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R童話-銀色で広がる物語-神の流れ-情景童話

神殺し、■色に染まる視界と記憶-

作者: RYUITI

【場面としては現の夢-眼を覚ますと――。】に続くような話になってます。

関連のある作品は多数。


――向かってくる。



柔らかいようでいて、優しいようでいて、

思いきり圧迫してくるような、

強い力が向かってくる。


微かな懐かしさと共に。


避けられない――――当たってしまう。


そう思った瞬間、私の頭の中に、浮かびかかる何かの景色。


吹き荒れる風に煽られ、

唐突に飛んでこちらに向かってくる満ちた大きな力の塊。



また景色が、何かの映像が刹那に浮かんだ。



浮かんだと思えば。


狂気に歪んだ私の身体の中へと、

違和感が入ってくる。



耐えきれなくなった視界が、


アッサリと銀色に染まった。


霞んでいたナニかに、


はるか昔の穏やかな日々が瞳に映る。



あれは――そう。


私が憧れを歪ませる事なく輝かせていた時だった。




純白で流れるようなさらさらとした長い髪、銀色の優しい瞳を持っていた母上。


そして母上から産まれた十三の子の内の十三番目であった私は、他の兄弟以上に母上にいつもついてまわり、

母上にベッタリと甘えて過ごしていた。


知識や知恵が付き身体が成長するにつれて甘えることは無くなって行ったが、私は母上が好きだった。


有るとき、優しい顔をした母上は、

私に対してこう口にした。

「これからあなたが持つ力は私や家族が大事な判断を間違えた時にこそ必要になる力だからしっかり考えて使うのよ?」と。

私に対して話をしているときの母上はなんとも真面目で真剣な顔をしていたが、

言葉など身に入るより先に、

柔らかく微笑む母上がとても綺麗で、嬉しくなった。



この時の母上の言葉を思い出したのは私が行動を起こす少し前からだった気がする。



母上の話からしばらくの時が経ったある日、

母上はいつの間にか生まれていた私の兄弟だというヤツを連れてきた。

母上が仲良くしてあげてねと言った弟、

その男の髪は黒く短く、

澄んでいるような瞳をしていて。


背は私より高かった。


なんだかそれが苛ついた。


無口なソレは母上が連れて来た次の日からいつもいつも母上と一緒に居たので。


私は急に出てきた男に母上を取られたような気がして

酷く傷つき、もどかしくなり、

その男をいたぶるようになった。


始めは小さな事だった。

奴の服を破いたり、蹴ったり、罵倒し、物を壊したことをヤツのせいにしたり。


出会い頭に殴り、水をかけ身体を縛ってまた殴る。


時には手足を縛り高いところから突き落としたりもした。


もし同じ事を私がされたなら、

私はものすごくイヤになるだろうなと思っていても。


ヤツは私の弟なのだと、ヤツは私より格下で私より愚かで、私よりはるかに劣っているのだと考えると、


何をしても良いのだと思えた。


私が良ければ、

私が楽しければそれで良いと――――。


だってヤツは無口で哀れな人形なのだから。


なあ、ドールマン。


それからまたしばらくして身体がしっかりと成長した頃、


力を身に宿す日がやって来てた。


この日は普段使うことのない、

大広間の奥の部屋に皆が集っていた。

久々に揃うくだらない兄たちと

イトシイ母上、

その横には私よりも格下のクズ。

舌うちをして睨んだが、

ヤツは眼を向けることも無かった。


兄たちは母上に順番に名を呼ばれ、

一人ずつ何処かへ飛ばされて行く。


母上曰く、力を持つためには相応な場所へと移動する必要があるらしく、


宿る力の確認と力を馴染ませる目的の為、

自動的に移動するようになっていると言う。



私に宿る力がどんなものかとワクワクしながら待っていると、

ついに母上が優しい声で私を呼んだ。


「――――。」


名前を呼ばれて直ぐ、

自らを包み込む白い光に眼を細めた。


白い光が弱まったところで、細めた眼を元に戻して辺りを見回すと。


――其処は。


辺り一面が紅に染まった箱のような部屋だった。


ジメジメと籠る湿気のような、

拭おうとしても尚、

身体にまとわりつくような感覚に陥ってしまう息苦しさ。


身体の中から出たがっているような熱い塊。

全身が焼けそうになる。


一言で表すなら【狂気】

自らに溶け込むようなその部屋から一刻も早くこの場所から出たくて、無我夢中で自らの中に塊を吐き出した。


――――狂気、哀れみ、憎しみ、嫉妬、殺意。


身体に巻き付くような痛みと、感情を吐ききった私の中に浮かんだのは【神殺し】の力だった。

「あは――アハハハハハ!!」


ヤツを、私より劣るあの男をこの力で無に返す。


人形のクセに、神の真似事なんて身の程知らずめ。


高揚した感覚のまま、

来る時と同じように白い光に包まれた私は、

狂気を含んだ笑みのまま、

大広間の奥の部屋へ舞い戻った。

「ただいま、母上。

其処を、どいてくれないか? 」

だと言うのに、私の視界の中にヤツの姿が写ることは無く。母上がナニかを守るように私の前に立っていた。


「むりよ、だって貴方は――」


ギリギリと歯が軋む。


「通常、神はある条件の重なりが無ければ殺せない、神同士なら尚更の事。 」


母上の眼をじっと見る。


母上の眼は凛としていて揺るがない。


軋んでいる歯に強く強く力がかかる。


「ならば――」


唇からするりと血が流れた。


「愚かな貴様毎、この神殺しが塵にしてやる!!」


何故、私の気持ちを解ってくれない。


何故、私の愛を受け止めてくれない。


何故、そんな人形を気にかける。


「ナゼだあああああ!!!!」


全てを壊すつもりでいた。

私の気持ちを受け止めないモノはいらない。


――――きがつけば。


無惨なキズを負った母上をヤツは治癒しようとしていて。


オレのモノに触るな……人形風情が。


【消えろ――】


私が人形に対してそう力を使うと、


黄金に満ちた力が柱上になってヤツを捕縛した後、

柱共々、暗闇に溶けるように

消えていった。


「はははは――ハハハハ!!

やったぞ!!邪魔な奴はもう居ない!!」


「さあ母上また私をみてく――――」


【剥奪の判、

三承認。黒、大神、銀】


母上の方を向こうとした瞬間頭に響いた重苦しい声に、ハッとした。


気付けば身体は燃え盛り、

急加速して空間を墜ちていた。


「これで終わりだと思うな。

必ずや、後悔させてやる!! 」




今のは――――オレの過ちを見せたとでも言いたいのか。



今度は身体が眠くなってきた。


「何をされようとも、オレは負けることは無いぞ、クラウン・ドールマン」


オレは今は初めて、ヤツの名を口にした。


その後で、静かにまどろみの中に沈んでいった。




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