33、決着そして………
黒牙side
「フハ、フハハ、中々、……やりますね……げほッ」
『ザ……ザザ貴…殿モ』
何十回も斬り会い、その度にどこかを負傷する。そんな戦いを続け、黒牙は、左腕があらぬ方向に折れ、ダラリと下がり、その脇腹には羽織が翻った時に突き刺さったゴーレム武者の腕が深々と有り、内臓を傷付けて吐血させていた。
対するゴーレムも五体満足では無かった。右腕は黒牙の脇腹に突き刺さっている為、肘から先が無くなり、発光していた両目は魔法銃の散弾により顔の真ん中から左目にかけ、貫通した穴がいくつも空いて、右腕の剣は刃こぼれが生じ、覆い隠されていた核となる魔石は顕となり罅が少し入っていた。
「フフ、どうやら限界のようですね」
『ショ…笑止。私ノ戦イハ未ダニ終ワラズ』
「そうか………ならば次で終わらせよう」
『アア、コイ!』
「鬼刃家流居合───」
『全稼働用エネルギーヲ攻撃用ニ移行………風属性附与、照準ノ最終確認……攻撃マデ5…4…3…』
「神狼…二閃!」
『…2…1…攻撃!』
二連の斬撃と上段からの振り下ろし、片や相手を三分割しようと、片や相手を幹竹割りしようと、動き出す。刀と剣が激突し、粉塵が巻き上がる。粉塵が止むと互いに背を向け、武器を振り抜いた二人が、
『ハハハハハ』
ゴーレムが突然笑い声を上げ、
「クッ」
黒牙が膝をつき、
「いい戦いであった……」
『アア、本当ニイイ戦イダッタ………負ケタヨ』
ズ…ズズズ…とゴーレムの胴から首と腰が離れ始め、ピシッピシリッとゴーレムの剣から鳴った音は段々大きくなり、やがてピシピシピシと、連鎖的になり、核に到達、ビシリと大きな音を立て砕け散ると、体も段々と砂になり始めた。
『黒…牙殿』
「どうした」
『最後ニ……イイ戦イヲアリガトウ』
「うむ、こちらこそ」
『サラ……バダ』
最後の言葉を言い終えたゴーレムはサラサラと砕け、風に吹かれていった。
「……さらばだ、38号」
ゴーレムの腕を力任せに引き抜き包帯を巻いて応急措置をすると、回復薬を染み込ませた葉をキセルに入れ、ぽつりと黒牙は言った。
『黒牙のレベルが40に上がりました』
龍牙side
「ゲホッゲホッ……ペッ。あ~畜生」
黒牙がゴーレム38号と戦い、辛くも勝利を納めたなか、龍牙は未だに巨大ゴーレムと戦っていた。
口に溜まった血を吐き出す龍牙も黒牙と違う方向で満身創痍であった。足には返しが付いた杭付きの鎖が何本も突き刺さり、上半身は再生しているも、あばら骨などが折れている。
龍牙がこのような状況になったのには訳がある、鈍重と思っていたゴーレムは予想以上に速く、顔に一撃食らい、鼻の骨が折れ、治そうとした矢先に腹に入ったアッパー、内臓をかき混ぜられる様な重い一撃とゴーレムの拳から射出された杭による負傷の再生、それらは龍牙の人並み外れた体力を減らすのには効果的だった。更にはゴーレムの再生能力、捕食を纏わせ斬っても斬っても周囲にある岩をくっつければ直ると言う龍牙が今まで会ったことの無い事態が集中力も削っていた。
(クソッやっぱり使うしか無いのか!)
