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鬼狼の刃  作者: 大日小進
一章、異世界編
34/42

31、♪歩こう、歩こう(謎の作動音付き)

カラン、カラン、カラン、カンカン……カラン、カラン


「そこぐるぐる歩き回って何してんの、龍君?」

「ん~ここら辺みたいなんだよ」

「何が?」

「隠れてるスペース」

「本当にあるの? もう十分は探してるけど」

「勘だけどさ、ここによっと」


 クラスメイトやアイザー達が何してんだ? と言う顔で見てる中、ピタリと止まるとその場で勢い良く足で地面を蹴ると床の石にヒビが入り、砕けた。砕けた先には明かりの無い暗い階段が続いていた。


「見っけ!」

「本当にあったよ……」

「嘘だろ、探知魔法には反応してなかったぞこの階段」

「フッ探知魔法だけで見つかる物じゃ無いのさ」

「さっきまで見つからなくて首かしげまくってたよね龍君?!」

「お、俺全然首かしげてないし、過去に囚われない男だもん!」

「囚われないって言ってる時点で自覚してんじゃん! 後もんって何もんって、可愛いんだけど!?」

「春美様、仕方ありませんよ、時折、殿は(いま)だ亡くなられた姫様の服を持って寝るほど過去に囚われてますから」

「いや黒牙さん姫様って誰なの?!」

「今は亡き久美子様の事です」

「あ、久美子さんの事なんだ……じゃなくて、何年前よ!」

「姉ちゃんは死んでない! 俺の中で生きてるんだ!」

「それアニメとかで誰か亡くした主人公が言うセリフ!」

「いやどうでもいいから早く入るぞ」

「「どうでも良くない(です)!」」

「解せぬ……」

「隊長ドンマイ」

「アイザーさん乙」


 口論のあまりの長さにしびれを切らしたアイザーが急かすが、それ以上の剣幕で返され、へこみ、周りに慰められるその横では、


「兄貴!湿ってた木材乾かして来たぜ!」

「ああ、そこに置いておいてください」

「御兄様、何をするんですか?」

「使われてない洞窟などには時々ガスが溜まっている場合があるんですよ、だからこうしてガスが溜まってないか調べるんです。ところで御兄様や兄貴とは?」

「「「「兄貴(御兄様)は兄貴(御兄様)だからだ(です)!」」」」

「そう言うものですか」


 黒牙が銃の弾から薬莢ごと火薬を取りだしていた。煙管の火種を取りだし埋め込んだ火薬入り薬莢に着火させると階段の奥に放り投げた。投げられた松明は二、三度跳ねるとそのまま燃え続けた。


「兄貴、これは?」

「フム、酸素は有るみたいですね、爆発もしませんし、入っても問題は無いようです。殿、そろそろ入りますよ!」

「あ? 了解」

「ちょっと龍君!まだ話は続いてるよ!」

「あーわかったわかった、説教ならまた後でっと」

「ひゃん!? りゅ、龍君どこ触ってんの!」

「どこって…………腰だな、うん」

「は、離してよ! 龍君のエッチ! 痴漢! 変態!」

「いや俺はエッチでも痴漢でも変態でも無いんだが?」

「離さないと突くよ!」

「イテッ! 突いてから言うなよ!」

「龍君が! 離すまで! 突くのを! 止めないんだからね!」

「痛い痛い痛い、わかった、わかったから突くな!」

「行かないんですか、殿?」

「行くから少し待ってくれ」


 お米様抱っこの末、痴話喧嘩にもとれるじゃれあいを始めた龍牙達に周りの目は生暖かった。因みに、


「春美ちゃんだけズルいなぁ……」

「ゆ、雪江様、じゃあ後で私とディ──」

「龍ちゃ~ん、お姉ちゃんも~」

「ん~? フパッ?! 」

「お、お姉ちゃん何してんの!?」

「龍ちゃん抱っこしてんの」

「いや逆、抱っこの向き逆だから! 龍君が息出来て無くて腕叩いてるでしょ!?」

「あ、本当だ。ごめんね、龍ちゃん」

「プハッ苦しかったぁ」

「ごめんねぇ」

「大丈夫、大丈夫」


 雪江はお米様抱っこをされる春美を見て頬を膨らませていた。何故なら彼女にとって体制やシチュエーションが大事なのでは無く、抱っこされたと言う事実が大切だからである。

 そして今ならイケると思い声をかけようとしてスルー、更には目の前でイチャつかけた光景を見せられた兵士は、


「……グスッ」

「元気出してください、後で愚痴はアイザーさんと一緒に聞きますから」

「ゆ、勇者様……」

「おーい、行かねえのか?」

「元凶の君が言うセリフじゃないだろう!?」


 半泣きになり、勇者に慰められていた。






 階段を降りた先の廊下には、テンプレと言うべきか様々な罠が仕掛けられていたのだが、


 踏むと槍が飛び出し突き刺さるタイプの場合


ドシュッ!


