陸にいる人にも

 恐るべき宿命の差があり

 わたしはあなたに聞かされる

 涙と共に折れた心の行方を

 二度と戻ってこなかった足音を

 物語の佳境に(そび)える壁のことを


 父は疾うに亡く

 母は重い病に臥せ

 十七の娘は家事に追われ

 十五の息子は借金のために

 死の淵で働いた


 彼らの手に留まる時間は

 誰の砂粒よりも輝いていたけれど

 そのひたむきさに運命が

 報いを与えることは一度もなかった


 主が必ず救ってくれると

 わたしは彼らに言えるだろうか

 わたしは彼らに何が言えるだろうか

 悲しい嘘以外に

 傲慢な涙以外に

 この胸の苦痛だけで彼らを救えはしない


 あなたが何も告げないのは

 長い時間をかけて 世界を見たから

 あなたの底に沈み溜まった

 堪え難いほどのつらさが

 未来を変えると誓っている



アンブロシアーナ作『波間歌集より「それぞれの宿命」』



農村地帯の貧しい家族をその目で見たアンブロシアーナの歌。

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