本来ならば威力が高過ぎてつまらなく、それに充填するまで時間が掛かる故に使いたく無かった。しかし、捕食を纏わせた一撃でさえも耐えきる頑丈差と再生能力の高さ、これだけの理由が有れば使うしか道は無い。
そのためには先ず、
「黒牙!」
「ここに!」
「少し時間を稼いでくれ」
「分かりました……しかし殿」
「どうした?」
「壊してしまっても?」
「構わん! 殺れるなら殺れ、殺ってしまえ!」
足止めをする必用がある。
そして、彼等は死亡フラグと言う言葉を知らない。故に、
「コイツ潰したら絶対に酒浴びる程飲んで雪姉に甘えてやんぞコラァ!」
「殿! もしもの時は私を置いてでも逃げてください、後から追いかけます!」
「アホか!従者を置いて逃げるヤツが有るか!」
他のクラスメイトがいれば青い顔で止める様なフラグも恐れること無く立てまくる。
「三分でいい、耐えてくれ」
「了解しました、殿」
「頼むぞ!」
龍牙と黒牙は軽い打ち合わせをし、互いに離れた。龍牙は後ろに、使いたくは無かった最終兵器の魔力充填をするために、黒牙前に、ゴーレムと戦い、自身の主に頼まれた時間を稼ぐ為に。
黒牙side
「さあ、頼まれたからには最善を尽くしますか」
小太刀二本を構え、踏み込もうとし、嫌な予感を感じた黒牙は後ろに飛び避けた、避けた次の瞬間、それまで黒牙が立っていた一歩前にゴーレムが現れ、拳を振り下ろす。振り下ろされた拳は石畳を破壊し、散弾の様に破片を撒き散らす。黒牙は腕をクロスして破片を避けた。そこに叩き込まれるニ撃目の拳。黒牙は飛び上がると、ゴーレムの腕に乗った。逆手に構えた小太刀をゴーレムの拳に突き刺し、アッパーを繰り出す様に腕を振り上げる。腕が動けば同然その手に持った刀も動く。動いた刀は刺さったまま進み、ゴーレムの腕半分を斬り落とす。そしてそのまま首も斬り落とそうとするが再び嫌な予感を感じ腕から飛び下りる。するとゴーレムの肩から黒牙が先程までいた所目掛けて杭付きの鎖が飛び出す。追尾してくるそれを刀でいなしたり、銃で迎撃したりして凌いでいると、
「黒牙、避けろ!」
「ッ!?」
待ちに待った声が聞こえた。
生存本能の命じるまま、天井の罅に腕と下駄の歯を突っ込み体を固定させると、その真下を太い熱線が通り過ぎた。熱線の出所は勿論、
「ハッハァ! これならどうだ! 確実に殺ったぜ」
龍牙だ。
龍牙の手に有るのは、大鉄砲と呼ばれる火縄銃の一種の形をした、魔法発動機、広範囲制圧用特殊魔力砲、通称『魔砲国崩し』。個人携帯武器では鬼骨一文字や、血吸い濡れ烏などと一、二を争う程の高威力、長射程を持つ物で、その大きさ故、腰だめにしか構えられ無い物で、特徴的なのは、他の魔法銃と違い、火薬を一切使う事が出来ないと言う点である。使うのは銀弾に膨大な魔力、それだけだ。これを作る原因となった課題、魔力耐性は異常に高いが物理が少し弱い亀に魔法を使って倒せと言う難題を解決して以来、一切日の目を見なかった、そんな不幸だが自慢の一品が、
「ついに、ついに限界無いけどボックス圧迫組と言う不名誉な名称から離れるのだ! クハ、クハハ、クハハハハハ!」
ついに活躍出来た。
両手を上に向け、羽織を翻しながら回る龍牙の頭の中はその歓喜でいっぱいだった。
「殿、後ろ!」
「へ?」
だから、油断していた。
「ごふっ?!」
「殿ォ!」
頭だけになりながら、先程口を開けた奈落の底に落ちながら、ゴーレムの隠れていた口から鎖が飛び出し、己の背中を貫き、腹から頭を出し、道ずれにしようとするのを。
どうも皆様、大日です。
雪が2日連続で遊びまくりました。
それはともかく、感想などをください。
後誤字脱字なども待ってます。
黒牙の現在ステータス
コクガ ??? 白雪妖魔狼帝
天職 妖狼 天狼 忍
LV40
生命力 48000
筋力 72000
耐久力 72000
敏捷性 56000
魔力 72000
魔力耐性 72000
固有スキル
略
スキル
略
魔法属性
略
特殊属性
略
称号
略