「ん? 何か踏んだ?」

「殿、足元に木片が」


 落ちると底の杭(恐らく毒塗り)に刺さる落とし穴タイプ


「道が無ければ盾を橋にして後で穴を埋めればいいじゃないか」

「殿、盾も穴も不憫です」


 踏むと魔法で爆発が起きるタイプ


ドンッ!


「ゲホゲホッ! (けむ)た!」

「龍ちゃん、顔に煤が」

「爆発を物ともせずに通り抜けたな、アイツ……」

「しかも防御魔法も何にも掛けてないぞ……」

「アイツの耐久力はどうなってんだよ……」

「戦車か装甲車クラスじゃね?」

「いやもしかしたらだけどよ、某怪獣王クラスじゃね?」

「どっちみち頑丈じゃねぇかそれ……罠の作者泣くな、こりゃ」


 一同の先頭を歩いていた龍牙が平然と破壊していた。罠とその作者が余りにも不憫だ、龍牙の後ろを通った者達は、皆その様な思いをしたと言う。そんな罠師泣かせな龍牙が唯一苦戦した罠があった。それは……


「こ、これは……」

「どうした龍牙!?」

「難解だ、とても難解な問題だ……」

「う~む、難解ですねぇ」

「黒牙さんも?!」

「なぁ勇者、この暗号なんだが、出来るか? 」

「ほ、本気で言ってるのか?」

「本気だが、どうした?」

「いやだってお前これは……」


 彼の目の前に現れたのは鉄で出来た門だった。そしてその真ん中にはかわいくデフォルメされ、腹づつみを打つタヌキと『たたたたたひたたたけたたたた』の文字。

 そう、それは、


「小学生がよくやるなぞなぞじゃないか!?」

「マジか! じゃあ解いてくれ」

「な、なんで僕が」

「えー、でもぉ、乙木先輩はぁ、分かるんでしょ~?」


 ニヤニヤと実に小憎たらしい顔で煽る龍牙。その本心はおちょくるの面白い、ただ一つだ。


「だぁー、もうわかった、わかったからその小憎たらしい顔止めろ!」


 ウガーと頭をひとしきりかきむしり落ち着いたのか、大きなため息を一つはくと、扉のノブに手をかけ書いてある文字通り乙木は引いた。引いてしまった。ガクッと衝撃が走り、開く代わりに頭に金だらいが落ちた。


「ッッ!?!?」

「おおぅ、いったそう」

「この金だらい裏に馬鹿って書いてますよ……」

「なるほど、完璧に煽るやつか」

「で、結局開いてないけどどうすんだ?」

「だったら、こうか?」


 龍牙は、たが連続する中、異彩を放つひとくに手をかけると、引く───と見せかけて押した。


「なぜに押す?!」

「じいちゃんが言っていた、引いてダメなら押してみろ、それでもダメなら───」

「ダ、ダメなら……?」

「ブッ壊せ」

「………」

「………なぁ、黒牙さんお宅の教えはどうなってんですか」

「言わないでくれ、私も今どこで間違えたか思い出すから」


 どこぞのシスコンで豆腐愛好家の料理上手の紅い甲虫仮面戦士がよくやる天に指差すポーズを取り、反対の手に明らかに爆発するであろうドクロが書かれた長方形の物体を握る龍牙。

 確かに龍牙はシスコンだが、料理が上手な訳でなく、さらに言えば紅い甲虫に変身する訳でも無いのだが、どこか似合っていた。

 そして件の扉なのだが、開かずにその横の壁が静かにスライドしていた。





 スライドし、開いた壁。その先にあったのは財宝だった。積み上げられ、山になるほどの金貨や宝石類、貴金属が一山と言わず何山も続いていた。「おお!」とか「ヒャッハー、金だ金! 」とか、クラスメイトが騒ぐなか、龍牙は、


「ベキッバキッ……ゴクンッ」

「……龍君、何食べてんの?」

「むぐっ!」

「ちょっとそれ金貨じゃん! ぺっ、ぺってしなさい」


 腹が減ったのか、金貨を一掴み食べていた。いつも通りの光景。龍牙がなにかしら騒動を起こし、それを春美や黒牙が止め、雪江は「あらあら」と微笑む。本当にいつも通りの、あるべき姿の光景。

 故に気付けなかった。部屋の壁にある穴奧から赤い光がいくつも近づいている事を。その光の主が、


『──ザッザザザッ侵入者ノ反応ヲ多数確認、判断条件No.3ニ従イ、侵入者ノ排除ヲ開始シマス』


 敵意満々な声と共に近付いてくる事を。


どうも皆様、大日です

今回は少し長めです。

31話お楽しみください

感想、誤字脱字待ってます

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